「奄美・沖縄」が日本の24件目の世界遺産、5件目の自然遺産へ!

西表島のマングローブ林

西表島のマングローブ林と常緑広葉樹林。西表島は島の約72%が世界遺産の資産となっている (C) KEIKI_HAGINOYA amanaimages

■目次 2021年5月現在、日本には23件の世界遺産があり、そのうち19件が文化遺産、4件が自然遺産となっている。これまでに登録された日本の自然遺産は以下の通り。
  • 白神山地(1993年、青森県・秋田県)
  • 屋久島(1993年、鹿児島県)
  • 知床(2005年、北海道)
  • 小笠原諸島(2011年、東京都)
日本政府は2019年1月に5件目の自然遺産を目指して「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県・沖縄県)」をユネスコ(国際連合教育科学文化機関)に推薦し、2020年の第44回世界遺産委員会で登録の可否が決まる予定だった。しかし、新型コロナウイルスの影響で委員会が1年延期され、2021年7月16~31日にオンラインで行われることになった。

そして自然遺産の調査・評価を担当しているIUCN(国際自然保護連合)はこの5月上旬に「登録」の勧告を通知した。勧告には登録・情報照会・登録延期・不登録の4段階があるが、登録勧告は最高評価で、実質的に内定を意味する。これにより登録はほぼ確実となった。
 

「奄美・沖縄」の何がスゴいの? 突出した生物多様性と固有種率

ヤンバルクイナ

沖縄島北部の固有種で絶滅危惧種のヤンバルクイナ。ほとんど飛ぶことができず、走って移動する

世界遺産リストに登録されるためには、世界に類を見ない「顕著な普遍的価値」を持っていなければならない。価値の評価基準が10項目の「登録基準」で、少なくとも1項目以上、満たす必要がある。「奄美・沖縄」はその第10番目を満たすものとして推薦された。
  • 登録基準(x):学術上・保全上の観点から顕著な普遍的価値を有し、絶滅の恐れがある種が生息しているなど、生物の多様性保全の観点からもっとも重要な自然の生息地を含むもの
簡単にいえば、「生物多様性や絶滅危惧種の保護といった点で重要な自然」ということだ。

推薦された地域は日本の国土面積の0.5%に満たないが、日本の維管束植物(シダ植物や種子植物)の26%、陸生哺乳類の19%、鳥類の62%、陸生爬虫類の50%、両生類の28%、陸水性魚類の68%、昆虫類の21%ほどの種が集中している。しかも固有種率が非常に高く、特に陸生哺乳類の62%、陸生爬虫類の64%、両生類の86%、昆虫類の26%はここにしかいない固有種だ。

IUCNレッドリストに搭載された絶滅危惧種は95種(固有種75種を含む)を数え、日本の維管束植物の絶滅危惧種の55%、脊椎動物の36%、昆虫類の56%を占めている。

一例がアマミノクロウサギだ。奄美大島と徳之島にだけ生息する体長40~50cmほどのウサギ科アマミノクロウサギ属の固有種で、1属1種で近縁種すら存在しない。IUCNレッドリストの絶滅危惧種で、個体数は奄美大島で数千、徳之島で数百頭と推定されている。また、イリオモテヤマネコは「ヤマネコの生息する世界最小の島」といわれる西表島にのみ生息するネコ科ベンガルヤマネコ属の固有種で、絶滅寸前種に指定されており、個体数は100~150頭程度と見られる。
 

1200万年の奇跡! 「奄美・沖縄」誕生のドラマ

奄美大島の常緑広葉樹林 

緑が深い奄美大島の常緑広葉樹林
 (C) TAKASHI YAGIHASHI/a.collectionRF /amanaimages

推薦された地域は九州と台湾島の間に約1200kmにわたって弧状(琉球弧)に点在する琉球列島(南西諸島)に位置する。そして琉球列島は九州に近い北琉球(屋久島など)、真ん中の中琉球(奄美大島、徳之島、沖縄島など)、台湾に近い南琉球(西表島など)の3地域に区分される。

新生代(6600万年前~現在)より前の時代、琉球列島は九州とともに大陸の縁に位置しており、深い森に覆われていた。一帯はユーラシア・プレートとフィリピン海プレートの接面に位置しているが、1200万年ほど前から後者の活動が活発化して前者の下に沈み込んだ。この影響で1000万~600万年前に九州と琉球列島が大陸から分離し、九州・北琉球と中琉球は水深1000mを超えるトカラ海峡で、中琉球と南琉球は幅200kmを超える宮古海峡で、その後に大陸から分離した台湾島と南琉球は水深500mを超える与那国海峡で分断された。

