北添氏(写真上)のいいところはジャパニーズウイスキーを大切にしている点だ。響(¥1,600)、山崎(¥1,400)、余市(¥1,400)といった高品質のジャパニーズを客にすすめる。それは彼がジャパニーズの良さを認めているからであり、またジャパニーズに限らず世界の蒸溜所の稼働率がどんどん下がり、現行製品が売れなければウイスキー産業は衰退してしまうことを危惧しているからだ。
スコッチのいまを見ればわかる。ここ10年の間にどれだけの数の蒸溜所が閉鎖に追い込まれているか。
だからレアものばかりすすめたり、昔のウイスキーの味はよかったなんて話ばかりしているバーテンダーっていうのは、ウイスキー産業に貢献しているとはいえない、と私は思っている。
フルーツも料理もいける。
さて、最初にフルーツのことを書いたが、『BAR RAGE』では旬のフルーツや新鮮なハーブをふんだんにつかったカクテルも自慢のひとつだ。そしてバーではよくサービスでナッツといった乾き物を出すが、ここではフルーツがその役目をする。気がつくとサッ、サッとフルーツが目の前に置かれている。フルーツカクテルだけでなく、スタンダードなカクテルも旨い。
バーテンダーではなく、ミクソロジストと名乗っていることでも、カクテルを愛する姿勢がうかがえる。
料理もいい。肉料理、魚料理、すべてが本格的だ。カレーやうどんまである。ウイスキー、カクテル、フルーツ、料理といったサービスを見ると、バーテンダーというより飲食のゼネラリストを目指しているようでもある。だから大きな意味でミクソロジストは正しいのかもしれない。空間、時間、味覚のミクソロジストである。
北添氏は37歳。銀座でバーテンダー修業していた20代の若い頃の彼を知っているが、どんどん人間的に大きくなってきている。途中、パン職人の修業、イタリアンの修業もしている。すべてが『BAR RAGE』に至るまでの道のりだった。
彼の成長を見る度に10歳も年長の私は「いったい何をやってきたんだろう」と悲しくもあるが、いつも彼からは元気をもらっているのだ。だからとてもありがたい存在だ。
店に入ると「いらっしゃいませ」と大きな声が響く。元気のいいバーであることを付け加えておく。朝5時まで営業で無休。
INDEX『ガイドおすすめのバー・東京』もご覧いただきたい。