スコットランドはスペイサイド。スペイ川に沿って蒸溜所が点在するウイスキー街道の途中に、ひなびた石造りの小さな町、ダフタウンがある。
横浜は石川町にある飛塚基氏のバー『ザ・ダフタウン』はその町の名を冠したものだ。JR石川町駅南口から30秒もかからない。つい勢いで通り越してしまう。
あれっと振り返って見上げると、20メートルほど後にグレンリヴェット8年のラベルを模した看板がぶら下がっている。私は2回つづけて行き過ぎてしまったことがある。
急な階段を2階へ上がると、扉のガラス越しに細長い直線的なパブリック・バーが覗き見える。
中へ入るとカウンターのみで丸椅子が17脚。非常に潔いつくりだ。カツンとキックの効いたウイスキーを嘗めたくなる。バックバーのボトル棚にはウイスキーがずらりと並び、余計にその気にさせる。そして青地に白の斜め十字、セント・アンドリュースの旗が飾ってあり、スコットランドの香りが伝わってくるのだ。
飛塚氏はモルトブームが訪れるずっと前、1993年からモルト中心のバーとしてやりつづけている。
「はじめの2年ぐらいはまるで駄目でしたね。カクテルがほとんどでした。最近のモルトへの高まりは夢のまた夢といった感がありました」
3年目ぐらいから浸透しはじめたと飛塚氏は言う。
ここは30代半ばより下の客が多い。これは嬉しいことだ。モルトはブームとは言え、全体的にはウイスキー離れは進んでいる。若い人たちがウイスキーを飲んでいる姿を見ると、まだまだ未来はあるぞと喜んでしまう。
ウイスキーは大人の香味の、大人の酒。最近、大人になろうとしない若い人たちばかりだと嘆いていたのだが、そうでもないらしい。