ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.8 平方元基(2ページ目)

11年に『ロミオ&ジュリエット』でミュージカル・デビューを果たして以来、『エリザベート』『マイ・フェア・レディ』『レディ・ベス』と名だたる大作で主要な役を演じている平方元基さん。快進撃中のホープに、最新作の『アリス・イン・ワンダーランド』からこれまでの歩み、今後の夢までたっぷりお話いただきました。「修業と成長」の過程がうかがえる瑞々しいインタビュー、ご堪能ください!*観劇レポートを掲載しました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

突然飛び込んだ「芸能界」の衝撃

『アリス・イン・ワンダーランド』稽古場では「(前回公演から続投のキャストも少なくない中で)積極的に食らいついている」と現場スタッフの評価も上々の平方さん。(C) Marino Matsushima

『アリス・イン・ワンダーランド』稽古場では「(前回公演から続投のキャストも少なくない中で)積極的に食らいついている」と現場スタッフの評価も上々の平方さん。(C) Marino Matsushima

――平方さんは福岡のご出身なのですよね。

「はい、福岡市です」

――芸能界はいつごろから目指されたのですか?

「目指していた、というわけではないんです。福岡で大学生だった時に、知人に“紹介したい人がいる”と言われて会いにいったのが、今の事務所の方でした。“興味があったら東京に来ませんか”と言われたけれど、はじめは“行きません”とお答えしたんですよ。怖さもあったし、福岡って九州の中では都会的なところで何も困らないから、別に出なくても……と思ったんですね。でも、21歳の当時、何か刺激がほしいと思っていたことも事実で、もう一度事務所の方とお話して、親に話して3日後に東京に来てしまいました。住む場所も決めずに(笑)」

――突然、芸能界に飛び込んだのですね。

「地方から東京に出てきただけでもびっくりしていたところに、芸能界という別世界は衝撃でした(笑)。芸能界って、若くして入る方が多いじゃないですか。僕は22歳まで普通の世界にいたから、自分が変なのか!?と思いそうになるほどついていけなくて。すぐ“(福岡に)帰りたい”と思ったほどです」

――けれどもすぐにドラマ・デビュー(08年)。最初からレギュラーでした。

「勉強してこい、という(事務所の)意向もあったんだと思います。演技なんて全くやったことないのに突然ドラマに入れられて、専門用語も全然分からないなかでとてもきつかったけど、ドラマって進行がものすごく速いじゃないですか。時間が限られた中で撮っては出していくから、僕のような新人にそうそう構っていただけない。必死に現場を観察して、カメラの割りが変わったり立ち位置が変わったら、どうやってお芝居を変えるんだろうか……といったことを学んでいきました」

――どんなに学んでも、台詞に関してはセンスがないと厳しいものがあります。その点、平方さんには生来のものがあったのでしょうね。

「いや、ないです(笑)。でも何か、変な度胸があって、それが良かったんでしょうね、今から考えると。緊張もするにはするんですが、照明が当たると“もう最後、戻れない”と思って、ばっと行けたんです。

でも今、振り返ってみると当初は“こういう自分でいなくちゃ”というものに、すごく縛られていましたね。よく取材で“好きな俳優、映画は”と聞かれたけれど、実はそんなに映画もドラマもみていなくて。でも“ちゃんとしなきゃ”と思って思いついた作品名を言ったりしていたけど、それがその都度変わるから、“いったいお前は誰なんだ”状態(笑)。だから今回、『アリス・イン・ワンダーランド』の台本を読んで“どうすべきかじゃなくて、どうしたいかが大事”という部分がすごくよく分かりました。どういう生き方をしていても、100人が100人とも納得してくれるものじゃない。でも(自分が本当にやりたいことを貫けば)理解してくれる人はきっといる、と今では思えます」
『ロミオ&ジュリエット』ティボルト役undefined写真提供:ホリプロ

『ロミオ&ジュリエット』(2011年)ティボルト役 写真提供:ホリプロ

――そして11年に『ロミオ&ジュリエット』でミュージカル・デビュー。それまでミュージカルには親しまれていたのですか?

「福岡時代はほとんど縁がありませんでした。そもそも、“劇場”に対する感覚が、東京と福岡ではまったく違うような気がします。僕らの中では劇場というのは演劇部でお芝居をやっている子とか文学が好きな子だったり、富裕層のマダムが行く場所というイメージ。博多駅の近くに商業施設があって、その中にもキャナルシティ劇場というのがあるんですが、学生時代、そこに入って行く人たちが不思議に見えました。“キャナルに来てまで劇場に行くのか”って。

そんなことでミュージカルについても、全然ご覧になったことの無い方と同じで“ララララ~って歌い上げるやつでしょ”というイメージしか持ってなかったけれど、事務所に入って『シラノ』などのミュージカルをいくつか観て、“意外と違うかもしれない”と思うようになっていたところに、オーディションのお話をいただいたんです。

オーディションでは全員、ティボルトのナンバーが課題曲でした。一度歌って、帰宅したら“もう一度来て”という連絡があって、戻って歌って。一週間後ぐらいに結果が出ますということだったけど、二日後に連絡があって、“ティボルト役に決まりました”と。嬉しいというより、はじめは“うわ、どうしよう”と不安でした。自分の中にティボルトの要素が見つからなくて。演出の小池先生からはそういうお話はなかったし……」

――稽古で実際に取り組みながら、自分の中のティボルトを発掘していったのですね。

「せざるをえなかったです(笑)。台本を読むとティボルトは荒くれ者で暴君でというイメージなんだけど、ダブルキャストの上原理生さんがそれをぴったり体現しているんですよ。何度も“この役、ダブルキャストじゃなくて彼だけでもいいんじゃないか”と悩みました。でもそのうち“僕のティボルトは理生と同じにはならない。だったら自分の思った通りにやってみよう”と思えるようになったんです。
『ロミオ&ジュリエット』ベンヴォーリオundefined撮影:渡部孝弘

『ロミオ&ジュリエット』(2013年)ベンヴォーリオ役 撮影:渡部孝弘

小池先生の稽古って、本読みからではなく、いきなり立ち稽古から始まるんですよ。何の意図があって個々のシーンがあるのかが全く分からないから、全部自分で意味を持たせなくてはいけない。一見、つじつまが合っていなかったり流れが悪いように見える部分も、それはあなたが自分で考えなさいという演出を初ミュージカルで経験して、人生で初めてと思えるほど、必死になりました。藁にもすがるってこういうことなんだと思いましたね。本番中のことはほぼ、覚えていません。必死過ぎたのかな。大千秋楽の時も、大きな感動というより、“ああ、一応(最後まで)走れたんだ……”という思いでした」

*次ページでは『エリザベート』以降のご出演作、今後の夢についてお話いただきました*
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