営業のノウハウ/営業の商談・ヒアリング

返報性の法則とは? お客さんが「お返し」したくなる関係を作る営業

返報性の法則をご存じでしょうか。営業では、最終的にお客さんから受注をいただくために、友好的関係と信頼関係を築かねばなりません。今回は、少しずつそれらを積み上げていくために必要な法則をお伝えします。ぜひ日々の営業シーンにうまく取り入れてください。

西野 浩輝

執筆者:西野 浩輝

営業ノウハウガイド

返報性の法則とは? 営業に取り入れる!

返報性の法則を営業に取り入れる

こちらから与えることでお返ししたい気にさせる

「返報性の法則」とは、社会心理学者のロバート・チャルディーニが、営業マンや広告主の心理テクニックを分析した『影響力の武器』という本のなかで、取りあげている法則です。その法則とは、「相手から何かをあたえられると、こちらも何かお返しをしたくなる」というもの。

具体例で解説しましょう。例えばあなたが、テレビの買い換えを考えていたとします。「最近のテレビはどんなものが売れているのか、今日はほんの下見のつもり」という気持ちで電器量販店をたずねました。

すると対応してくれた販売員がとても親切でした。プラズマテレビと液晶テレビの違いをわかりやすく説明してくれたり、こちらの疑問や要望にも丁寧に答えてくれたり……。

きっとあなたは、こんな気持ちになるはずです。

「この販売員の方はわざわざ時間を使って、自分のためにいろんな説明をしてくれた。おかげで今どきのテレビのことがよくわかった。今日は下見のつもりだったけど、何だかこのまま買わずに帰るのは申し訳ないな」

そしてあなたは、今日は買うつもりではなかったテレビを、購入することになる。これが「返報性の法則」です。あなたは販売員から、テレビについての貴重な情報をもらったので、つい恩返しがしたくなって、その販売員からテレビを購入したわけです。

このようにできる販売員や営業マンは、日々の接客場面や商談場面で、「返報性の法則」を上手に活用しているものです。そこで次に、営業マンが「返報性の法則」を効果的に活用するためのコツを、基礎編と応用編に分けて説明することにしましょう。
 

基礎編:小さな約束を守ることを繰り返す

先ほど例として出した電気量販店での接客場面では、一度の接客で「返報性の法則」が働き、テレビの購入に結びつきました。けれども実際には多くの営業場面では、「小さな約束を取りつけ、守ること」の繰り返しが大切になります。

例えば、お客さんがある情報について知りたがっていたとき、「その件についての資料でしたら当社にありますので、後日お送りいたしますね」と言って、さっそく翌日にはメールや郵便で送ります。しかし一回だけでは、まだあまり効果がありません。

こうした「小さな約束を取りつけ、守ること」が何度も繰り返されることによって、お客さんは徐々に「営業マンのAさんは、いつも自分のために役に立つ情報提供をしてくれているので、ありがたいな。何かお返ししなければ」という気持ちが高まっていきます。そして商品の購入に一歩、二歩と近づくわけです。

ただし言うまでもありませんが、お客さんが望んでいない約束を無理矢理取りつけて守ったとしても、お客さんとしてはありがた迷惑でしかありませんから、その点は注意が必要です。

また約束を取りつけるときにも、コツがあります。それは「この約束を履行するのは、結構大変なんですよ。でも私は、いつも頑張って約束を守っています」ということをさりげなくアピールすることです。

例えば、約束をするときに「今週中には資料を作成してお送りできそうだな」と思っても、「何とか頑張って、来週の前半にお届けするということでよろしいでしょうか」と言います。そして実際には今週中に送ります。するとお客さん心理としては、「営業マンのAさんは、忙しいはずなのにいつも頑張ってくれるな」という気持ちにますますさせられるわけです。

約束した期日よりも前に約束を果たすことは、こちらの頑張りを相手に感じてもらううえで、非常に効果的です。その分「返報性の法則」が働きやすくなるわけです。

ところが多くの営業マンは、逆の頑張り方をしてしまうんですね。例えば、「今週中に資料をお送りするのは、ちょっと厳しいな」と思っても、無理をして「何とか今週中にお送りします」と約束します。そして結局約束を守れず、お客さんからは「あの営業マンは自分のことを大切にしていないな」と思われてしまいます。「返報性の法則」が働かなくなってしまうわけです。

頑張っているのに、頑張りが報われない。多くの営業マンは、頑張りどころを間違えていると思います。
 

応用編:大きなオファーの後に小さなオファーを繰り出す

商談をしていると、「お客さんに対して、かなりいい情報を提供できたな」と実感できるときがあるはずです。お客さんの表情も、とても満足そうです。こんなときは「返報性の法則」の応用テクニックを使うチャンスです。

応用テクニックでは、まずお客さんに対して少し大きめのオファーを出してみます。例えば、「当社で発売された新商品を、ぜひご購入いただけないでしょうか」というように。

お客さんとしては、「営業マンから貴重な情報をもらったらか、こちらも何かお返しをしたい」という気持ちになっているとはいうものの、さすがに新商品の購入を即断即決で決めるのは無理です。おそらく「ちょっと今の段階では、それは難しいですね」という答えが返ってくるはずです。

そこで営業マンは、「では、どなたか商品のご案内に伺える関連会社の方を紹介いただけないでしょうか」と、今度は小さめのオファーを出します。実は営業マンの目標は、最初から「誰かほかのお客さんをしてもらうこと」にあります。すると相手は、「新商品の購入は難しいけど、紹介ぐらいだったら」ということで、紹介してもらえる確率がぐっと高まるわけです。

つまり「返報性の法則」が働いている相手の心理を利用して、大きなオファーの次に小さなオファーを出すことで、確実に小さなオファーを実現する。これが「返報性の法則」活用の応用テクニックです。

ただし最初に大きなオファーを出すといっても、あまり無茶すぎるオファーだと、お客さんは「この営業マンはいったい何を言いはじめるんだ!?」という心理になりますので、そこだけは注意してください。

私たちは、誕生日やバレンタインデーなど、プライベートでもプレゼントの交換をよく行っていますが、文化人類学者の研究によれば、古代社会や原始社会においても人々の間で宝物の交換が行われていたそうです。

「相手から何かをあたえられたら、お返ししたくなる。お返ししなければいけないと思う」という心理は、どの時代のどんな人たちの間でもみられる普遍的な現象といってもいいでしょう。

ぜひ「返報性の法則」を、日々の営業シーンにうまく取り入れてください。


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