ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2015年1~2月の注目!ミュージカル

謹賀新年、皆さん初芝居は楽しまれましたか?さて、この冬は(様々な意味で)いい男が活躍するミュージカルが続々登場!『氷刀火伝 カムイレラ2』『メンフィス』『ラ・カージュ・オ・フォール』『Golden Songs』『モンティ・パイソンのSPAMALOT』『メリー・ウィドウ』『クリエ・ミュージカル・コレクション2』等をご紹介します。観劇レポートは随時掲載。また今回は松島まり乃的「2014年ミュージカル大賞」も!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

あけましておめでとうございます。皆さん、初芝居には何をご覧になりましたか? さて、この冬の魅力的な演目の数々を…とゆく前に、今回は筆者が選ぶ「2014年ミュージカル・アワード」をご紹介。ご自身の心に残る作品、キャストと照らし合わせながら、14年のミュージカルを振り返ってみてください!

*松島まり乃が選ぶ!「2014年ミュージカル・アワード」*

作品賞=『イン・ザ・ハイツ』 演出家賞=TETSUHARU(『イン・ザ・ハイツ』) 主演男優賞=micro(『イン・ザ・ハイツ』) 主演女優賞=安蘭けい(『レディー・デイ』)、土居裕子(『マザー・テレサ 愛のうた』) 助演男優賞=石丸幹二(『レディ・ベス』) 助演女優賞=前田美波里(『イン・ザ・ハイツ』)、鳳蘭(『シスター・アクト 天使にラブソングを』、『ラブ・ネバー・ダイ』)島田歌穂(『三文オペラ』) 新星賞=ラフルアー宮澤エマ(『シスター・アクト 天使にラブソングを』、『bare』)、井上佳奈(『コンタクト』) ベスト・アンサンブル賞=『コンタクト』 ベスト・カップル賞=平方元基&フランク莉奈(『ビューティフル・ゲーム』) 来日作品賞=『女神様が見ている

*1月開幕の注目!ミュージカル*

『氷刀火伝 カムイレラ2』1月28日~2月1日=IMAホール←観劇レポートUP!
『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』1月28日~2月1日=草月ホール
『TRAILS』1月28日~2月1日=シアター・グリーンBIG TREE THEATER←観劇レポートUP!
『メンフィス』1月30日~2月10日=赤坂ACTシアター←観劇レポートUP!

*1月公開の注目!ミュージカル映画

『ANNIE/アニー』1月24日公開

*2月開幕の注目!ミュージカル*

『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』2月6~28日=日生劇場←観劇レポートUP!
『Golden Songs』2月13日~23日=東京国際フォーラムホールC 2月26日~3月1日=梅田芸術劇場メインホール←観劇レポートUP!
『モンティ・パイソンのSPAMALOT』2月16日~3月1日=赤坂ACTシアター 3月6~8日=森ノ宮ピロティホール 3月14~15日=福岡市民会館大ホール←稽古場レポート&初日観劇レポートUP!
『僕らのイケメン青果店 チョンガンネ』2月16~22日=サンシャイン劇場←記者会見、観劇レポートUP!
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』2月20日~3月11日=シアタークリエ、3月13~15日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、3月21~22日=中日劇場、3月24日=福岡サンパレスホテル&ホール←観劇レポートUP!

*2月上映の注目!映画*

METライブ・ビューイング『メリー・ウィドウ』2月21日~27日=東劇ほか


*AllAbout ミュージカルで特集(予定)のミュージカル*

『ボンベイ・ドリームス』1月31日開幕 「気になる新星」にて出演・すみれさんをインタビューしました!
『ユイット SHOW-ism8』2月1日開幕 「Creators」にて演出・小林香さんをインタビューしました!
『クレイジー・フォー・ユー』2月22日開幕 「Star Talk」にて出演予定・松島勇気さんをインタビューしました!
『タイタニック』3月14日開幕 「気になる新星」にて出演・加藤和樹さんをインタビューしました!

【今月の一本 Pick of the Month FEBRUARY】

モンティ・パイソンのSPAMALOT

2月16日~3月1日=赤坂ACTシアター 3月6~8日=森ノ宮ピロティホール 3月14~15日=福岡市民会館大ホール

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

【見どころ】
12年に日本初演、ミュージカルの常識を軽々と超えた弾けっぷりで話題を呼んだ本作が、待望の再演。英国のコメディ・グループ、モンティ・パイソンのヒット映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(75)を、グループのメンバー、エリック・アイドルが自ら舞台化し、意外にも(?)05年のトニー賞最優秀作品賞に選ばれている「おバカ楽しいミュージカル」ですが、日本版はモンティ・パイソンの熱狂的ファンを自認する福田雄一さんが台本・演出を担当。日本版ならではの笑いも盛り込んだ大胆な演出で、ふだんミュージカルを観ない層にも大いにアピール。この成功が、以降『フル・モンティ』『タイトル・オブ・ショウ』での、ミュージカルという形式そのものすら笑いのネタにしてしまう“福田ミュージカル・スタイル”の基盤になっていると言えます。

物語のベースは中世の英国文学『アーサー王伝説』。長大な物語群から、アーサー王と円卓の騎士たちが聖杯を求めて旅に出るエピソードを抽出、いくつもの困難に見舞われながらアーサー王たちが探求を続ける様を描きます。アーサー王役にユースケ・サンタマリアさん、ランスロット卿役に池田成志さんら初演からの続投組に加え、今回は湖の貴婦人役で平野綾さん、ガラハッド卿役で松下優也さんといった新キャストも加わり、破天荒な舞台にも拍車がかかる?! 近日、稽古場レポートも追加掲載の予定ですので、お楽しみに!

