平方元基undefined85年福岡生まれ。08年にTVドラマでデビュー後、11年に『ロミオ&ジュリエット』ティボルト役でミュージカル・デビュー。『エリザベート』ルドルフ、『シラノ』クリスチャン、『マイ・フェア・レディ』フレディ、『ロミオ&ジュリエット』ベンヴォーリオ、交響劇『船に乗れ!』伊藤、『ザ・ビューティフル・ゲーム』デル、『レディ・ベス』フェリペと立て続けに大役をつとめ、今後が嘱望されている。(C)Marino Matsushima

平方元基 85年福岡生まれ。08年にTVドラマでデビュー後、11年に『ロミオ&ジュリエット』ティボルト役でミュージカル・デビュー。『エリザベート』ルドルフ、『シラノ』クリスチャン、『マイ・フェア・レディ』フレディ、『ロミオ&ジュリエット』ベンヴォーリオ、交響劇『船に乗れ!』伊藤、『ザ・ビューティフル・ゲーム』デル、『レディ・ベス』フェリペと立て続けに大役をつとめ、今後が嘱望されている。(C)Marino Matsushima

*4ページ目に『アリス・イン・ワンダーランド』観劇レポートを掲載しました!*

「彗星の如く現わる」とは、彼のような人を指すのではないでしょうか。11年に『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役でミュージカル・デビューし、続いて『エリザベート』ルドルフ、『マイ・フェア・レディ』フレディ、『ロミオ&ジュリエット』ベンヴォーリオ、『レディ・ベス』フェリペ等、名だたる大作で若手二枚目の役どころを制覇。今最も期待される新星の一人が、平方元基さんです。その最新作はフランク・ワイルドホーン作曲の『アリス・イン・ワンダーランド』。水先案内人でもある重要なキャラクター、「ウサギ」を演じます。184センチという長身には一見ミスマッチ(?)な、かわいいルックスのウサギ役に、彼はどう取り組んでいるでしょうか。

“初恋の感覚”を呼び覚まして演じる“小動物”

――執筆にも家族関係にも行き詰った女性作家アリスが、「不思議の国」に迷い込んでゆく『アリス・イン・ワンダーランド』。アリスを別世界に誘い、また折々にヒントを囁くウサギはとても重要なお役に見えますが、ご自身はどうとらえていますか?

「立ち稽古が始まって今日で2週間ですが、(初演でこの役を演じた田代)万里生くんのウサギとはちょっと違う、平方元基なりのものを見つけ、それをお客様に提供できたらいいなと思っています。“かわいらしくて繊細で臆病”というのは歌詞の中にも出て来るので変えられない部分ですが、演じる人が変わるれば演出も変わってくる部分があると(演出の鈴木)裕美さんもおっしゃっています。たくさん話し合いをさせていただいているので、どういうふうに出来上がり、舞台に上がるのか、自分でもすごく楽しみです」

――長身の平方さんが演じるということには、どんな意味があるのでしょう?
『アリス・イン・ワンダーランド』ウサギ

『アリス・イン・ワンダーランド』ウサギ

「ウサギ役は衣裳が大きく、僕がまたそれに拍車をかけて大きいので(笑)、目立つという意味ではいいんですが、中身があってこそのキャラクターの立ち位置だったり、どうストーリーを誘導していくかだと思っています。基本的にウサギは自由度が高くて、身長を問わないキャラクターだと思うんですね。裕美さんからは、僕が体が大きいぶん、心を小動物にしたら面白いんじゃない?と言っていただいています。

この“心を小動物に”というのが僕にとっては課題で、縮こまりながら“ああ~ごめんなさい”とか“怖い~”と怯えるような部分が、自分にはあまりないんですよ。男って、可愛らしさや素直に怖がったりすることを隠したがるというか、そんなに表に出さないじゃないですか。でも、そういう瞬間瞬間のピュアな感情をキャッチして、すぐに出すことがこの役では求められます。アリスがこちらに怒りを向けてきたら、僕だったら“え、どうして?”と思わず相手をみてしまうけれど、そうではなくて“はっ”と反射的に距離を置く。それが“ひらめき”を体現するウサギらしいリアクションなんです。

そういう芝居をするために、今イメージしているのが、“少年のような心”です。純粋で純白で、初恋をしているときのような感性で舞台に上がってみよう、と。初恋というとずいぶん前のことなので、(当時の気持ちを)掘り起こす作業がちょっと大変ではあるのですけど(笑)」

――ルイス・キャロルによる原作で書かれているからと言ってしまえばそれまでですが、本作のウサギがいつも「遅れちゃう!」と急いでいるのはなぜなのでしょう?

