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炭酸水とハイボールの歴史3/ソーダ・ファウンテン

炭酸水とハイボールの歴史3回目。19世紀以降のアメリカでドラッグストアにソーダ・ファウンテン、つまり炭酸水を注ぐディスペンサーが開発、設置されて行く。その歩みとともに、バーで「ジン・リッキー」の元となった「ジョー・リッキー」や「ジン・フィズ」のはじまり、日本でのラムネの誕生について述べたい。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

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炭酸水はドラッグストアで飲むもの

 
ジン・リッキー

ジン・リッキー

 19世紀前半のヨーロッパではワインとソーダ水の「スプリッツァー」が流行した。このことは『炭酸水とハイボールの歴史1/炭酸飲料のはじまり』で述べたが、その後につづいたのは「ブランデー&ソーダ」である。19世紀半ば過ぎにはイングランドの上流階級の間ではかなり嗜まれていたようだ。
 一方、アメリカでは炭酸飲料王国となるベースが築かれていく。19世紀半ば前後から加圧式炭酸水製造機の改良、開発がすすむ。ボストンのA.D.パッファ、ジェームズ・W・タフツ、フィラデルフィアのジョン・リッピンコットといった開発者が登場する。
 薬局経営者が多く参入していたように、ドラッグストアのカウンターに設置することを念頭にソーダ・ファウンテン(炭酸水のディスペンサー)を設計した。
 彼らは大理石をはじめ鉄や銅を素材とした箱型の装置をつくりはじめたが、やがてデザインに凝った進化した装置に変貌していく。当時流行だったロマン派風、あるいは新古典主義の建築、インテリアのスタイルを取り入れるようになる。白鳥、獅子、カントリーハウス、寺院、スフィンクスなど珍妙といえる意匠ではあったがどれも人気が高かったという。すべてはドラッグストアの来店客を驚かせ、喜ばせるために考案されたものである。
 このシリーズの1回目、2回目でも述べているが、炭酸水が病に効くと信じられていて、大衆の関心も高かったこともあり、こうした機器の登場によってよりドリンクとしての人気が急上昇する。とくに南北戦争後(1861−1865)、ソーダ・ファウンテンは急速に普及していくようになる。
 1870年代になると、薬剤師やドラッグストア・オーナーたちがこぞってソーダ・ファウンテンを注文し、店に設置していった。ここからソーダ・ファウンテン事業は振興していき、産業として発展。全米のドラッグストアに華美なデザインのソーダ・ファウンテンが設置されていくようになった。
 

カクテルでリッキーやフィズが登場

 
ジン・フィズ

ジン・フィズ

 さて、日本はどうであったか。まずポピュラーとなった炭酸飲料水はラムネであった。レモネードが転訛してラムネと呼ぶようになったといわれている。日本への伝来はさまざまに語られているようだが、イギリスからもたらされたとされている。
 明治初期に神戸のシム商会が製造、販売し、1872年(明治5)5月4日には日本人による製造が許可された。つまり、今年で150周年ということになる。
 まだ酒との結びつきはなかったようだ。ただし、横浜といった外国人居留地では、「スプリッツァー」や「ブランデーソーダ」が飲まれていたかもしれない。
 
 では、アメリカでの酒の世界ではどうであったか。1880年代には「ジョー・リッキー」が誕生している。ライウイスキー(もしくはバーボン)、フレッシュライムジュース、そしてソーダ水のカクテルである。これがジンベースに取って代わり、「ジン・リッキー」がポピュラーになっていった。
 また同じ時代に、いまでは「ジン・フィズ」(ジン、レモンジュース、砂糖、ソーダ水)がスタンダードとなっているフィズ類がさまざまに登場している。
 ここで前回『炭酸飲料とハイボールの歴史2/セルツァーとは何だろう』で登場した、セルツァー・ウォーター、ゼルタース・ウォーター、カーボネイティド・ゼルタース、サイフォン・ゼルタースといった表記が当時のカクテルブックに見られる。つまり、ドイツのニーダーゼルタースの天然炭酸水、セルツァーは、すでに炭酸水を包括する一般的な用語として定着していたということになる。
 次回は、アメリカのいまに通じる炭酸飲料の開発について述べたい。(カクテル撮影・児玉晴希/『炭酸飲料とハイボールの歴史4』につづく))
 

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