麦由来の柔らかくふくよかな甘さで魅了
2009年蒸溜、12年熟成の「シングルモルトウイスキー山崎蒸溜所<ゴールデンプロミス>」のつくりや味わいについて語ってみよう。あくまでわたしの感覚である。
アルコール度数53%は樽出しの度数である。この度数から、おそらく貯蔵庫内でも温度が低く、湿度が高い最下段あたりでじっくりと熟成されたのではなかろうか。上段であれば温度は高く、湿度は低くなるからアルコール度数はもっと高いはずである。
使用された樽はアメリカンオーク。容量の異なる何タイプかの樽で熟成させて、ブレンドしているようだ。おそらく何回か熟成に使われたものであろう。若くて材のパワーにあふれた樽は使用していないはずだ。ウッディな感覚、樽の影響が香味に強く出ないよう配慮されていると思われる。
アルコール度数と熟成樽から推察すると、ゴールデンプロミス種のノンピーテッド麦芽由来の香味特長を最大限引き出せるようにと考えられたものであろう。これが前ページで述べた、ザ・エッセンス・オブ・サントリー・ウイスキー、実験的、挑戦的試みの証である。
グラスに注ぎノージングすると、やはり。麦由来の柔らかいふくらみのある甘さが浮遊してきた。嫌な角(かど)がない。
柑橘系のレモンのような、また温州みかんのような和のニュアンスもあるような気がした。これはわたしの印象にしかすぎないかもしれない。
口にすると、想像していたよりも懐が深く、とても美味しい。はちみつ様のふっくらとした甘みのなかに酸味が優しく溶け込んでいる。酸味に嫌味がない。クリーミーさも感じる。そしてこれらの味わいの余韻がとても長くつづく。
アタマに浮かんだのが“麦とろろ飯”と“どら焼きの皮”である。つくり手の方には失礼かもしれないが、いい意味で、穏やかな、なんだか和の感覚がある。あえて洋で、というならば、イメージとしては“パンケーキ”といえようか。
というのは、やはり「山崎」、ザ・ジャパニーズモルトなのである。当たり前なのだが山崎蒸溜所の仕込水や醸造、蒸溜、熟成環境などすべてが投影された「山崎蒸溜所ゴールデンプロミス」であり、似通ったつくりをしたとしてもスコッチでこのしなやかさは生まれるかな、と想うのだ。それこそバターっぽい“パンケーキ”や“スコーン”が浮かぶのではなかろうか。たとえているのは小麦を使用するものばかりだが、それだけ柔らかい印象がある。
最後に数滴加水してみた。すると高いアルコール度数でロックされていた香味が解き放たれ、スパイシーさが表出してきた。面白い。ジンジャーやハーブ系の香味である。
(「山崎蒸溜所アイラピーテッドモルト」記事へ)
「YAMAZAKI DISTILLERY GOLDEN PROMISE
シングルモルトウイスキー山崎蒸溜所<ゴールデンプロミス>」
500ml・53%・¥8,000(税別希望小売価格/バー業態主体・数量限定販売)
色 明るい黄金色
香り 柔らかい香り・麦の甘い感じ・はちみつ
味わい 濃密な口当たり・はちみつの甘み・かすかな酸味・深い味わい
余韻 クリーミー(立体的)・甘みと酸味が織りなす長い余韻
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