皇帝が宇宙と交信する異次元空間 北京天壇

天を治める「天帝」に対して、地を治める天帝の子「天子」。中国には天子たる皇帝が天帝と交信する「壇」と呼ばれる施設があった。

北京にある壇のうち、もっとも規模が大きく美しいのが天壇(ティエン・タン/てんだん)だ。皇帝は毎年冬になるとこの祭壇を訪れて天命を受けた。今回は天と地の狭間、皇帝のみに許された最強のパワースポット、中国の世界遺産「天壇:北京の皇帝の廟壇」を紹介する。

自然と数学、星々と数字

天壇公園の祈年殿全景。公園の大きさは南北約1.5km、東西約1.0kmで、北側の半円、南側の四角形がくっついた形になっている ©牧哲雄

天壇公園の祈年殿全景。公園の大きさは南北約1.5km、東西約1.0kmで、北側の半円、南側の四角形がくっついた形になっている ©牧哲雄

「自然という書物は数学という言語で書かれている」(ガリレオ・ガリレイ)

古代から、人間は世界を支配する不思議な法則に気がついていた。たとえば星を眺める。星たちは大地の彼方から昇ってきて、反対側の大地へ落ちていく。その際、すべての星は必ずある方角でもっとも高くなる(南中)。その逆の方角を眺めると、星たちは円を描くように動いていて、その中心にほとんど動かない1点の星を発見する(北極星)。

星の動きに同期するように季節が巡り、日々が繰り返される。「この自然は何か偉大なものの意志によって動かされている」。いずれの民族もこう考えた。だからこそ、多くの古代遺跡が東西南北を強く意識したものになっている。

「天円地方」。天は円、大地は方(四角)。古代中国で円=天と考えられたのも、星々が円を描くように動いていたからだ。

円形の内壁外側から見た圜丘壇。門の形も特異 ©牧哲雄

円形の内壁外側から見た圜丘壇。門の形も特異 ©牧哲雄

北京にある天壇公園には、皇帝が天を祀った圜丘壇(ファン・チュイ・タン/かんきゅうだん)と呼ばれる基壇がある。方形(四角形)の外壁で囲われた空間の中に円形の内壁があり、その内側に3層の丸い基壇が築かれている。

石で造られた欄干(手すり)の数は、下層で180、中層で108、上層が72、すべて9の倍数で、足すと360で陰暦の日数になる。また、壇上には天心石を中心に同心円状に石板が敷き詰められているが、もっとも内側の円が9、二重目が18、三重目が27……九重目が81枚の石板という具合に、これも9の倍数からなっている。

ちなみに、9の倍数は各桁の数字を合計するとやはり9の倍数になる。圜丘壇の石板の数は3402枚だが、3402なら3+4+0+2=9だ。

こうして人々は天との交信を行う祭壇=天壇に、数字という形で思いを込めた。