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ウイスキー&バー/ウイスキー&バーの美味しい話

思い出トランクに詰めた酒の話 第4話『カリブの酒と恋の刻印』(2ページ目)

今回の思い出トランクは、14年前のカリブ海はグレナダという島での体験を書いた。スコッチ・ソーダとゴールドラム、そして片思いの話だ。私は33歳。まだまだ青臭くて馬鹿で、つまりとても若かったということである。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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バーといっても、斜面に無理矢理つくったとしかいいようのない小さなプールを真下に見るようにテラスがあり、そこに小屋とカウンターをつくり、まあテーブル席もあったほうがいいかぐらいのシロモノだ。
小屋のボトル棚にはウイスキーが3本。あとはカリブのラムのボトルばかり。3本のウイスキーとは、ジョニ黒、バランタインファイネスト、バランタイン17年だった。

訳ありマダムの登場

街の様子
上/警官も古式ゆかしき姿。下/ホテルのプール。この上がバー。
最初の夜、ジントニックでも飲もうかと粗末なカウンターの前に立つと、小さな屋台には不似合いな大柄なアフリカンのバーテンダーが「スコッチ・ソーダ?」といきなり発した。あまりにも唐突だったので勢いで私は頷いてしまった。

すぐにわかったのだが、大柄な彼は動きたくなかったのだ。ホワイトスピリッツやリキュールは屋内の食堂に取りに行かなくてはならない。氷とソーダやライムは屋台にあるから、それらとボトル棚にある酒、あとはビールで愉しんでくれ、という彼の願いがひしひしと伝わってきた。

14年前のその頃、私はハイボールを好んで飲むことはなかった。ウイスキーは単純に強いほうがよくて、ストレートかロックでしか飲まなかった。ところが怠け者のバーテンダーがソーダ割りの旨さを教えてくれたのだ。

高台にある屋台バーで飲むスコッチ・ソーダは旨い、としかいいようがない。昼間の熱を夜になっても抱いたままの体にクールに沁みていく。海から入り江の斜面を駆け上がってくる涼風との相乗効果で、爽快感が増すのだ。
「ハイボールって旨いんだな」と、その時はじめて実感した。

3夜ともスコッチ・ソーダの一杯目を飲み終えそうになる頃、ホテルの女将が登場した。バーテンダーは「マダム」と呼んでいた。
最初の夜、マダムはバルバドスのゴールドラムの旨いのがあるから、一緒に飲みませんかと言ってきた。
このゴールドラムが旅人の私を酔わせてしまった。港の夜景と涼風、そして美人、そこに旨いラムときたら旅情は極まる。一方的に惚れてしまい、一生グレナダで暮らそうかと思ったほどだ。(次ページへつづく)
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