マンション性能表示システム「チェックアイズ」
一度でもマンション購入を検討したことがあれば、「当社は独自の厳しいチェック項目を掲げ、モノづくりに取り組んでいます…」といったコピーを目にする機会があるはず。これだけでは、ほとんど具体的なイメージがわかないと思うが、実際に作業を遂行している場面を目の当たりにすれば、その細かさと数の多さにきっと驚かれるに違いない。この「独自」というところがポイント。過去の積み重ねから設けられた設計基準、つまり「標準仕様」は、いわばその企業の財産。経験が豊富であればあるほど、高質な住宅になる確率が高い。丸の内で培ったビル管理のノウハウを持ち合わせていた三菱地所が、実績に長けていたのは説明するまでもないだろう。共同事業(JV)の相手先は、決まって「地所のマンションが安心だという理由がよくわかった」と感想を漏らす。
品確法の目玉「住宅性能表示制度」は、業界に物議を呼ぶ。項目選定は適切か、等級表示は誤解を与えないか、といった意見が噴出。三菱地所は、このなかば強引な新制度の導入を機に、工程(バリューチェーン)の改革に踏み切った。設計部門の独立もあり、技術の可視化を行ったのである。パークハウスの性能表示システム「チェックアイズ」はこうして誕生した。
「チェックアイズブック」を隅々まで読み込むと、各等級の説明が細かく記されると同時に、それに対し「私たちはこう考える」といった意図が盛り込まれていることに気付く。さらに、住まいにとって重要な「管理、アフターサービス」や「エコ(温暖化の緩和)」に関する項目なども自主的に加えている。工事の進捗(チェックアイズレポート)や入居後の点検・補修(チェックアイズカルテ)まで一貫した仕組みであることにも着目したい。どんな新たな試みもキャッチアップが早いこの業界にあって、チェックアイズだけは10年経った今でも独自性を保っている理由はそこにある。
新ブランド「ザ・パークハウス」の行方
その「標準仕様の高さ」を象徴するようなひとつの例を挙げてみよう。共用部に本管直結の水道管を別途1本引く、というもの。停電で給水ポンプが使えなくなっても、水を確保することができる。近隣にも供給できるからという、いかにも丸の内の大家さんらしい発想だ。当然チェックアイズブックにも記載されてある。品質に絶対的な自信があればこそ、経営資源をデザインや機能面に振り向けることができた。今では当たり前のように普及した、収納付きの三面鏡(洗面室)や棒状のプッシュプルハンドルをスタイリッシュなデザインに改良し広めたのは、三菱地所の商品企画部が考え出したアイデアである。
三菱地所の商品企画部を立ち上げた平生進一氏(現メックエコライフ社長)は常々こう話していた。「時代の流れを汲み、常に新しい技術にアンテナを張り、顧客が求める少し先の発想をカタチにしたい」。住まいを単なる箱として捉えるのではなく、ライフスタイルからアプローチする姿勢を守り通した人物だ。例えば間取りなら、「オーダーメイド(自由設計)より満足度の高いプランを考えてこそ家づくりのプロ」が口癖であった。バブル崩壊後、高級マンションにいち早く取り組んだのも地所。すべての礎となった品質は新ブランドでも業界をリードし続けることができるだろうか。
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