バーは穏やかな海だ

店の風景
二面ガラス張りの開放感のある店内。吉田氏の緩やかな接客に安らぐ
銀座『スペリオ』のオーナー吉田均氏が横浜に自分だけの店を持った。ひとりで、きわめて素に近い自然体で仕事をしている。
京浜急行の戸部駅からはわずか2分。JR横浜駅からは徒歩10分強といったところか。
国道1号線沿いのマンションの2階に店はある。はじめて訪れる人は一様に戸惑うはずだ。とてもバーがあるとは思えない。
1階がお菓子の“ひよ子”。この黄色い看板が目印で、これがなかったら通り過ぎてしまうだろう。

店名は『Bonanza』(ボナンザ)。思いがけない幸運とか大当たりといった意味らしい。ポルトガル語だかスペイン語だったか、私はいい加減だからすぐ忘れる。
ただ吉田氏がスペイン語では“穏やかな海”といった意味もある、と教えてくれたのはしっかりと覚えている。うん。そっちのほうがいいな。港町、横浜らしいし、店全体が“穏やかな海”って感じだもの。

『スペリオ』はオールドボトルをはじめとしてレアなウイスキーが揃っているが、『ボナンザ』はいまのところそういう強い色気はない。スタンダードなボトルが並び、吉田氏のダンディな男の色気が魅力といえる。

ひとりで何ができるか

ステア
マンハッタンをつくる吉田氏のステア
まずはフェイマスグラウスのソーダ割り(¥1,000)をつくってもらう。私にとっては安心の味。ハイボールを飲みながら、もう横浜にこもっちゃうのかと吉田氏に聞いた。銀座の『スペリオ』には週1回、金曜の深夜にしか顔を出していないというからだ。
「まあ、自分ひとりで何ができるか、やってみたくなって。もともと私は横浜の人間ですし、地元のお客様を相手に、じっくりとのんびりと仕事しながら、将来の展開を考えてもいいかなと思っています。いずれはスタッフをひとりぐらい入れるでしょう。そしたら銀座とこちらの両方をバランスよく見られると思います」
どうやら当面は、ひとりでやっていくつもりらしい。

『スペリオ』は吉田家代々つづいた店だ。上客が多い。簡単に引っ込むわけにはいかないだろう、と余計なことを思ってしまう。
いま『スペリオ』は椎葉寛之氏が店長を務めている。椎葉氏はウイスキーに詳しく、カクテルもなかなかのものがある。任せて安心ということなのだろう。(次ページへつづく)