緊張しぃ、の秀作カクテルを飲め
大柄だが、いたって温厚な林壮一氏 |
オーナーバーテンダー林壮一氏にはじめて会ったのは独立前、修業中で彼はまだ20代後半だった。「えらく身長の高い若者だな」というのが第一印象。日本人のバーテンダーとしてはかなり長身で186cm。高校時代は関西の強豪校で甲子園を目指した球児だと聞いて、なるほど、と納得した覚えがある。
そしてよく笑い、明るく温厚な好青年で、十数年経ったいまも爽やかさを失っていない。
その若かりし頃、この長身の好青年は意外と「緊張しぃ」で、カクテルコンペティションとなると手が震える。知り合ってすぐに何度か彼の競技ぶりを見る機会があったが、観ているこちらも緊張しながら「林君、落ち着け!」と心の中で叫んでいた。
ところが、これがなかなかの秀作なのだ。2000年のビーフィタージンのコンペティションで優勝し世界大会代表(世界三位)となった「ロンドンウィッチ」、その前年1999年サントリーカクテルコンペティションのショートカクテル・ドライ部門で最優秀賞を獲得した「京秋」などがある。
紅葉を映す池をイメージした秀作「京秋」
池に映る紅葉をイメージした「京秋」 |
山崎は主張し過ぎず、カクテル全体に厚みを醸し、抹茶が香味に和の深みを与え、甘さを抑えた、すっきりとした酸味が印象的な爽やかな逸品だ。わずかにブルーキュラソーが入り込み、カクテルの色は緑となる。
スタイリングに工夫がある。まずグラスをウエーブスタイルに仕上げる。このウエーブスタイルはグラス上部にグレナデンシロップと塩でウエーブ状の朱色のデコレーションを施すというもの。ここに赤系のポイントが入るのだ。さらにカクテルに紅葉に型抜きしたりんごの皮を浮かべる。
池に見立てたカクテルの緑とこれらのコントラストが見事で、ストーリー性もある。
ただ何よりも山崎10年というウイスキーを使い、すっきりとした味わいに仕上げているところが気に入っている。では次ページで、「ロンドンウィッチ」を紹介する。
(次頁へつづく)