パワースポット=天壇を覆う不思議な空気

南側のエントランスである昭亭門から見た天壇。建物が一直線に並んでいるのがよくわかる ©牧哲雄

南側のエントランスである昭亭門から見た天壇。建物が一直線に並んでいるのがよくわかる ©牧哲雄

天壇は不思議な空気を持っている。

広大な敷地は公園そのものだが、壁を抜けていくとそこにはただただ円形の3層の壇があり、壇の上は石板が同心円状に敷き詰められている。なんの知識もなくたって、これが宇宙や神様と交信を持とうとして造られた祭壇なのだと直感する。とても不思議な感覚だ。

瓦に刻まれた皇帝のシンボル、5つの爪を持つ龍 牧哲雄

瓦に刻まれた皇帝のシンボル、5つの爪を持つ龍 ©牧哲雄

通路を北に歩いていくと、今度は同じような壇の上に円形の建物が建っている。広大な敷地にポツリと(周囲にいくつか付属の建物はあるものの、やはりポツリと)そびえている。やはり何か違和感がある。

昔から人間は不思議な形をした石や木に神を見たり、不思議な景観が広がる場所を聖地に指定したり、ストーンヘンジのような非現実的な形をした建物を造って、この不思議な感覚を大切にしてきた。

古今東西、あらゆる人間が共通して持つこの感覚。天壇も確実にこの空気をまとっているし、明らかにこれを意識して造られている。感覚の不思議。不思議な感覚。パワースポット=天壇にはそんな不思議が詰め込まれている。

 

天帝と皇帝が交信する北京の9壇 

かつては皇帝しか立つことを許されなかった圜丘壇の天心石。幸福を呼ぶパワースポットとして中国人観光客に人気が高い ©牧哲雄

かつては皇帝しか立つことを許されなかった圜丘壇の天心石。幸福を呼ぶパワースポットとして中国人観光客に人気が高い ©牧哲雄

北京には9つの壇があったという。祈穀壇、天壇、地壇、日壇、月壇、先農壇、先蚕壇、社稷壇、太歳壇だ。

龍が天にうねり昇るような樹皮から、九龍柏と呼ばれる樹齢800年超の老木 ©牧哲雄

龍が天にうねり昇るような樹皮から、九龍柏と呼ばれる樹齢800年超の老木 ©牧哲雄

特に有名なのが日月天地の4つの壇。紫禁城(故宮)を中心に東西南北に日壇、月壇、天壇、地壇が配されており、皇帝は春分の日には日壇、夏至の日には地壇、春分の日には月壇、冬至の日には天壇に出かけて祈りを捧げた(1530年の四郊分祀制度制定以降)。

中国では古くから、天を治める天帝に対し、天帝の子たる天子=皇帝が地を治めるという思想があった。天帝の住居は不動の北極星=紫微垣(しびえん)にあり、紫微宮と呼ばれたのに対し、紫禁城こそが皇帝の住居と考えられた。

天子が天帝の命令、すなわち天命を授かるために天帝と交信を行う場所が「壇」だ。皇帝は季節が変わるたびに様々な儀式を行い、天命を受けたのである。