「本作のウサギは(クリエイティブな仕事をするアリスに必要な)、ひらめきの象徴なのだと思います。ひらめきはウサギの尾っぽのように、捕まえようとしてもすぐ逃げて行ってしまいますよね。他にも、アリスが日常生活の中で編集者に急かされて感じる“焦り”なども投影されているのかもしれません」

――なるほど。だんだんウサギという存在が掴めてきました(笑)。

「僕は“今、こう思っています”ということをお話させていただいていますが、違う解釈ももちろんアリだと思います。僕が今お話ししたようなことを舞台上でやってみて、お客さんが違う風に受け止めたとしても、それはその方の反応であって、それも一つの答えなのかなと思います」
『アリス・イン・ワンダーランド』初演の舞台より。撮影:渡部孝弘

『アリス・イン・ワンダーランド』初演の舞台より。撮影:渡部孝弘

――もう一つ、平方さんはルイス・キャロルという人物も二役で演じます。こちらは打って変わって、人生の酸いも甘いもかみ分けたおじいさん像ですね。

「後半に登場して、アリスに“名前”ではなく“自身の本質”の大切さを気づかせようとする役なんですが、ブロードウェイ版ではアリスの夫役の俳優が、二役で演じているそうです。それをご覧になった(演出の)裕美さんが、この配役だと日本のお客様の目には“夫が真実に気づかせてくれる”“夫のもとに帰ればすべて解決する”と映りかねないと感じ、日本版ではウサギ役の俳優が演じるように変更したそうです。多くは語らないけれど、アリスにとってはお父さんや先生のような存在。小さいころから小説家に憧れてきただろう彼女にとって、心の落ち着く場所の象徴なんだろうなと思っています」

――ネタバレになってしまうのであまり具体的には言えませんが、本作は、実はアリスという人がとても豊かな内面を持っていた人であることが分かる作品ですね。

『アリス・イン・ワンダーランド』初演の舞台より。撮影:渡部孝弘

『アリス・イン・ワンダーランド』初演の舞台より。撮影:渡部孝弘

「そうなんですよね。でも、皆さんそうなんじゃないかな。大人になって社会の不自由さの中で、本来の自分、やりたいこと、なりたい自分が見えなくなっていくかもしれないけれど、本来は誰もが豊かな内面を持っている。決して(本作は)特別な話ではないよね、と共演の方々ともお話しています。特に(仕事も家事もと)忙しい中で頑張っていらっしゃる女性の方には、とても共感できるお話なんじゃないかな。登場人物たちがそれぞれ彼女を助けようとするけれど、結局はアリスが自分自身で答えに気づく。女性の強さというのも垣間見えて、台本を読んでいてとても面白いと思いました」

――フランク・ワイルドホーン作品は『シラノ』以来2度目ですね。彼の楽曲はいかがですか?

「ワイルドホーンさんの曲は、聴いている分には楽しかったり、心地よい曲が多いんですが、歌おうとすると大変。“歌える奴にしか歌わせないぞ”という感じで(笑)、1番と2番で微妙に旋律が違っていたりします。本当に難しい曲が多くて壁は大きいんですが、計算や漢字のドリルをやるように、少しずつ取り組んでいます。“ここでトリックを使っているよ”とか“君はここは出来るかい?”という部分を、一つずつつぶしていくような感じですね。初演に出ていた方たちでさえ、歌稽古で音を取るのに苦労されている様子を見ていたりすると、いかに一筋縄じゃいかない楽曲なのかと。でも必死に、言葉に気持ちを乗せて歌っていくことで僕らの心がアリスに届くんだなあと実感しているところです」

*次ページからは平方さんの“これまで”に迫ります!*