「65歳定年制」へ続々と移行する企業

65歳定年が主流になりつつある

65歳定年が主流になりつつある

ロイター企業調査によると、今後定年を65歳以上に引き上げる可能性がある企業が52%と過半数を占めています。

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高齢者雇用安定法)の改正に伴い、以下のような企業もその対応を開始しています。

■株式会社すかいらーく
社員が安心して働ける制度のひとつとして、65歳までの定年制度を導入。

■大和ハウス工業株式会社

65歳定年制度、65歳以降も勤務可能な「アクティブ・エイジング制度」を導入。

■サントリーホールディングス株式会社

2001年より定年退職者再雇用制度を導入し、2006年からは雇用期間を段階的に最長5年まで延長。

■太陽生命保険株式会社

2017年4月から65歳定年制度と最長70歳まで働ける継続雇用制度を導入。

嘱託・短時間勤務であっても健康診断を受けさせる

法改正に伴い、多くの企業で65歳定年制となっていますが、それと同時に高齢労働者の労災リスクも高まることが予想されます。

従業員が倒れて長期間働けなくなった場合、あるいは死亡してしまった場合に起こり得るリスクは、業務が滞り代替要員の確保が必要になる、といったものだけではありません。

使用者には、労働者の安全と健康を確保する安全配慮義務があります。この義務を怠り、労働者の健康に被害が生じた場合、使用者に多額の損害賠償を命じる判例は多く存在します。

安全配慮の一つとなるのが健康診断です。

労働安全衛生法
によって事業主に定期健康診断の実施が義務付けられていますが、嘱託など一定の短時間勤務者は健診の義務対象から除外されています。しかし、高齢の従業員にはなるべく健康診断を受けさせましょう。

高齢の場合、持病や身体機能の衰えがあることも多く、それらをいち早く把握し、体調を考慮した作業や勤務時間にすることがリスク管理として大切になります。

高齢者の身体機能に配慮した安全対策をとる

高齢者の身体機能に配慮した対策が必要

高齢者の身体機能に配慮した対策が必要

加齢に従って、身体機能、特に平衡感覚、病気への抵抗力、記憶力、運動機能の一部などが低下し、個人差も大きくなります。

ここでは、若い従業員には聞こえていた注意事項が、同じ場所にいた高齢者には聞こえていなかった、ということも起こり得ます。すべての労働者を対象とした機械設備の安全化、管理の充実などに努めた上で、高年齢者の身体特性に配慮した安全策を講じる必要があります。

転落・転倒の防止
加齢に伴い、平衡機能が低下し、体のバランスがとれずに「墜落、転落」する危険性が増大します。死亡災害など重篤な災害ともなるため、対策には細心の配慮が必要です。転倒災害は、高年齢者の労働災害の特徴の一つであり、骨折等の重篤な災害につながりやすく、さらに、同じ骨折でも若年層に比べ、休業日数が長期化する傾向があります。

■荷の運搬による腰痛・ケガ防止
荷物の取り扱い、運搬作業を人力に頼っている場合は、高齢者にとって重過ぎてよろめいたり、握力不足によって荷が落下したり、運搬距離が長いこと等により腰痛や疲労の原因が生ずることがあります。

作業点が作業者の身長と一致していないため、中腰状態で上体を前屈する姿勢や上向き、ねじり姿勢等の不自然な姿勢での作業は、筋疲労を招き、災害性腰痛等の労災発生の原因となります。

加齢とともに視力や聴力等の感覚機能や瞬間判断機能、反射的対応能力等が低下するとされ、これが労災に結びつく原因になり得ます。

救急時の連絡体制・対応を整える

以下は社員が倒れた場合に必要になる会社側のやるべきことです。いずれも高齢者に限ったことではありませんが、対策が取られていないところはしっかりと準備しておきましょう。

■緊急連絡先の収集・アップデートをする
万一に備え、家族などの緊急連絡先を確認しておくことも大切です。個人情報保護法に基づき、社員本人に利用目的をあらかじめ明示した上で、適切に収集・管理します。こうした情報は入社時に収集することが多いでしょうが、情報が古くならないように毎年確認します。

■救急時の初動を確認する
まずは治療を最優先で動きます。救急車を呼び、到着を待つ間に出来る限りの応急処置を行います。一方、倒れた従業員の上司や総務担当者に連絡を入れ、総務担当者は従業員の家族に連絡をします。

次に事実関係の把握を行います。事故であれば、いつどこでどのよにして起きたか、事故を見ていた人の氏名など、できるだけ詳しく把握し、記録します。これらの情報は労災申請の書類を書く際にも必要になります。

事故ではなく、具合が悪くなって倒れた場合は、持病の発作などで私傷病になると考えがちです。しかし、長時間労働や暑い屋外での作業による熱中症の疑いがあれば、労災の可能性も出てきます。持病がなかったか、最近の体調はどうだったかなど、家族の協力も仰ぎながら原因究明と対策を講じることが大切です。

■家族への対応を整理する
家族への対応は会社への不信感を抱かせないためにも大切です。健康保険や労災保険などの公的給付がどのタイミングでどれくらい支給されるのか、会社規定による見舞金なども案内しておくと家族の不安を和らげることができるでしょう。

入院や療養が長引く場合は担当者を決め、定期的に本人や家族と連絡を取り合える体制をつくっておくと良いでしょう。

■救急講習を受ける
消防署では心肺蘇生やAED(自動体外式除細動器)の使い方など救命講習を行っています。総務担当者を中心に、できれば全社員がこうした講習を利用し、いざというときに素早く対応できるように備えましょう。


参考:ロイター企業調査

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