実は店主の梶川洋氏がつくるジン&ライムが大好きで、必ず飲む。そしてトリスを飲む。つまりここでは、いつもこの2品しか味わっていないことになる。時に特製生ハムサンドを食べることもあるから、3品になるか。
店にとっては単価の低い客で申し訳ないと思っているが、梶川氏がとくに他をすすめてくることもないので、マイペースに徹して飲んでいる。
ちなみにトリスはTハイ(トリハイ)が一番いい。スクエアはとくにソーダで割るのがいい。アルコール度37%で、軽やかなモルトを使っているが、私はグレーン原酒、つまりダシがいいのではないかと思っている。ソーダで割った時のすっきりとした飲み口に、そんな勘が働く。
『メダカ』では、たっぷりのトリス(おそらく50mlは入っている)に、ソーダを注ぐ。レモンスライスをグラスに沈めてもらうかどうかは、その日の気分だが、それで一杯500円。夜の8時までに入店すれば、チャージ料を取らないから、2杯飲んでピュッと帰っても1000円なのだ。
26日、梶川氏が話しかけてきた。彼は私より6歳年下だから39歳のはずで、アンクルトリスのCMは子供の頃の記憶でしかない。
「あのCMの復活はいいんじゃないですかね」
「どうだろう。ただ僕にとっては新鮮だった。いつの間にか自分が、アンクルトリスといえる年齢になっちゃったことに気づかされて、驚いた。もっと年配の人にとっては懐かしいだろうね」
「そうでしょうね。サラリーマンを元気づけたり、提言があったりした広告だったんでしょう。いま、語りかけてくるようなCMがないじゃないですか。またそんなCMになるといいですね」
「不景気、リストラ、戦争のニュースばかりだもんな。CMぐらい、何かほっとさせてほしいよな」
「まったく、そう思いますよ。なんとなくウイスキーっていいな、飲みたいなって、そんな気持ちにさせるCMを流してほしいですよ」
梶川氏の言う通りだ。かつてのトリス・ブームの時代とはまったく変貌してしまった世の中だが、いまだからこそ語りかけられることがたくさんあると思う。
しかもウイスキーは饒舌だ。語りかけてくることがいっぱいある。
Bar Medaka
東京都渋谷区神宮前4-31-16 原宿80 1F奥
Tel.03-3475-1737
18:00~4:00(土16:00~4:00/祝18:00~1:00)日休
チャージ¥500(20時までに入店すればチャージは無し)、トリス、トリス・スクエア¥500、その他のウイスキー¥800~、カクテル¥900~、生ハムサンド¥500
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