世界遺産/アジアの世界遺産

アジア東部の世界遺産(3ページ目)

長江や黄河、メコンといった大河に育まれ、長い歴史と豊かな文化を誇るアジア東部。温帯域は高山と砂漠、森林からなり、熱帯域には深いジャングルが広がる。ここでは東アジアと東南アジアの世界遺産を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド


黄龍の景観と歴史地域

黄龍の石灰棚

龍の鱗のように美しい黄龍の石灰棚

中国、1992年、自然遺産(vii)
黄色い石灰岩が特徴的な世界遺産。古来中国には、天の東に青龍、西に白龍、南に赤龍、北に黒龍がいて、中央の黄龍がすべてを支配するという伝説があった。連なる黄色い石灰棚は龍の鱗、傾斜に流れる川の流れは天へ昇る龍の体を滑る水しぶき。最初にここを祀ったのは謎の王朝「夏」を立てた禹で、この黄色い龍のために霊廟を建てたといわれている。ジャイアントパンダやレッサーパンダ、キンシコウなどの重要な生息地でもある。

紹介記事はこちら>>黄龍/中国

 

ラサのポタラ宮歴史地区

ポタラ宮

ソンツェン・ガンポによって建立されたポタラ宮 ©牧哲雄

中国、1994年、2000年拡大、2001年拡大、文化遺産(i)(iv)(vi)
ポタラ宮は神が暮らす聖家、ノルブリンカは神の離宮、そしてジョカンはチベット仏教徒が生涯一度は訪問を夢見る聖なる巡礼地で、世界遺産にはこの3つの建物が登録されている。衝撃的なのがジョカン。サンと呼ばれる香の煙が立ち込めるなか、人々はうつ伏せたり立ち上がったりを繰り返す「五体投地」で祈りを捧げ、ジョカンを取り囲むパルコルを時計回りに回って巡拝を行う。6,000m級の山々を数十日もかけて乗り越え、命がけでここを目指す人もいる。

紹介記事はこちら>>ラサのポタラ宮/中国

 

麗江旧市街

麗江の家並み

青銀の瓦が美しい麗江の家並み ©牧哲雄

中国、1997年、文化遺産(ii)(iv)(v)
5,000m級の山々が連なる玉龍雪山の麓に広がる青く輝く美しい街。空は深い青、300以上の橋があるというほど張り巡らされた水路は青い空を映し出し、家々の屋根瓦は青銀に輝き、ナシ族の人々が着る民族衣装は鮮やかな青で染め抜かれている。ナシ族が何より大切にしたのが恋と自由。子供を産み育てる女性をたたえ、母系制をとり、自由に恋をして、周囲の民族から「蟻ほど勤勉に働き、蝶のように楽しく暮らす」と評された。

紹介記事はこちら>>麗江旧市街/中国

 

蘇州古典園林

拙政園の遠香堂

中国四大名園に数えられる拙政園の遠香堂

中国、1997年、2000年拡大、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)
「江南の庭園は天下一、蘇州の庭園は江南一」といわれる蘇州の庭園群。「上有天堂 下有蘇杭」という言葉があるが、「天に楽園、地に蘇州・杭州あり」の意味。天の楽園と並ぶほど美しい街として知られ、自然を楽しむ離宮が造られ、自然を自分の敷地で表現する庭園文化が発達した。壁を区切って景色を変える換景、回廊で次の景色につなげる障景、園外の景色を使った借景などの技術を用い、自分を自然に投影して自己表現を行った。

紹介記事はこちら>>蘇州古典園林/中国

 

天壇:北京の皇帝の廟壇

天壇祈年殿

明の永楽帝が建立した天壇祈年殿 ©牧哲雄

中国、1998年、文化遺産(i)(ii)(iii)
地を治める皇帝が天帝と交信して天命を受ける場所「壇」。世界遺産には天壇が登録されており、天壇の中でも重要なのが祈年殿と圜丘壇だ。祈年殿は天を示す青、奇数、円からなる壮大な建物で、カラフルな彫刻が美しい。一方圜丘壇には建物がなく、地を示す四角形の外壁の中に円形3層の基壇があるのみで、不思議な空気に包まれている。最上段には天心石を中心に石板が同心円状に敷かれており、皇帝はこの上に立って祈りを捧げた。

