島村幸大undefined群馬県出身。幼い頃から日本舞踊を学び、舞台に出演した経験を持つ。『マンマ・ミーア!』観劇をきっかけに四季を目指し、2008年研究所入所。『ライオンキング』で四季での初舞台を踏み、のちにシンバを演じている。『はだかの王様』『嵐の中のこどもたち』『ジョン万次郎の夢』にも出演。15年5月開幕の『アラジン』オーディションでアラジン役候補に選ばれた。(C) Marino Matsushima

島村幸大 群馬県出身。幼い頃から日本舞踊を学び、舞台に出演した経験を持つ。『マンマ・ミーア!』観劇をきっかけに四季を目指し、2008年研究所入所。『ライオンキング』で四季での初舞台を踏み、のちにシンバを演じている。『はだかの王様』『嵐の中のこどもたち』『ジョン万次郎の夢』にも出演。15年5月開幕の『アラジン』オーディションでアラジン役候補に選ばれた。(C) Marino Matsushima

文楽や日本舞踊、歌舞伎の立ち回りなど日本の伝統芸能のエッセンスを取り入れ、劇団四季の数あるオリジナル・ミュージカルの中でも、「和」テイスト溢れる作品として人気の『むかしむかしゾウがきた』。戦国時代、唐からやってきた象と村人たちの絆を通して「命の大切さ」を描く本作は、本物とみまごう精巧な象の「名演技」もあいまって、多くの人々の心を揺さぶってきました。
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

12月に開幕した本作の東京公演で、象の九郎衛門を懸命に守ろうとする少年、「太郎坊」にキャスティングされている俳優の一人が島村幸大さん。先日、15年5月開幕の新作『アラジン』オーディションで、みごとアラジン役の候補にも選ばれた若手俳優です。肩幅が広く、『ライオンキング』のシンバを長く演じてきたこともあって“元アスリート”に見られがちですが、実は音楽大学声楽科のご出身。しかも、当初はバリトンだったのだそう! チャレンジに次ぐチャレンジに懸命に取り組み、少しずつ夢をかなえてきた島村さん。その芯には、決してぶれることのない、ミュージカルへの純粋な憧れがあるようです。

九郎衛門との絆のドラマを通して
“命の重み”を丁寧に伝えたい


――ご出演中の『むかしむかしゾウがきた』は、1980年の初演以来度々、上演されています。島村さんも子どもの頃にご覧になっていますか?
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

「観ていないんですよ。僕は群馬の出身で、高校生の時に母とバスツアーで『マンマ・ミーア!』を観るまで、ミュージカルというものを観たことがなかったんです。『むかしむかしゾウがきた』を初めて観たのは劇団の研究所に入った2008年で、この時、何人かの同期がこの作品で初舞台を踏みました。劇場で観た時には、ダンスが多い作品なので、自分にはなかなか縁がないかなあと思ったのですが、今回、出演が叶って嬉しいです」

――本作の見どころは、何と言っても俳優二人が中に入って演じている、ゾウの九郎衛門。見ているとお鼻を内側にも外側にも曲げることが出来て、実によく出来ていますね。どうやって動かしているのだろうと思ってしまいます。

「そうなんですよ。僕が豆をあげると鼻でぱくぱくもするし、耳やしっぽを動かしたり、瞬きや涙を流したりもします。実は一度だけ、僕も中に入れてもらったことがあるんですよ。太郎坊が初めて九郎衛門に会ったとき、怖いながらも触ってみると九郎衛門が喜ぶというしぐさがあります。太郎坊の足が見えたらそれが合図ということになっていたので、九郎衛門の中の俳優の視界がどうなっているか、確認させてもらったんです。でも、入ってみてもどういう仕組みになっているのか、よくわかりませんでした。僕も知りたいです(笑)」

――文楽や立ち回りなど、日本の伝統芸能が巧みに取り入れられている点も本作の魅力ですが、演じる方々にとってはその分、準備が大変でいらっしゃるのではと思います。
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

『むかしむかしゾウがきた』

「まずは日ごろ着慣れていない着物に慣れるよう、稽古はみんな浴衣でやっていました。伝統芸能の“型”でやる部分とリアルな芝居でやる部分があるので、きちんと区別して“型”の部分はそれを大切に体に入れていきました。でも僕、実は4歳から日本舞踊をやっていたので、今回、“人形振り”といって、人形のような動きをするシーンではその経験を活かすことができ、嬉しかったです」

――太郎坊は、お殿様への贈り物として唐の国からやってきた象の“九郎衛門”を一生懸命、世話をし、戦が始まってお殿様に“邪魔だから象は殺せ”と言われてからは、彼の命を守るべく、一緒に逃避行をするのですよね。

「ええ、彼は10歳ですがとても芯がしっかりしていて、守りたいと思ったものは何があっても守り抜こうとします。戦に行かなければいけない父ちゃんと約束して、母ちゃんと九郎衛門は僕が守ると心に決めるんです。
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

僕、動物では象が一番好きということもあって、個人的にも九郎衛門はとても可愛いですね。象の何がいいのかって? 考えていることが分かりそうなくらい、目にすごく表情があってかわいい。それにじっとしているように見えても、ずっと動いているんですよ。イヤホンで音楽を聴いているのかなという風にノリノリでリズムをとっていることもあれば、夫婦でいる時はすごく仲良くしていたりとか。動物園では、何時間見ても見飽きないですね。

それくらい象が好きなので、太郎坊たちが逃げ込んだ村で“(九郎衛門を)助けたいんです”と訴えても村人たちが一人二人と去ってしまう場面は、つらくてつらくて。俳優としては冷静でいなくちゃいけないんですけど、こみあげてくるものがあります。その後、九郎衛門が倒れるシーンなんて、本当に信じたくないという気持ちです。彼を抱きながら、太郎坊は(九郎衛門が)“心の中で生きている”というニュアンスの歌を歌います。彼はここで命の尊さを学び、大きく成長するのでしょうね。戦国時代という、現代からは遠い時代の10歳の子どもがそこで何を学ぶのだろうと考えながら、毎回、大切に歌っています」

――無事に初日を勤められましたが、ご自身の中で「こういうふうに膨らませていきたい」と課題にされていることはありますか?
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

「“昔の子ども”をどう演じるか、というのはおそらく永遠の課題なのかなと思います。現代の子どもより、昔の子どもはもっと素直に物事に反応してゆくと思うんです。変に大人っぽくならないように、昔の子どもになりきることが一つの課題ですね。もう一つ、“命の重さ”というものに絶対慣れてはいけない、と自分を戒めています。公演が終わるごとにリセットして、翌日また新たに“命”というものに向き合うことが大切だと思います。カンパニーとしても、お客様に観ていただけるレベルで初日の幕を開けたけれど、まだどんどん成長していけるカンパニーだと思っているので、みんなで頑張って行きたいです」

*次ページでは“もしかしたら日本舞踊家になっていたかも”しれなかった島村さんがミュージカルの道を志すまでを伺いました!