イギリスにおけるアロマテラピー
イギリスでは、庭先にハーブが植えられており、それらを摘んできてティーとして飲んだり、チンキにするなど、古くから様々な用途でエッセンシャルオイルの原料となるハーブが使われてきました。
長い歴史を持つイギリスにおけるアロマテラピーには、様々な歴史的背景があります。
16世紀ごろのイギリスでは、薬草の育成や研究が盛んになります。16世紀の薬草専門家として有名なターナーは薬用植物を熱性、冷性、乾性、湿性の度合いによって分類。熱性と乾性は陽の力があり、冷性と湿性は陰の力に対応すると考えられていました。熱性の度合いには四度あり、熱性一度という薬用植物は熱性 二度の植物ほど暖める作用が強くないという考え方です。薬草医学はこのように様々な専門家らの研究により発展したのです。
中世の医療の様子は、ロンドンにあるThe Old Operating Theatre Museumに展示されており、18世紀~19世紀の医療ではハーブが使われ、症状に合わせて処方されていたのだということがわかります。その後、医学は医学、薬学は薬学、美容は美容とそれぞれの分野に分かれ 、それぞれに研究が進んでいくようになりました。
ビートルズとヒッピーの時代だった1960年代と1970年代には、自然環境のバランス保持、有機栽培食品の摂取、合成製品に対抗し自然産物を使用しようという考え方が復活し、医療の分野においてもホリスティックな代替、補完的アプローチが根を下ろし始めました。それにより、病気の原因を破壊しようとする 西洋医学のみでは、充分にケアできなかった部分まで全体的ケアができるようになってきたのです。
1980年代では、ロバートティスランド氏とシャーリープライス女史がアロマテラピーの発展や、アロマテラピー協会の設立にも貢献しました。彼らの講座は、数多くの助産師、ナース、理学療法士が受講し、1990年代になると教育の水準も年々改善され、法規制なども出てきました。
アロマテラピーは、イギリスにおいて政府が公認したNOSの教育水準を有する、最初の補完療法となりました(1998年に認定)。教育内容では、精油の科学と、人体に対する影響の理解などが重要とされています。
現在の英国のアロマセラピストは、NHS(国民保健サービス)で働く人も増えていることから、アロマティックメディシン、アロマトロジー等にも関心を持つ ようになってきており、通年を通して講座が開催されています。また、1990年代半ば以降いくつかの病院は、看護師に、アロマテラピーの講座を受講する際 の資金援助も行っているほどアロマテラピーに対し、協力的になりました。
7月に訪れたコッツウォルズのラベンダー畑です。ここでは地域の人たちが蒸留の様子も見学していました。イングリッシュガーデンを含め、植物とのふれあいが多いのがイギリスの特徴です。
またPerkin Pearcy&Fraserの論文によると、約10年前の時点で、イギリスでは、一般医の93%、病院勤務医の70%が、患者さんを代替療法家に 1回以上紹介した経験を有し、一般医の20%、病院医の12%が代替療法を実践していたそうです。補完療法を受けた医師がその良さを改めて知り、担当の患者へセラピーをすすめるなどの流れもあります。特に、若い医師で補完療法に好意的で有用性を認める人が 多いというデーターもあります。
このような流れから、イギリスでは補完療法の利用者は相当数あり、医療機関から処方された薬を服用している人も一定の割合で補完療法を利用しており、アロマテラピー、マッサージは、鍼と共に主流となっています。
イギリスでは統合医療に向けて、補完療法の標準化された教育プログラムを提供すること、システムの確立の必要性が課題となっています。研究体制も徐々にですが、充実してきているようです。
さて、次頁では、アロマセラピストの資格団体についてご紹介します。