マンションは、売主がどこかで商品価値が違うのか。そんな素朴な疑問に答えることができないかと思い、「デベロッパーのDNAとマンションブランド」シリーズをはじめた。企業特性や経営者の考えがプロダクトにどう影響を及ぼすのか。具体的な分譲実績や発言をもとに書き記していく。

Vol.4住友不動産はSNS上でちょっとした議論を呼んだ。接点の深浅で企業に対するイメージは個人差がある。思った通りという意見もあれば、意外な一面が知れたとの声も。さて5回目は三井不動産グループ(三井不動産レジデンシャル)。業界のリーディングカンパニーに焦点を当てる。

業界のリーディングカンパニー

パークマンション千鳥ヶ淵

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大手企業は年に一度、マスコミと業界専門家を一堂に会し記者懇親会を催す。系列ホテルの宴会場や本社ビル内の施設を使って、本社役員およびグループ会社社長らが勢揃いし、記者陣を応対する。ゲスト(記者)からすれば、各社で微妙に進行なども異なることがあって、企業の色を感じる瞬間でもある。

なかでも会の始まりを告げるトップ、つまり本社社長のスピーチはその象徴のひとつ。三井不動産グループの場合、話の筋道は毎年一貫している。世界を取り巻く経済情勢にはじまり、社会の構造的変化がもたらす影響、直近の不動産市況、業界・市場が抱えるテーマ、将来の展望、そして政府に対する要望。岩沙会長から菰田社長にバトンが渡ってからも骨子は変わらない。業界を代表しているという自負は誰もが共感するところではないだろうか。

論を立てパフォーマンスを仕上げる場面は分譲マンションの現場も同じだ。以前のことになるが、三井不動産(現三井不動産レジデンシャル)に関わったライターはよくこういっていた。「オリエンテーション(物件説明)の起承転結がわかりやすく表現(執筆)しやすい」と。コンセプトがぶれていないからなのだが、マーケットを正確に把握しようとする姿勢の表れだと思っている。

マーケティングの三井

都内初の長期優良住宅認定マンション「パークコート六本木ヒルトップ」

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品質なら地所、販売力は野村。大手各社はそれぞれに優位性を備えている。が、バリューチェーンを包括してマーケティングに長けているのは三井不動産グループではないか。そう思わせるトピックは少なくない。

とくに独自性を思わせるのは、事業領域を取り巻く世間の動きに対する感度の高さだ。いまでこそマンション業界のグッドデザイン賞獲得の動きは顕著だが、先鞭をつけたのは他ならぬ同社。それ以外にも、友の会(「こんにちは」)運営やコーポレートブランド強化、メンバーシップ特典などもいずれも真っ先に取り組んだ。商品企画の底上げでいえば、「エコ」を掲げ複層ガラスをいち早く標準仕様にした功績は多大といえるだろう。

事業コア(開発・分譲)においても先を見据えた市場開拓を試みる。昭和40年代にタワーマンションを手掛け、その後千葉みなと、本牧、中央区佃などおもに大規模開発で新しい街づくりにチャレンジした。ときに、価格設定にも斬新なアイデアを投入する。相場の壁が立ちはだかる不動産市場において、誰もが思いつかなかったアプローチで高い収益を遂げたプロジェクトが少なくない。広義でいうなれば、価値の創出である。次ページで事例を取り上げる。