そもそもIoTとオフィスとの関係とは?

オフィスワークの様子

IoTがオフィスワークを変える

「オフィスワークのIT化」と聞いて、今では多くの人がイメージがつくことでしょう。では、もう一歩進んで、最近耳にすることの多い「IoT(Internet of Things=モノのインターネット化)とオフィスワークがどのように結び付くのか、想像できるでしょうか? そもそもIoTとは、あらゆるモノがネットにつながる世界。モノづくり工場の話やスマート家電をイメージすることでしょう。

オフィスワークの世界でのIoTでは、その目的は「働く環境の快適化」「仕事の効率化」になります。オフィスワークでにおける「Things=モノ」とはオフィス什器や備品、オフィス内の環境、そして一番大きなものは「働く人」そのものです。

それらの状況、状態のデータを把握しクラウドに上げて、パソコン等のデバイスで把握することがオフィスIoTの第一歩です。

そして、把握したデータを読み解き、その会社として実現したい社員の働き方、働く場の環境づくりの施策に活用します。そのような仕事の多くは総務担当者が行うことになるでしょうが、オフィスIoTとは、その総務が行った仕掛けの検証ができるツールであり、次の一手を考えるのに使える、大きな武器となるのです。

ここまで進んだ!オフィスのIoT最新事例

次に、そのようなオフィスIoTが実際どのように活用され、効果を上げているのか。私が編集長をしている『月刊総務』9月号の第2特集、「進化する『オフィスIoT』最新事情」からいくつか事例を紹介しましょう。

人と共有備品をモニターで管理

最初は、そのものずばりIoTをビジネスとしている、株式会社ウフルIoTイノベーションセンターの取り組みです。ウフルでは、自社でオフィスIoTの実証実験をしています。

ウフルの取り組みの一つ目は、「共有備品の管理方法を改善した事例」です。社員にビーコン(発信機)を搭載したタグを社員証ケースに入れてもらい、貸出備品にも同様のタグを付け、オフィスにはビーコンの情報を収集する受信機を設置します。

人や備品の名前を入力すれば、どこで誰がどの備品を使用しているかがモニターで確認できます。これにより、共用備品の行方不明という状況が改善されました。また、リアルタイムで探したい人の位置が把握できるので電話の取り次ぎなどもスムーズになりました。
オフィスで活用している様子

社員が持っているビーコンにより、誰がどこにいるかがすぐ分かる。備品にもビーコンを付けることで、存在場所もすぐに判明。

会議室の使用状況を可視化

ウフルの取り組みの二つ目は、会議室の使用管理を改善した事例です。会議室の予約システムはあるものの、「予約してあるが実際は使われていない」「結果、使いたい人が使えない」という状況はどの会社でも多くあるケースですね。ウフルでは、会議室に照度センサーを設置し、明るさを検知することで在室の確認を行っています。「予約あり」で会議室に電気がついていれば実際に使用中、予約が入っているが電気がついていなければ使用していないというように実態が分かるようにしました。結果、会議室の有効利用が図られています。
会議室予約実例ボード。

照度センサーと連動した、会議室予約状況ボードの実例。


ジンズは心身状態をモニターできるメガネ

続いては、集中力が計測できるメガネ、株式会社ジンズの「JINS MEME」
JINS MEME

集中度を計測する「JINS MEME」

まばたきと目の動き、姿勢などのデータから、集中度や運転中の眠気など、メンタル面と身体面の状態を示す、センシング・アイウエア。集中力を見える化し、一日のうちどの時間帯、週の何曜日に集中力が高まるかを計測できるものです。ちなみにこの製品は、経産省主催の、働き方改革を実現するためのHR Solutionのサービスを103社集めたコンテストで、グランプリを取ったすぐれものです。
集中度の計測グラフ

いつ、どこで、どのくらい集中していたかといった分析結果は、スマホのアプリで確認できる。一般的に、オフィスより公園の方が集中度は高いという。


ストレスが計測できる椅子

最後は、ストレスが計測できる椅子。THK株式会社の「センシングチェア」センシングチェア
座った人の呼吸数や心拍数データから、ストレスレベルを見える化。また、ストレス値以外にも、気温や湿度といった周辺空間の情報収集も計測できるものです。
センシングチェア

椅子のシート部分に体動センサーや環境計測センサーを内蔵する


オフィスIoTの課題は社員の抵抗感

先の事例を通じて分かることは、社員の位置情報、集中力やストレスが見える化され、また、社員が働く場の環境も見える化できることです。

ここでまず課題となるのは、データを提供する社員の協力です。社員に計測器を身に付けてもらわないことにはデータが収集できません。計測器を付けることで、社員個々の状態が全て見える化されることになります。抵抗感を持つ社員もいることでしょう。

アンケートもそうですが、答える方、データを提供する側としては常に、
「データを取ってどうなるの?」
「そのデータで何がしたいの?」
「私たちに何のメリットがあるの?」
という気持ちを持つものです。

ですから、IoTを導入して、とりあえず、取れるデータを収集しよう、という進め方は避けたいところ。やみくもにデータを取っても意味がありません。データの使い方の軸を定めるべきです。先にも記しましたが、使い方として考えられるのは、検証ツールとしての使い方です。

総務が中心となって仕掛けたオフィスのレイアウトの効果検証のためにデータを収集する。その効果のほどを見定めて、改善改良を施す。仮説を立て、実験の場としてレイアウトの仕掛けを施し、効果があれば全社導入に踏み切る。経営への説得材料として活用する。そんな使い方です。

その先にイメージする、「自社の理想の働き方の実現という軸に向かって使う」という方法です。これであれば、その実現のためにデータを収集するということで社員の協力も得られることでしょう。使い方を限定する、社員のベネフィットのための限られた項目のデータを収集する、というものです。

IoT・AI時代にこそ「自社の働き方の理想」を定める必要

そうなると、自社としての理想の働き方と、その働き方の実現により達成したい目的を定める必要があります。いま進んでいる「働き方改革」もあくまでも手段であり、目的ではありません。働き方改革がなされれば終わり、というものではありません。

会社は継続しなければなりません。その継続が前提となり、会社の業績拡大がなされます。このための働き方改革であり、働き方改革を実現するためのIoTなのです。IoTありきでも、データありきでもありません。日本人はどうしても手段と目的を混同してしまいがちです。

いまの流行に流されることなく、自社としての軸を定める必要があります。その実現のために、今後進展するツールを使いこなすことが大切になるでしょう。おそらくオフィスIoTで多くのさまざまなデータが収集できるようになり、それを使ってのAIもオフィスの中に入ってくることでしょう。

このように技術の進化にともない、いろいろなツールがオフィスワークの中で使える時代となってきました。そのツールを使う際はその言葉に踊らされることなく本質的な課題と自身の軸を定め、その実現のための強力な武器としてIoT・AIを活用していくことが重要です。

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