世界遺産/アジアの世界遺産

アジア東部の世界遺産(4ページ目)

長江や黄河、メコンといった大河に育まれ、長い歴史と豊かな文化を誇るアジア東部。温帯域は高山と砂漠、森林からなり、熱帯域には深いジャングルが広がる。ここでは東アジアと東南アジアの世界遺産を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

フィリピン・コルディリエラの棚田群

バナウェの棚田群

その美しさから「天国への階段」と称えられるバナウェの棚田

フィリピン、1995年、文化遺産(iii)(iv)(v)
ルソン島のコルディリエラ山脈には2,000年も前から伝わる広大な棚田群がある。棚田は険しい山の斜面全域に築かれており、細いあぜ道以外のほとんどが水田。あぜの総延長は、一説によると地球半周分の20,000kmに達するという。これだけの水田全てに水を行き渡らせるのは至難の業で、それゆえ棚田は神様からの授かりものと伝わっている。近年休耕地が増えており、水利システムに障害も出始め、2001年に危機遺産に登録された。

紹介記事はこちら>>コルディリェーラの棚田群/フィリピン

 

古都ビガン/フィリピン

古都ビガン

ビガンの美しい街並み

フィリピン、1999年、文化遺産(ii)(iv)
東アジア貿易の拠点としてスペイン人が築いた植民都市ビガン。スペインのコロニアル建築をベースに、先住民イロカノ人の木造家屋や中国商人がもたらした瓦を合わせて築いた美しい街並みは、大航海時代の思い出を当時のままに伝えている。また、この街は太平洋戦争末期、日本軍によって破壊と住民虐殺の命令が下されたが、ひとりの日本人の決意によって救われている。街を守ろうという機運はその頃から引き継がれ、2012年には街をあげての保護活動が評価されて世界遺産管理における最高のモデルであるとしてベスト・プラクティスを受賞している。

紹介記事はこちら>>古都ビガン/フィリピン

 

ハロン湾

ハロン湾

山のような島々が連なるハロン湾

ベトナム、1994年、2000年拡大、自然遺産(vii)(viii)
中国の華南からベトナム北部にかけては石灰岩のカルスト地形が多く見られ、中国の世界遺産「中国南部カルスト」やベトナムの世界遺産「フォンニャ・ケバン国立公園」のような奇岩群や鍾乳洞が点在。極めつけがハロン湾で、水に溶けやすい石灰岩が浮沈を繰り返して海に削られ、スコールに打たれた結果、1,500とも3,000ともいわれる独特の形をした島々を生み出した。島内には数多くの鍾乳洞があり、無数の水中洞窟が存在する。

紹介記事はこちら>>ハロン湾/ベトナム

 

フエの建造物群

王宮の午門

鳳凰のように両翼を開く王宮の午門

ベトナム、1993年、文化遺産(iv)
中国式の宮殿や庭園、フランス式の城塞や家屋に、ベトナム独自の装飾・建築様式を加えた華やかな建物が残るベトナム中部の街フエ。ベトナム最後の王朝・グエン朝はこの街に都城を築き、王宮を建てて、華麗な文化を開花させた。一方で、フランスや中国、日本、アメリカの標的となり、ベトナム戦争では多くの建物が破壊されてしまった。 

紹介記事はこちら>>フエの建造物群/ベトナム

 

チャンアン複合景観

タムコック

「チャンアン複合景観」のハイライトのひとつ、タムコックの絶景

ベトナム、2014年、文化遺産(v)、自然遺産(vii)(viii)
大地から突き出す無数の奇岩・奇峰をバックに、美しい水田や農村、河川・湖沼が広がるベトナム北部の省、ニンビン。ここには「陸のハロン湾」と呼ばれるタムコックや、洞窟と渓谷の名勝・チャンアン、洞窟寺院・ビックドン、千年の歴史を誇る首都遺跡・ホアルーをはじめ、数多くの名所が点在している。こうした自然・文化両面の普遍的価値が評価されて複合遺産として登録された。

