音楽の喜び、仲間の絆に胸熱くなる『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』観劇レポート

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

幕開けの舞台はギャングのボス、カーティスの経営するナイトクラブ。中央からするすると幕が開くと、派手派手の(趣味がいいのか悪いのか分からない……)ワンピースに身を包んだ森公美子さんが登場!「私をイかせて」ときわどい歌詞のR&B調ポップスを歌う、セクシー・ダイナマイトの森さんから目が離せません。

クラブでの歌手デビューを夢見るデロリスですが、カーティスの答えは「ダメだ」。おまけに、恋人だと思っていたカーティス(この日は吉原光夫さん。森さんを包み込むような体格と声で「このコンビ、有り!」と思わせます)からのクリスマスプレゼントを開けると、彼の妻の名前入りのコートが。頭にきたデロリスは「もうアイツとは終わり!夢は自分で掴んでやる!」と、打ち合わせに行ったカーティスを探しに行き、彼が裏切り者を“処分”する現場に遭遇。目撃者として追われる身となって警察に飛び込み、幼馴染の警官“汗かきエディ”(石井一孝さん、今回は汗をかきかき奮闘する、うだつのあがらない男を好演)の提案で、デロリスは裁判の証言台に立つまで“絶対に見つからない場所”=修道院に潜伏することとなります。
『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部ラ

訪ねたクイーン・オブ・エンジェルス教会の厳格な修道院長(鳳蘭さん、その風格と、おごそかながら笑いはしっかり取る、絶妙の台詞回しは唯一無二)は奔放なデロリスを一目見て拒絶しますが、経営難の修道院に警察から多額の寄付があるとオハラ神父(村井國夫さん、ノリが良く、思考の柔らかい役どころがぴったり)から説得され、しぶしぶ受け入れることに。その後も「自由」「規律」を体現する二人は何かと対立しますが、修道院長がデロリスに修道院の「言葉にならない」聖歌隊の指揮を命じると、この采配が思わぬ「大当たり」となり、デロリス、修道女たち、そして修道院長自身の人生までもが、大きく変わってゆくことに……。
『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

コメディタッチで進行してきた舞台はこの、聖歌隊レッスンが始まる1幕後半からテーマを鮮明にし、大きくうねり始めます。抑制された世界で慎ましく生きてきた修道女たちの、弱弱しく、音は外れ放題、ハーモニーからはかけ離れた歌が、デロリスの「音楽は喜びよ!声を出して、神様に聞こえるように!」という声掛けで、次第に力強くまとまってゆく。森さん、そして修道女役の方々ひとりひとりが、「音楽の楽しさ」「仲間と心を一つにすること」を再発見し、その喜びをかみしめているかのような光景が観客の心もしっかととらえ、劇場内の温度は一気に上昇してゆきます。

利己的に生きるばかりが人生ではないと知り、人情味を増してゆく森さんのデロリス。頑固者と見えていたが実は弾けた側面もある高齢のシスター・メアリー・ラザールス(春風ひとみさん)、イエスしか言えなかったのが自我に目覚める見習い修道女メアリー・ロバート(ラフルアー宮澤エマさん)など、以降の登場人物たちの変化・成長の過程も面白く、親しみが増してゆきます。冒頭、ナイトクラブでデロリスが歌っていたきわどい歌詞の歌「天国へ行かせて」をそのまま神様へのラブソングとして聖歌隊に歌わせているのも、ご愛嬌。
『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

聖歌隊の見事な歌唱はメディアに取り上げられ、なんと法王さまも来米の折に立ち寄ることになりますが、それが仇となってデロリスの居場所はカーティスらの知るところに。(カーティスの子分3人組を演じる藤岡正明さん、KENTAROさん、上口耕平さんは、お間抜けなだけでなく素敵な歌声も披露します。前方通路際席の女性客、熱視線をいただけるかも?!) デロリス、絶体絶命のピンチ!

ここで、デロリスを助けようととっさに立ち上がるのが、あの人、この人……。その勇気ある姿に対して、狂気じみたリアクションを見せる吉原カーティス。映画版とは一味違う、芝居としての見ごたえあるクライマックスを経て、物語は大団円へと向かってゆきます。

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』写真提供:東宝演劇部

最後には“まさかの”法王さまも登場(?!)し、カーテンコールでは吉原さんが着ている囚人服のナンバーに悪戯が?! アラン・メンケンの、70年代テイスト溢れる耳ざわりの良い音楽に乗せ、遊び心に満ちながらも人間ドラマとしての骨格をしっかりと持った舞台は、幕を閉じます(演出・山田和也さん)。心が躍り、笑顔で劇場を後にすること間違いなしの本作。一人より二人、二人より三人……と、大勢で観るとより楽しめそうな舞台です。

舞台ダイジェスト映像はこちらからご覧になれます。




※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。