『モンティ・パイソンのスパマロット』稽古風景より

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』稽古風景より

【稽古場レポート】
この日は初めての通し稽古。アンサンブルがぎりぎりまでダンス・ナンバーの細かいステップを確認していると、演出助手さんの「一幕行きまーす!」の声が響き、稽古ピアノによるオーバーチュアがスタート。軽快で親しみやすいメロディが、原作は中世英文学とはいえ本作が心構えを要する作品では「全くない」ことを物語り、リラックスして座っていると舞台下手にナレーター役の歴史学者(ムロツヨシさん)が現れます。

本作に登場する人物たちの背景を「ざっくり」「適当に」語る歴史学者。「役」のようでもありムロさん自身のようでもある、作品世界から半歩はみ出たようなその語り口は、お馴染みの?福田ワールド“です。何か面白いことをやってくれそう…と期待していると、さっそく次のシーンで応える! とある牧歌的な情景が歌、踊り入りで表現されるのですが、それがまさかまさかの「シーンまるごとボケ」なのです。歴史学者が呆れながらも突っ込みを入れ、俳優たちは口々に文句を言いながら舞台袖へ。しかし楽曲から衣裳、小道具、俳優たちのダンス、歌にいたるまで、場面はきっちりと作りこまれていて、本作の“おバカ表現”に対する本気度がうかがえます。

満を持してユースケ・サンタマリアさん演じるアーサー王と従者のパッツィが登場し、彼らと仲間たちの冒険の旅が始まります…が、台本には出てこない、あるいは台本とは異なる小ネタが出てくる、出てくる。スタッフにうかがったところでは、稽古では毎日キャストが違うアドリブを入れ、それを受けて福田さんが交通整理をしているのだそうです。福田さんによる台本自体、かなり笑えるのに、それに加えて時事ネタ、ちょっと昔のCMソングなどをランスロット卿役・池田成志さんをはじめとするキャストがこまめに入れてくるので、観ているほうは顔が緩みっぱなし。と思ったらひときわ笑っていらっしゃるのが演出家席の福田さん。時には「そこでそれ言うか?」とばかりに手を叩いて笑っています。

『モンティ・パイソンのスパマロット』稽古風景より

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』稽古風景より

アーサー王役のユースケさんはテレビドラマでの発声とは全く異なる、低く雄々しい声が新鮮。次々放たれるアドリブに絶妙の返しをしながら、すっと芝居の台詞に戻っているパッツィ役・マギーさん、べデヴィア卿役・皆川猿時さんら、百戦錬磨のベテラン俳優たちもさすがです。

湖の貴婦人役・平野綾さん、ロビン卿役・貴水博之さん、ガラハッド卿役の松下優也さんも、初登場ながら早くも「福田ワールド」にどっぷりはまり、某・有名ミュージカルのパロディをねっとりと歌い上げたり、某・国民的アイドルのネタをひょうひょうと繰り出したり。1幕だけでも全幕を観たかのような満腹感を覚えてしまいましたが、ふと演出家席を見やれば、今しがたまで大笑いしていた福田さんは一転して静かに机に向かい、何事かを検討中。この後徐々に、てんこ盛り状態の小ネタを整理して主筋を浮き上がらせるとともに、この混迷の時代だからこその楽観的なテーマを際立たせてゆくのでしょう。この後の稽古でどんな変化が生じ、本番はどう変わっているのか。仕上がりがますます楽しみになりながら、稽古場を後にしました。
『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

【初日観劇レポート】
稽古段階では“大いなる戯れ”と映った今回の『モンティ・パイソンのSPAMALOT』ですが、実際に劇場の大掛かりなセットの中で演じられると、その“壮大なおバカ”ぶりたるや、圧倒的。誰もが知っている時事ネタからTVドラマをヒットさせる二つの要素研究まで、福田雄一さんの脚本・演出は“今”の日本の大衆文化を総動員。中世英国文学の物語世界は、有無をも言わせぬ力技で私たちの前に引き寄せられています。日本版上演にあたって「現地事情に合うよう、手を入れてもらって構わない」と原作者のエリック・アイドルは言ったそうですが、この舞台を観たら「日本の“今”が良くわかったよ!」と感嘆するかもしれません。
『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

そんな舞台に欠かせないのが、“真剣な遊び心”満載のキャスト。落ち着いた低音を響かせながらもとぼけた味を醸し出すユースケ・サンタマリアさん、登場する度「台詞調」「アドリブ調」の口調を自在にブレンドして観客を惑わせるムロツヨシさん、“濃ゆい”芝居で各場面をかき混ぜる池田成志さんに、想定外の状況になっても瞬時に面白いアドリブを入れてくるマギーさん、皆川猿時さん。スレンダーな体からは想像もつかないほどの迫力で“テンションの高いヒロイン”を歌う平野綾さん、大阪弁のヤンキー(?)からナルシストの美青年へと楽しげに変身する松下優也さん、そして軽やかなノリと歌唱力でミュージカルとの相性の良さを見せる貴水博之さん。“お遊びだから”と脱力するのではなく、逆に劇場空間を呑み込まんばかりの全力ぶりで、これを千秋楽まで連日展開するとは!と驚かされます。
『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

『モンティ・パイソンのSPAMALOT』

上島雪夫さん振付のゾンビ風ダンスが楽しい「まだ生きてるよ」に、“死ぬときに楽しかったと言いながら死にたいじゃない”と、ゆるっとした生き方を勧める主題歌「人生楽に生きようよ」など、親しみやすく、口ずさみやすいナンバーに彩られつつも、3時間あまりの舞台は怒涛の勢いで迫ってきます。鑑賞前には観る方も、腹ごしらえをして備えて(?)おきましょう!

*次頁で『氷刀火伝 カムイレラ2』以降の作品を紹介しています!

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