紹介記事はこちら>>チャンアン複合景観/ベトナム

 

フォンニャ-ケバン国立公園

2003年、2015年拡大、自然遺産(viii)(ix)(x)
ティエンドゥオン洞窟の壮大な鍾乳石

ティエンドゥオン洞窟の壮大な鍾乳石

大地からボコボコと立ち上がる奇岩=タワーカルストや、鍾乳石に彩られた華麗な洞窟群は、大自然が4億年をかけて創り上げた天然の芸術作品群。園内には、美しい鍾乳石で彩られたもの、地下河川が流れるもの、泥に覆われたもの、無数のツバメやコウモリが棲みつくものと、多彩な洞窟が300以上も存在する。近年はランドマークであるフォンニャ洞窟とティエンソン洞窟の他に、トイ洞窟、ソンドン洞窟、エン洞窟等々、多彩な洞窟がオープンし、注目を集めている。

紹介記事はこちら>>フォンニャ-ケバン国立公園/ベトナム

 

古都ホイアン

グエンティミンカイ通り

かつて日本人街が広がっていたというグエンティミンカイ通り

1999年、文化遺産(ii)(v)
トゥボン川の優雅な流れとヤシの林が強烈なコントラストを描き出すエキゾチックな景色の中に、洋風のコロニアル建築、中国風の道勧(道教の寺院)、ベトナム風の古民家が見事に調和した古都ホイアン。東洋と西洋の種々の文化を融合させた歴史ある街並みは、ベトナム人はもちろん、日本人やフランス人も「懐かしい」と語るノスタルジックな街並みに仕上がっている。

紹介時期はこちら>>古都ホイアン/ベトナム

 

マラッカとジョージタウン、マラッカ海峡の古都

ジョージタウン、世界遺産地区の街並み

ジョージタウン、世界遺産地区の街並み

マレーシア、2008年、文化遺産(ii)(iii)(iv)
一本の通りに並ぶ仏教、道教、儒教、キリスト教、ヒンドゥー教、イスラム教の寺院。ひと皿の料理に感じる中国、マレー、インドの香り。建物はそれらに加えてオランダ、イギリスの影響が見て取れる。マラッカとジョージタウンは古代から海のシルクロードとして、あるいは大航海時代の香辛料貿易の拠点として繁栄した文化の交差点。街を歩いていると次々変わる景色や人、言葉がおもしろい。

紹介記事はこちら>>マラッカとジョージタウン/マレーシア

 

ルアン・パバンの町

朝の托鉢風景

朝の托鉢風景

ラオス、1995年、文化遺産(ii)(iv)(v)
ラオスの古都ルアン・パバンは現在のラオスの原型となるラーンサーン王国最初の首都であり、仏の心がいまに伝わる生きている聖地。メコン川が育む熱帯の深い緑の中に60以上の寺院が点在し、僧たちはいまだ托鉢によって食べ物を手に入れている。フランス領インドシナに組み込まれるとコロニアル風の家々が建設され、ラオス特有の木の文化とヨーロッパの石の文化が合わさった独特の街並みを生み出した。

紹介記事はこちら>>ルアン・パバンの町/ラオス

 

ワット・プー

ワット・プーの本殿

聖地カオ山の中腹にたつワット・プーの本殿。かつてはヒンドゥー寺院だったが、現在は仏教寺院として祀られている

聖なる山と称えられたカオ山の麓には、5世紀頃から1000年以上にわたって古代都市が栄えていた。扶南、真臘、アンコール朝、ラーンサーン王国、チャムパーサック王国、フランス等々と宗主国が変わり、宗教もヒンドゥー教から上座部仏教へと移ったが、カオ山とワット・プーは聖地として人々の祈りを受け続けてきた。そして山や川・森林・田畑・寺院が一体化した美しい文化的景観は、神と自然を同一視する世界観の表れでもある。

紹介記事はこちら>>ワット・プー/ラオス

 

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