ミズナラ新樽12年超の長熟モルト原酒をブレンド
山崎LIMITED EDITION2021
とくに父の日や中元シーズンに向けてのギフト市場で注目を浴びることになるだろうが、香味としてはとても好感がもてる。長年にわたり「山崎」を愛飲してこられたウイスキーファンの方たちも満足される重層感のある味わいといえよう。
構成原酒としてキーモルトの役割を担っているのがミズナラ樽熟成モルト原酒。それも新樽で12年以上熟成させたモルトをブレンドしている。
昨年『いま、バーでおすすめシングルモルトウイスキー・後編』で紹介したミズナラ樽熟成モルトのみで仕上げた「山崎ミズナラ2020 EDITION」とは、まったく異なるものである。今回の2021は、山崎蒸溜所の個性にあふれた多彩なモルト原酒に、ミズナラ新樽熟成モルトが新鮮な煌めきをもたらしている。
サントリーのブレンデッドウイスキー「響」やシングルモルト「山崎」にはミズナラ樽熟成モルトがブレンドされていることはご存知であろう。正直にいえば、ちょっと危惧するところがあった。
新樽で12年以上の熟成は木香が強く出過ぎていて、扱いが厄介なのではなかろうか。他の香味特性を抱いたモルトとブレンドされることで強い香りは押さえ込むことはできたとしても、後味に嫌な苦味とか表出しないのだろうか。通常、長期熟成させるモルトは、一度あるいは二度ほど熟成に使用した樽を使う。つまり、新樽12年は“クセが強い”のではなかろうか、との想いがあった。
なめらかなクリーミーな甘み、ふくらみのある果実味
ところがテイスティングしてみると、とても綺麗で滑らかなのである。香りにはパイナップルのような柔らかいふくらみのある果実味、甘さがある。それとともに口に含んだときのクリーミーさを予感させる。口にするとクリーミーさ、ハチミツ様の甘さが印象的で、おそらくこのクリーミーさは、ミズナラ新樽熟成モルトがもたらすものであろう。そしてフルーティーさもあれば、ほどよいベリー系の酸味もある。
後味も悪くない。伸びやかな甘み、そしてスパイシーさがほんのりと登場したなかに、密やかにスモーキーさが感じられる。これはミズナラ新樽熟成モルトがもたらすニュアンスなのであろう。
なかなかに味わい深く、華やかで芳醇な気品のある「山崎」ならではの逸品といえよう。
700ml・43%・¥8,000(税別希望小売価格)
Tasting Notes
色 琥珀色
香り パイナップル、オレンジ、ナツメグ
味わい ハチミツ、ココナッツクリーム、ブルーベリー
余韻 バニラ、ジンジャー、かすかなスモーキー
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