紹介記事はこちら>>天壇/中国


 


莫高窟

莫高窟、第96窟の九層楼

莫高窟、第96窟の九層楼。43mの高さがあり、中には高さ35mの弥勒菩薩が祀られている ©牧哲雄

中国、1987年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)
文化遺産の登録基準1~6をすべてクリアした世界でたった3つの物件のひとつであるキング・オブ・世界文化遺産。また、すべて世界遺産に登録されている中国三大石窟(雲崗、龍門、莫高窟)の中でも質・量ともに最大規模を誇る。4~13世紀、約1,000年の間に造られた492の石窟の中は極彩色の壁画と仏像で彩られており、時代時代の世界観を表している。また、敦煌の近くには月牙泉、玉門関、陽関と、見所が非常に多い。下記の記事では簡単にこれらも解説する。

紹介記事はこちら>>敦煌・莫高窟/中国

 

安徽南部の古村落 - 西逓・宏村

宏村南湖の石橋と家並み

宏村の南湖にかかる石橋と家並み

中国、2000年、文化遺産(iii)(iv)(v)
中国随一の名山・黄山の麓に位置する西逓と宏村。西逓は小さな桃源郷、宏村は水墨画の郷里と呼ばれ、素朴で美しい街並みが評価されて中国中央テレビが選ぶ十大名鎮にも選出された。最初にここに住み着いたのは唐の皇帝・昭宗の息子・明経。政権抗争に疲れ果てた明経は、名前を捨ててこの地で隠遁生活を送った。15世紀、その子孫が徽商として大成功すると、故郷である西逓・宏村の街を徐々に整備して、400年ほど前には現在の姿になった。

紹介記事はこちら>>西逓・宏村/中国

 

黄山

黄山の雲海

「黄山の四絶」に数えられる雲海

中国、1990年、文化遺産(ii)、自然遺産(vii)(x)
中国には五岳といわれる聖山があるが、「五岳を見てしまったら他の山なんて見れない。黄山を見てしまったらその五岳さえ見れない」といわれる天下第一の名山が黄山だ。中国の山水画を思わせる特徴的な景観がすべて集まっていることから「天下の名勝、黄山に集まる」といわれ、特に怪石、奇松、雲海、温泉の4つの絶景は「黄山の四絶」と評されている。

紹介記事はこちら>>黄山

 

開平の望楼群と村落

開平、自力村の銘石楼屋上からの眺め

開平、自力村の銘石楼屋上からの眺め

中国、2007年、文化遺産(ii)(iii)(iv)
中国と欧米の伝統が融合して誕生した世にも珍しい歴史的高層建築、開平望楼。開平の村落に は3000以上の望楼が建設され、1833棟が現存しているが、昔ながらの生活を守り伝える三門里、自力村、馬降龍、錦江里の4村落と20棟の望楼が 2007年に世界遺産に登録されている。

紹介記事はこちら>>開平の望楼群と村落/中国

 

福建の土楼/中国

洪坑土楼群・振成楼の美しい内観

洪坑土楼群・振成楼の美しい内観

中国、2008年、文化遺産(iii)(iv)(v)
森と畑が広がる深い渓谷に突如姿を現す直径70m、6階建ての巨大な建造物、客家土楼。個々の土楼が驚異的であるうえに、自然には不似合いな円形・楕円形・正方形・長方形・六角形といった幾何学図形が連なる様は感動的なほどに神秘的だ。中国南部にはそんな土楼がいまなお約3万も残されており、そのうち46棟が世界遺産に登録されている。

紹介記事はこちら>>福建の土楼/中国

 

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