新生代第四紀の更新世(約258万~1万年前)の氷期と間氷期の繰り返しの中で海面の高さは大きく変化し、島々は接続・分離を繰り返した。しかし、北琉球と中琉球、南琉球と台湾島がつながることはなかったようだ。

180万年前までには暖流である黒潮(日本海流)が琉球列島の東を流れるようになり、海峡は早い流れで分断された。この流れにより動植物の行き来が難しくなると同時に、高温多湿の気候がもたらされた。島々にサンゴ礁やマングローブ林が生まれたのもこの頃だ。

以上のように、中琉球と南琉球の深い森はもともと大陸だったことに由来し、さらに黒潮の流れが大陸とも違うユニークな森を育んだ。中琉球は北琉球や九州、南琉球は台湾や大陸の影響を受けて多様な種が流入したが、いずれも直接陸続きにならなかったことから独自の生態系が誕生した。この長い歴史と絶妙な位置取りのおかげで「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」はオンリーワンの自然となった(以上の地史については未解明の部分も多く、異説あり)。
 

世界遺産登録失敗! 2018年に経験した推薦の取り下げ

西表島の深い森

西表島の深い森。左に伸びている木はサキシマスオウノキ

実は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は2017年1月にも推薦されているが、2018年5月に「登録延期」という厳しい勧告を受けた。そのとき指摘された主な内容が以下。
  • 4島の24件を構成資産としているが、虫食いで分断されており、生態系の維持に重大な懸念がある
  • 沖縄島のアメリカ海兵隊北部訓練場の返還地をはじめ重要なエリアが含まれておらず、逆に不要なエリアが含まれている
  • 奄美大島のノネコ管理計画など侵略的外来種に対する取り組みを進め、他の種にも拡大すべきである
  • 観光開発計画や絶滅危惧種の状態管理、気候変動のモニタリングなど、必要な計画やシステムを完成に近づけること
当初は登録基準(ix)(生態学的・生物学的に重要な生態系)と登録基準(x)を満たすものとして推薦されていた。しかし、4島24カ所の虫食いでは生態系や生物多様性の維持・絶滅危惧種の保護は難しいとし、特に登録基準(ix)の重要な生態系であるという推薦理由については認められないとする指摘を受けた。

そのまま推薦を進めて世界遺産委員会で逆転を目指すシナリオもあったが、指摘が世界遺産の価値に関わる根本的な問題であったため推薦を断念し、2018年6月に推薦を取り下げた。
 

再挑戦! 新たに推薦された「奄美・沖縄」のポイント

浦内川とマリユドゥの滝

西表島の中央付近から北西へ流れる浦内川とマリユドゥの滝

2019年1月、政府は約半年間の準備を経てふたたび推薦にこぎ着けた。この推薦に当たって主に以下のように推薦書が修正されている。
  • 登録基準(ix)での推薦を断念する
  • 構成資産を4島5件にまとめる
  • 不要な候補地を削除し、北部訓練場返還地などを追加する
  • ノネコ対策などの計画・システムを推し進める
最終的に構成資産となったのは以下の4島5件の4万2698ha(426.98平方km)の陸域だ。括弧内は(県名、資産の面積/島の面積)だ。
  • 奄美大島(鹿児島県、1万1640ha/7万1235ha)
  • 徳之島a(鹿児島県、1724ha/2万4785ha)
  • 徳之島b(鹿児島県、791ha/2万4785ha)
  • 沖縄島北部(沖縄県、7721ha/12万696ha)
  • 西表島(沖縄県、2万822ha/2万8961ha)
前回の推薦時は4島24件で計3万7946haだった。これに対して今回は各島1~2件にまとめられ、総面積は10%以上拡大した。2021年5月上旬にIUCNは登録勧告を通知したが、こうした修正が生態系や生物多様性の維持・絶滅危惧種の保護に好影響を与える点を評価したものと思われる。
 

世界遺産登録はいつ? 今後の予定

西表島のマングローブ林

西表島、オヒルギという植物によるマングローブ林

当初は中国の福州で開催される予定だった第44回世界遺産委員会だが、コロナ禍が収まらないことから2021年7月16~31日にオンラインで開催されることとなった。

この際、次の第45回世界遺産委員会で登録の可否が決まるはずだった物件も合わせて審議されることになり、つまり2年分の推薦物件の審議が行われることに決定した。日本の物件としては、文化遺産候補地「北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道・青森県・岩手県・秋田県)」も登録勧告を得ており、登録が決まる見込みだ。

新登録物件の審議は7月24~27日に予定されており、この期間に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」登録の朗報がもたらされるものと思われる。

[関連サイト]

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