総務とは? 庶務や事務とどう違うのか
総務の仕事とは?
「誰でもできる、ルーチン業務が中心」
「言われた事を粛々とこなし、やって当たり前、少しでもミスすると怒られる部署」
「他の部門からは、何をしている部署か良くわかられていない」
総務のイメージ、だいたいこんな感じでしょうか?
私が編集する専門誌『月刊総務』では、多くの総務の方を取材してきましたが、異動で総務に来た方は、往々にして「なんで、私が総務なの?」という感想を持つようです。異動前には、先に記したようなイメージを持っているので、まさか私が総務とは……、そのように感じてしまうのでしょう。「会社に貢献する部署」だとは、正直、あまり思えていないようです。
こう言うと、暗く、将来性のない部門として捉えてしまいそうですが、はたしてそうでしょうか? 改めて総務部の立ち位置を見てみると、そこには大きな可能性を感じることができるはずです。
そもそも総務とはどのような役割を担っているのか、総務の位置づけから総務のあり方まで、詳しく見ていくことにしましょう。
一般的な総務部の仕事内容とは?
みなさんの会社の総務部には、どのような業務があるでしょうか?下記は私が所属していた従業員1000人規模、売上200億円の小売業の総務部の管轄業務です。その当時、その会社には人事部、経理部、財務部、経営企画室、情報システム室があり、それらの部署が担当している業務以外の範囲が総務部の管轄となっていました。
具体的には次の表にある業務が総務部の業務となっていました。
- 経営関係業務(関連記事もあわせてどうぞ)
- 法務関係業務
- 管理統制業務
- 資産管理業務
- 庶務業務
- 福利厚生業務
ご覧のようにとにかく広範囲で、専門性が必要となる業務もあります。
他部門から総務に異動してきた人は、はた目から見る総務より、はるかにその業務範囲の広さと奥深さを実感する、と言います。分からないだけであって、総務を良く理解すると、ものすごく大事な仕事を担っていると理解できるようです。ということは、総務としてもっと自らの仕事のアピールをするべきなのかもしれません。
私が所属していた会社では、部長・課長・係長とメンバー3人、計6人で対応していました。他部門から見れば、これだけ広範囲に渡る業務をしていれば、一体何屋か分からないのも無理からぬことでしょう。
この「何でも屋」としての総務、一般的にはどのような位置づけとして考えられているのでしょうか。一般的には、次の4つの位置づけとして考えられることが多いようです。
組織内における総務の4つの位置づけ
- 1. 社内のサービス・スタッフ機能
- 2. 経営層の参謀役
- 3. 全社コミュニケーションのパイプ機能
- 4. 全社的活動の推進役
総務には、大きく分けるとこのような4つの位置づけがあるのです。このように整理することで、以下のことが導きだせます。
- 1. 総務の業務は現場の業務の円滑化のためにある
- 2. 経営層にも情報提供することで役に立てる
- 3. 組織に欠かせないコミュニケーションを活性化することが任務の一つ
- 4. 全社を巻き込むイベントの企画が可能
なにやら、組織内において重要な位置づけ、役割を担っているように見えませんでしょうか? なのに、社内では評価されない。一体その原因は何にあるのでしょうか?
何でも屋の総務。その原因は生い立ちにあった!
総務が「何でも屋」になりがちな背景には、総務の成り立ちが大きく影響しています。出来立てほやほやの会社では人数も少なく、いわゆる管理系の仕事は社長が一人で対応しているケースが多いものです。しかし社長としては、営業や開発に専念したく、売上を生まない管理業務は、早く手放したいと思っています。そこで既存社員か新たに採用した人に、財務系以外の仕事をまるっと委嘱します。事務担当の誕生です。まだ単独の部署は存在しないかもしれません。
しばらくはそれで回っていきますが、人数が増えるにつれ、経理処理が複雑になり、それに伴い経理の専門知識が必要とされてきます。事務担当が管理部となり、人数も経理が主担当の社員とそれ以外の担当者の2人になっているでしょう。
次に、必要となってくるのが労務管理担当者。管理部門内では、経理、人事労務、その他の三つに役割に分化していきます。管理部門はこのように、従業員数が増えることにより、業務も増え、かつ専門性が求められることにより、役割が分化していきます。
経理から始まり、人事労務・財務・採用教育。数百人規模になると経営企画、情報システム、広報。このように専門部署として、管理部門の中における担当者が部署として独立していきます。その都度、分化した残りの業務が総務部門に残っていきます。つまり、専門部門が独立し、それ以外が総務部門に残る、という流れで会社が成長していくのです。
専門性が高まるとは、どういうことでしょうか?
特定の分野に精通することが専門家の定義ですから、当然、そこには専門分野として囲われた線を引くことになります。ここまでは私の専門、それ以外は担当外、ということです。専門家は得てして、専門以外は全く意識しませんし、対応もしてくれないものです。そこで、専門性の低い、誰でもできる仕事が総務に集約されてしまうのです(注:総務の仕事を卑下しているのではありません!)。
社内での位置づけが上がりにくい理由
「俺たちは売上を上げているんだ!」これ営業が良く言う言葉ですよね? 「管理部門は外で汗かいていないだろ、細かいことをごちゃごちゃ言うな、大目に見ろ。俺たちの方が偉いんだ!」みたいなニュアンスでしょうか。得てして、営業や開発といった売上に直結する部門の方が、社内での声は大きいものです。その声に押されて、管理部門では、本来は現場でやる仕事も引き受けてしまったり、無理難題を言われることが多いかと思います。
その管理部門の中でも、経理や人事などは専門性が高いが故にどうしても総務を下に見がち。つまり、全社において、総務が社内の空気として、一番下に見られてしまう実態があります。結果、営業から周ってくる雑務は、経理や人事等をスルーして総務に回ってくる、このような現実となっているのです。
専門性の低い雑務をするのだから、当然だれてもできるはず。
→「普通に出来て当たり前、少しでもミスすると怒られる」
雑務を引き受ける部署だから、本業と関係ない仕事は総務が引き受けるべき。
→「社員の依頼に振り回され、本来やるべきことに手が回らない」
その雑務が中心の部門。
→「だれでもできる仕事と思われ、社内の評価が低い」
でも、本当に、総務がそんな低い評価でいいのでしょうか?
総務の社内での地位が低いのは、総務自身にも問題があります。本来やるべきことを明確にせずに、明確にしたとしても、それを社内で明示できていない。本来やるべき重要なことより、社員からの、重要でもなく緊急事態でもない依頼事項を優先してしまう。その結果、「雑務が中心の総務」に甘んじているのではないでしょうか。
一方で、『月刊総務』の取材の現場では、このような声も聞くことが増えています。
「総務が変われば、会社が変わる」
「ヒト、モノ、カネ、情報。総務は第四の経営基盤である、モノを司る重要な部門である」
「総務部に社内のエースを異動させ、会社を中から変革させる」
「戦略総務」「経営総務」「総務のプロ」。ググってみると、多くの人が発言し始めています。
総務とは本来どうあるべきなのか、庶務業務と事務とはどのように違うのか。今後もみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
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