心臓がきゅ~っとなるほど緊張した
『アラジン』オーディション

『アラジン』オーディションで候補に選ばれた皆さん。撮影:下坂敦俊

『アラジン』オーディションで候補に選ばれた皆さん。撮影:下坂敦俊

――ところで、『アラジン』のオーディション合格、おめでとうございます。

「ありがとうございます。まだ“候補”ではありますけれど」

――私も当日、取材させていただいていて、審査員のスコットさんたちが島村さんを高く評価していらっしゃるのがよく分かりました。

「そうだったんですか? 僕の方はああいった大作ミュージカルのオーディションは初めてで、緊張のあまり審査員席はまともに見られなかったです。あんなに心臓が小さくなったことはないですね。きゅ~っとなりました(笑)。口の中もからからになって、歯茎が唇裏にくっついたまま戻らなかった(笑)」

――審査では服装で役の雰囲気を出していらっしゃる方も多かったけれど、島村さんもタンクトップで臨んでいらっしゃいましたね。

「ブロードウェイでアラジン役のオリジナル・キャストの方が、『ライオンキング』でシンバをやっていた方だそうで、体格がいいんです。ちょっとセクシーでもあり、そこは僕は追いつかないんですけど(笑)、肩幅はあるので体型はちゃんと見せよう、と思ってタンクトップを着ました。僕はアニメ版の『アラジン』が大好きで、その世界をイメージしていたのですが、アニメ版と舞台版ではちょっと設定の違いがあって、アニメ版のアラジンは10代の青年だけど、舞台版では20代だそうです。ジャスミンとの恋をきちんと見せようという意図でちょっと大人になっているので、そこも意識しました」

――歌唱審査では受験者の皆さんが一人一人、ご自身の解釈で歌っていらっしゃいましたが、島村さんはどんなことを念頭に歌っていたのでしょう?
『アラジン』オーディションでの島村さん。撮影:上原タカシ

『アラジン』オーディションでの島村さん。撮影:上原タカシ

「一曲目の『One Jump Ahead』はとてもリズムが速い曲で、歌詞を前に前に考えていかないとどんどん遅れていってしまうんです。アラジンのキャラクターを考えると、言葉は大事にしつつも絶対に遅れてはいけないと思いながら歌いました。

『Proud of your boy』のほうは、アニメ版ではカットされていたけれど、今回、作品の芯となっている曲で、亡くなった母が誇りに思う息子になる、と誓う歌。歌う前に、スコットから“この曲は前向きで希望のある歌だから、ネガティブには歌わないように”とリクエストされて、できるだけ心がけました。今後も課題にしていきたいです」

――コミカルであったりショーアップされた部分も多く、これまでの劇団四季にはないタイプの舞台になるかもしれませんね。

「そう思います。3枚目のキャラクターも多いですし、これまで四季の舞台をご覧いただいているお客様が“四季がこんなこともやっちゃうんだ!”と思っていただける作品になるんじゃないかなと思っています。曲も素晴らしい、有名な曲ばかりで、僕もとても楽しみです」

“透明感”のある存在を目指して


――今後、どんな表現者を目指していますか?

「難しい質問ですね(笑)。お客様それぞれに人生もあれば見方もあるので、万人に受け入れられる表現をするというより、僕が演じる役、作品をちゃんとお客様に届けて、それぞれのことを思っていただけるといいなと思います。表現者としては、とにかく役を生きること。“こう受け取ってほしい”というタイプの俳優にはならないかなと思っています。

透明な存在でいたい、というのかな。今回、太郎坊役では10歳、シンバは人間でいえば17、18歳、アラジンは20代、その前の『ジョン万次郎の夢』の五右衛門役では14歳でしたが、僕自身は透明な存在でいて、いろんな色に染められるようにしたいです。
『ジョン万次郎の夢』

『ジョン万次郎の夢』

透明でいることを始めに意識させてくださったのは踊りの家元でした。小さいころから習っていた、今は亡きお師匠さんについて、家元が“君のことを透明にしてくれたね”とおっしゃってくださったんです。“その透明さを大事にすれば、いろんな役が出来るよ”と。なるほどな、と思いました。白だと、黒を足すとグレーになっちゃう。色はないにこしたことはないんだ、と。どの役をやるときにも、必ずここ(心)にある言葉です」

――例えば歌舞伎の世界では、まず役者自身が役より前に在ることが多いけれど、踊りの世界では違うのですね。

「大勢が出てくる歌舞伎と違って、日本舞踊だと一人で舞台に立つことが多いので、そういう必要が無いのかもしれませんね。例えば『鏡獅子』は“透明さ”が大事な作品の例かもしれません。前半は娘で、後半は獅子の精で男になるけれど、例えばピンクの色がついた俳優だと、後半、男に見えるようにするのは大変。透明だとその点、リセットがしやすいんですよ。今、劇団にいても、ある役の勉強をしている時に、急に別の作品に出演することもあります。自分の持ち役は常に引き出しに入れていても、ぱっと切り替えるのは簡単ではありません。でも日ごろから“透明”な俳優であれば、スムーズに対応することができると思うのです」

――それが、島村さんが先日のオーディションで筋骨隆々の青年を演じていたと思えば、今は素朴な10歳の男の子役がぴったりはまって見える理由なのですね。
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健

「『むかしむかしゾウがきた』の稽古直前まで『ライオンキング』のシンバを演じていて、かなり体重があったのですが、今回はゾウにリフトしてもらう場面もあるので、稽古が始まってから4,5キロ落としました。でも来年2月には『アラジン』の仮縫いがあるので、それまでに体重を戻さなくてはいけません。半月で戻せるかな…。頑張ります!(笑)」

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終始明るく、屈託なく質問に答えてくれた島村さん。今は溌剌としたお役の多い彼ですが、日本舞踊に水泳、そして声楽という背景を活かし、今後ますます芸域を広げていってくれることでしょう。個人的には、はじめに修業したというバリトンの深みのあるお声も、いつか聴いてみたいものですが(『ソング&ダンス』的な演目でぜひ!)、まずは現在上演中の『むかしむかしゾウがきた』太郎坊役、そして来年の『アラジン』タイトルロールと、着実に成長してゆく様に注目!です。

*公演情報*むかしむかしゾウがきた』上演中~15年1月12日=自由劇場


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