TETSUHARUundefined72年東京生まれ。関東国際高校演劇科、桐朋短期大学演劇科を卒業。ダンサーを経て振付師、演出家に。SMAP、AKB48、安室奈美恵、Kis-My-Ft2などアーティストの振付多数。舞台では『ロミオ&ジュリエット』『ロックオペラundefinedモーツァルト』などを振付。演出・振付を兼ねた舞台に『ドリーム・ハイ』『タンブリングvol.3』などがある。(C) Marino Matsushima

TETSUHARU 72年東京生まれ。関東国際高校演劇科、桐朋短期大学演劇科を卒業。ダンサーを経て振付師、演出家に。SMAP、AKB48、安室奈美恵、Kis-My-Ft2などアーティストの振付多数。舞台では『ロミオ&ジュリエット』『ロックオペラ モーツァルト』などを振付。演出・振付を兼ねた舞台に『ドリーム・ハイ』『タンブリングvol.3』などがある。(C) Marino Matsushima

*3ページ目にて『イン・ザ・ハイツ』観劇レポートを掲載*

3月上旬、稽古場を訪れると1幕の振付真っ最中。主人公の一人ウスナビが憧れのヴァネッサと初デートにこぎつけるものの、訪れたクラブでなかなか一緒に踊れないというシーンです。サルサ音楽の響く中、はじめはただ大勢がひしめいているだけのように見えますが、次第に上手(舞台右)はヴァネッサがモテモテぶりを発揮し、下手はそれに焼きもちを焼くウスナビの空間に分かれ、それぞれにドラマが展開してゆくことが判明。ヴァネッサに男性客たちが「踊りませんか?」とモーションをかけるくだりでは、一人ずつ異なるアプローチをするなど、緻密な振付に目が引き寄せられます。

『イン・ザ・ハイツ』稽古風景

『イン・ザ・ハイツ』稽古風景

TETSUHARUさんはというと、舞台全体を見まわしているかと思えば、あちらこちらへ動きながら役者たちの並びや立ち位置を修正したり、新たな動きを付け加えたり。役者たちも「それはこういうことですか?」「こういうのはどうですか?」と積極的にTETSUHARUさんと言葉を交わし、納得しながら体に入れ込んでいます。真剣かつオープンな空気の中、日本版『イン・ザ・ハイツ』は少しずつその輪郭を見せ始めていました。

ミュージカル最先端をゆく『イン・ザ・ハイツ』を日本人が演じる意味

――お稽古を拝見しましたが、とても緻密に作っていらっしゃいますね。

「結果的にそうなっていますね。今回はみんなとてもモチベーションが高くて、全員で山を登っているという感じかな。ここまで詰めなくてもと思うようなことでもみんなで話し合ったり、自分の出ていないシーンであってもいろいろ考えて、さらにいい言葉や立ち位置を考えたりしています」

――ウスナビを演じる(Def Techの)Microさんは初ミュージカルということですが、お芝居の空間に自然に馴染んでいらして驚きました。
『イン・ザ・ハイツ』製作発表で歌披露をする松下優也さん、Microさんら

『イン・ザ・ハイツ』製作発表で歌披露をする松下優也さん、Microさんら

「Microさんは今回、自分以外の全員が先輩という気持ちをもって臨んでくださっています。ウスナビ役は海外でこれまで沢山の俳優の方が演じていますが、ほぼ皆ハンチング帽をかぶっているんですよね。今回、宣伝写真撮影の頃には“ご自身に似合うものがあればハンチングでなくても”と話していたんですが、本読みが進んでいく中でMicroさんのほうから頭丸めてハンチングを買ってきて、“ここにいる間は自分はウスナビとして出来る限り存在したい”と言ってくれたんです。これほどの意気込みで取り組んでもらってるので、僕もそれに対して全力で取り組まないと、と日々励んでいます。

もう一人の主人公、ベニー役の松下優也さんは、ご一緒するのは二度目ですが、若手ながら類まれな才能を持っている歌手だと思うし、舞台経験もここ数年でかなり積んで、俳優としても成長著しくなっていると思います。そんな彼の勢いがもっと加速できて、彼にとってもやりがいのある作品となるよう、一緒に作ってきています」

――『イン・ザ・ハイツ』アメリカ版はご覧になっているのですか?

