2階リビングは都市的なもの
2階リビングならリビングの日照や通風条件がよくなる
都市部を離れて地方にくれば、豪雪地帯をのぞき、2階にリビングがある家はほとんどないのではないかと思う。家が密集していて1階はほとんど日が当たらないとか、リビングからの景観を重要視するとか、特別な理由がある場合にリビングは2階になるのだと思う。ある意味、2階リビングは都市的なものなのかもしれない。
建築士に頼んで2階リビングの家に
なんらかの理由があって2階にリビングを設けるのはよいとして、大切なことは、その場合に考えられるリスクを把握しておくことだ。それは現在だけにとどまらず、高齢になった時のことまで含む。なぜそう思ったかというと、以前お会いした人からこんな話を聞いたから。その人は高齢になり足腰が弱くなってしまい、普段は杖を突いて歩いている。私が設計士だと自己紹介すると、ご自宅の不満点について話を聞かせてくれた。その人のご自宅は、建築士に頼んで設計してもらった2階リビングの家だった。
建築当時は予想もしていなかったこと
ご自宅の建築当時は、2階にリビングがあるプランを気に入っていたけれど、高齢になってこんなに不便であることは想像もできなかったし、家の設計をした建築士からも一切説明を受けていない。同じく自宅の2階にリビングをつくった年を取った友人たちも、みんな階段が大変だと言って嘆いている、とのことだった。その方のご自宅を設計したのは私ではないけれども、杖をついて歩いているその人が、苦労して階段を上っている姿を想像し、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
メリット・デメリットを知っているということが大事
何が問題なのかというと、建築主がデメリットを理解しないまま、2階リビング案を採用してしまったことなのだと思う。本来なら、設計者がきちんとメリットデメリットを説明すべきだった。そうすれば、今こんなに不満が続出することもなかったはずだ。2階にリビングをもっていく場合、日照や通風、景観条件はよくなる。でも、そこばかりに気をとられていてはいけないのだ。メインの生活空間が2階になると、例えば日々の買い物など、重い荷物を階段を持って上がらなければならない。玄関からの動線も長い。そんな生活スタイルが、高齢になったら辛くなるかもしれないという、長期的な視点のメリットデメリットまで理解した上で採用すべきだった。
対策がとってあればOK
但し、先を見越した上で、高齢になって階段が厳しくなった時のために、ホームエレベーターを増築できるスペースを確保しておくとか、簡単なリフォームで1階に主な生活スペースを持ってこれるように設備配管類を入れておくなど、仕込みがあれば、2階リビングの家でもずっと、安心・安全に暮らしていけると思う。いいことばっかり言うのはNG
施主の身になってきちんとしたアドバイスができるかどうか、それは建築士の責任だ。私自身、少なくとも、あの時にような申し訳ない気持ちにはならなくて済むように、プロとして住まいづくりのアドバイスをしていきたいと思う。また、これから家を建てようとする人も、家の設計を任せるパートナーには、いいことばっかり言う人ではなく、メリットもデメリットもきちんと説明してくれて、デメリットの部分をカバーできる提案をしてくれるような人を選んで欲しいと思う。
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