ギムレット(¥1,000)は30代半ば過ぎの三保剛氏につくってもらった。ジンはタンカレーだったような気がする。わずかに甘みを感じさせる冴えたキレ味があった。
コアントロー・チェリーを沈めたマンハッタン。 |
オレンジリキュールのコアントローに漬けた赤紫色のこのチェリーはマンハッタンにコクを生み、何よりもマラスキーノ・チェリーの安っぽさがなく、高級感がある。
安っぽいとは失礼だが、ヴェルモットをチンザノといったにがよもぎの強い香味のものを使ってつくられた場合、マラスキーノ・チェリーをかじることでひと息つくこともあるからあまり悪く言いたくない。でも好きではない。
ラフロイグで締めてメトロに乗る。
遠藤氏も好むラフロイグ(¥1,200) |
カクテル2杯の後、ウイスキーは何にしようかと珍しく迷った。
『オレンジ・ルーム』ではラフロイグ10年、ブリックラディック(ともに¥1,200)、ハイランドパーク12年(¥800)が人気という。遠藤氏に「何が好みですか」と聞くと、「私はラフロイグばかり」との答え。では、とラフロイグをストレートで飲んだ。
いい心地になり、もう一杯と思ったが止めておいた。私はこの準備体操の後に猛ダッシュすることがままある。さらっとした酔いで美しく帰る決断をした。
地下鉄に乗る。遠藤氏の言葉がよみがえる。
「時代は変わりつつある。浅草が好きになったとマンションを買う独身女性が増えたことでもそれでわかる。でもね、やっぱりまだのんびりしています。浅草のバーはね、のん気だよ」
地下鉄の社内は暖かくて、眠くなった。浅田次郎の『地下鉄に乗って』みたいに過去にタイムスリップしないかな、と期待する。
夢をみた。大みそか、『オレンジ・ルーム』で除夜の鐘を聞きながらラフロイグを飲んでいた。遠藤氏に「浅草寺に初詣に行きませんか」と声をかけられたところで目が覚めた。乗り換え駅だった。
『オレンジ・ルーム』で、はたして除夜の鐘の音は聞こえるのだろうかと考えながら腰を上げた。今度、遠藤氏に聞いてみなければ。
INDEX『おすすめのバー・東京』もご覧いただきたい。
ORANGE-ROOM
東京都台東区浅草1-41-8 清水ビル1F
Tel.03-3842-5188 無休(元旦のみ休)
チャージ¥500、ウイスキー¥700~、カクテル¥800~