何をどう掘り起こせるか
上/お店のシンボルでもあるレモンの木。下/白州18年。まさに唸りたくなるような旨さ |
2面ガラス張り。ボトルが並ぶバックバー越しには国道一号線の町並みが見える。L字のガラス張りのもう一方にはテラスがあり、緑の鮮やかなレモンの木がライトアップされている。
“マンハッタン”を飲みながら妙に落ち着く。何故だろう。
前には吉田氏が立っている。おそらく、構えることなく接客する彼のせいなのだろう。やはり銀座の店の持つ、独特の緊張感から解放されているからだと思う。
それと吉田氏と私は同年代だ。彼が1歳だけ年少。異なる人生を歩んでいても、深く会話しなくても、無理なくわかりあえる。
店の空気感、吉田氏の接客、同年代。これに旨いカクテルが加わり、私の気分は安らいだものになる。
「モルトがどうの、カクテルがどうの、といったお客さまはいまのところ少ない。場所も古くから住んでいる人の多い、住宅街といったほうがよい。まったくもって地域密着型。ここで何をどう掘り起こせるか。まあ、のんびりとやります」
締めに白州18年をストレートで飲む。今年のISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)で金賞を受賞したシングルモルトだ。
ホッグスヘッド樽原酒がメインの熟成感はなかなかのもの。果実のような甘み、ウッディネスでスモーキーな感覚もある。白州特有のドライな感覚を残している点も素晴らしい。
こういうウイスキーは「おお、ボナンザ」と唸りたくなる。まさに“穏やかな海だ”。
カウンターの中で、吉田氏がやわらかく微笑んでいる。
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