「カリフォルニアに全米ツアー版を観に行きました。とても興奮しましたね。作品のテーマもキャストも良かったし、音楽もこれまでにないスタイルでとてもパワフル。観終わったあとに他の観客がとてもあったかい笑顔をしていて、いい舞台というのはお客様をこういう表情にするのだなと思いました。人と人とのつながりであったり、そこで生まれる思いやりを再認識できる作品ですよね」

――難しいと言われていた日本人キャスト版が実現し、その演出を担当することになった時には?

「解消しなくてはいけない不安はありました。ラテン音楽がまだ日本にそれほど定着していない中で、僕が振付と演出をさせていただく意味を考えましたが、全くオリジナルをなぞるのではなく“僕が出来ることをやる”という前提でお話をいただいたのだと解釈しました。振付にしても、全部をサルサでやるとなれば、俳優でなくサルサ・ダンサーに出演したもらったほうがそれらしくはなる。でも、サルサという音楽自体、もともと移民の持ち込んだ中南米音楽とアメリカの文化が融合して生まれたものなんですよね。その移民たちの子孫にとっては、ヒップホップも自分たちの音楽になっていて、本作に登場します。この文化が今回海を渡って日本に来て、日本人なりの人間愛が描けたら。僕らなりの最高の形が作れたら、それが新しい『イン・ザ・ハイツ』として日本の皆さんに受け入れてもらえるんじゃないかなと思っています。
『イン・ザ・ハイツ』

『イン・ザ・ハイツ』

今回、歌詞を(日本人アーティストの)KREVAさんにお願いしたのですが、出来上がったラップのデモ音源を聞いた時に鳥肌が立って、一つの大きなハードルを簡単に超えることができたと感じました。こんなに自然に、インパクトのある日本語が音楽に乗っている。これが日本版『イン・ザ・ハイツ』なんだ、と。物語を日本語に訳していく中で、人種や宗教などいろいろな要素があると思いますが、それらを分かり易く日本のお客様に伝え、理解していただけるようにするのに、KREVAさんの歌詞は非常に大きな位置を占めています。この言葉をしっかり届けられるよう、各シーン作りをしっかりやっていこうという気持ちになりました」

――歌詞がインスピレーションになったということですが、それを表現するにあたって重きを置いていることは?

『イン・ザ・ハイツ』稽古風景

『イン・ザ・ハイツ』稽古風景

「ラップでは時に意味よりも韻を踏むことを優先するため、ややもすると意味的には関係のない言葉が入ってきたりするので、ラップの特性を生かしながら言葉を伝えるのは、なかなか厄介です。一小節の中に言葉がたくさん入ってくると早口になってしまう。それをジェスチャーなど、視覚的に補ったりすることはあります。また、翻訳にあたってこういう表現はそもそも日本語にはない、ということもあるので、日本なりにアレンジして、その雰囲気を出せるような言葉を選んだり、キャストと一緒にアイディアを出し合ったりもしています。やっぱり言葉が分からないと、お話が分からなくなってしまいますから。ただ、歌のもっている力というものもものすごく分かるので、歌の持っているイメージや波動もしっかりと伝えたい。言葉が心に響くかどうかを一番気にしながら作っています」

――どんな舞台にしたいと思っていらっしゃいますか?

「観終わった後に、お客様が気持ちよく、温かい気持ちになって笑顔で帰れるような作品にしたいですね。ラテン・ミュージックの持っている華やかさ力強さを味わいながら、お金がなくても本当に大事なものを知っていて、愛に溢れている人々の姿を観ることで、自分の大事なものは見渡せばすぐ近くにあるんだということを、お客様なりに発見できるきっかけになればいいなと思います」