50年前、はじめて一般見学者を受け入れた蒸溜所
グレンフィディック15年
いまでこそ多くの蒸溜所が一般見学者を受け入れ、主要な製造現場の見学コースを設けて、ウイスキーにより親近感、愛着を抱いてもらえるよう努めているが、かつてはそうではなかった。
スコッチの蒸溜所で最初に門戸を開いたのは、長年にわたりシングルモルト販売量世界No.1を誇りつづけている「グレンフィディック」(詳しくは『グレンフィディック蒸溜所とグラント家の先駆』参照)を生むウィリアム・グラント社のグレンフィディック蒸溜所である。
それはちょうど50年前のこと。グレンフィディック蒸溜所が1969年に一般見学者の受け入れをはじめたことがきっかけとなった。
第2次世界大戦後、ブレンデッドウイスキーがより興隆していくなか、1963年、ウィリアム・グラント社はシングルモルトウイスキー「グレンフィディック」で海外市場を開拓するという挑戦的な事業転換をおこなう。
おそらく、シングルモルトへ多くの人々の目を向けさせるには広告戦略だけでなく、その蒸溜所を認知してもらうことも重要と考えたのであろう。
6年後に蒸溜所内にゲストルームを設け、一般見学者にグレンフィディック蒸溜所の歩みや製造工程を伝えるようにしたのだった。蒸溜所が外来者を招き入れることなどなかった保守的な時代に、まさに先見の明、進取の気性である。
いまでは製造現場の見学のほか立派なビジターセンターがあり、シアターでの6ヵ国語の解説、レストラン、ギフトショップなど充実した設備を整えている。スタッフのホスピタリティーも素晴らしく、評価はとても高い。このビジターセンターが他の多くの蒸溜所を刺激し、現在に通じる見学者受け入れの手本となったといえるだろう。
シェリーのソレラシステムをウイスキーに応用
フィディックのソレラヴァット
そして飲み比べていただきたいのが「グレンフィディック15年ソレラリザーブ」(700ml・40%・¥6,000)。こちらは12年の熟成感とはまったく異なるだけでなく、ウィリアム・グラント社の進取の気性を伝えるものでもある。
12年のフルーティーな熟成香は洋梨やレモンを想わせる。15年にもフルーティーさはあるが甘くハチミツのような感覚が漂う。味わいもバニラ、シナモンの甘みが感じられる。
どちらも酒質は高く、麗しい個性を抱いている。そのときの気分で、また最初に12年、次に15年というふうに飲みすすめてもいいだろう。わたしは口中が滑らかなしなやかなコクを求めているときは、15年を選ぶ。
15年の深い豊かさは熟成、後熟にある。独自の香味開発を目指して辿り着いたのがシェリー(フィノタイプ)のソレラシステムだった。このシステムからヒントを得て、15年熟成に応用した。
その方法とは、プレーンなホワイトオーク樽、バーボン樽、シェリー樽の3タイプそれぞれの樽で15年熟成したモルトウイスキーを、ソレラヴァット(オークの大桶)に詰め替えてヴァッティング(ブレンディング)するというもの。3タイプを熟れ(なれ)させるため約6ヵ月間後熟をおこなうのである。瓶詰めして製品化する際にはこのソレラヴァットから5分の1ほど抜き取る。抜き取った分をまた補充する。これをずっと繰り返していく。
他にはないこの後熟システムが「グレンフィディック15年」の香味の滑らかさと品質の安定性をもたらしている。
グラスに注ぐと、ゆったりとした時の積み重ねが生んだ豊潤さが伝わってくる。口中での滑らかな華やぎと甘い余韻が安らぎをもたらす。
Glenfiddich 15 Years
グレンフィディック15年ソレラリザーブ
色/金色
香り/甘くフルーティー・はちみつ・レーズン
味/絹のように滑らか・バニラ・シナモン・ほのかにスパイシー
フィニッシュ/長く甘い豊かな余韻
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