高級マンション/マンションのブランド論

震災後、分譲マンションの安全性はどこまで向上した?

甚大な被害を引き起こした「東日本大震災(東北太平洋沖地震)」から、まもなく1年が経とうとしている。果たして、マンションの安全性はどこまで向上したのか。業界のリーディングカンパニー3社が一堂に会し、この1年を振り返った。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド

左から、三井不動産レジデンシャル<都市開発事業部都市開発一部長兼商品企画室長>山田貴夫氏、野村不動産<商品開発部長>川合通裕氏、三菱地所レジデンス<都心事業部長>小山健介氏

 


「東日本大震災」を振り返って

坂根
大地震からまもなく1年。直後は何かと混乱したのでは?
山田
三井不動産レジデンシャル<br />
    都市開発事業部都市開発一部長<br />
    兼 商品企画室長<br />
    山田貴夫氏

三井不動産レジデンシャル
都市開発事業部都市開発一部長
兼 商品企画室長
山田貴夫氏

想定していなかった規模の地震でした。津波も含めてショックは非常に大きかった。われわれは、まずすべてのマンションについて冷静に対処するために、少しの間、販売に関しては慎重に対応する期間を持ちました。
想定外だったのは工期に対する影響です。サプライチェーンをたどると、例えばユニットバスの工場自体は福島にないのですが、排水トラップというパーツをつくっているのは福島県のある業者で、日本のシェアの8~9割を占めていました。そこが被災されてしまったので、ユニットバスの納期が間に合わない。施工面の影響も予想以上に大きいのだということがわかりはじめたのです。
そういった被害の状況やお客さまの心理も含め、影響をしっかり見極める必要があると判断しました。もちろん、営業もお客さんにいつ引き渡しができるか確約できない段階で、営業するわけにいきません。状況を把握するまでしばらく時間をかけたというわけです。
坂根
野村不動産は?
川合
ちょうど、3月11日前後のお引き渡し物件が多々ありましたから、まずは安全性の確認に奔走しました。工事中の物件もさることながら、実際に竣工した物件も含め、4~5月はその作業に追われた感があります。工程の見直しはもちろん、われわれの品質を維持できるのか、みんなで議論しながら慎重に行いました。
坂根
竣工した物件もすべて?
野村不動産<br />
商品開発部長<br />
川合通裕氏

野村不動産 商品開発部長
川合通裕氏

川合
管理会社を通じて確認しましたが、われわれも見に行きました。調査という意味では、もちろん全物件、被害状況の確認をしました。
坂根
モデルルーム来場の影響は?
川合
販売はちょうどゴールデンウィーク前後から再開しました。例えば「プラウド大井ゼームス坂」(164戸)は、比較的早くから再開した物件で、当初からご検討客がかなりいらっしゃいました。もちろん震災に対するいろんなご質問を受けましたが、ことこまかにご説明し、「安心なんですね」「信頼しています」とご納得いただき、ご契約そのものは順調に進みました。
坂根
三菱地所レジデンスは?
小山
三菱地所レジデンス<br />
    都心事業部長<br />
    小山健介氏

三菱地所レジデンス 都心事業部長
小山健介氏

当社は直接的被害が、幸いあまりありませんでしたが、仙台市内にも物件がありますから、仙台営業所へ応援人員を送り、全棟検査をして対応しました。たまたま3月11日の次の日に引き渡しの物件がありましたが、皆さんお越しいただき大変感動しました。
直後というよりも5月6月ぐらいになって、落ち着きを取り戻したときに、「はたして私は家を買っていいんだろうか」という迷いが生じてきたのではないでしょうか。そのころから、実際来場数が落ちてきた感がありました。安全、安心を口にされますが、具体的には何が問題かもよくわからなくなってしまった。そんな事態ではなかったか、と振り返ってみて思います。
坂根
いま大きな決め事をしていいのか、という不安ですね。
小山
そうです。超高層うんぬんではなく、どの物件でも。

「しばらく、“ショック状態”だった」

山田
地震発生後しばらくは、われわれもお客さんもある種の“ショック状態”だったのではないでしょうか。ところが、よくよく考えてみると、地震があったことと、マンションを買わないことがリンクするのか?と疑問に思い始める。だんだん冷静になってきて、われわれがちゃんとご説明すると、やはり住まいに関することと、地震が起きたということは別だと理解していただけた。ようやくマーケットが戻ってきた感じがします。
小山
7月以降ぐらいから少しずつ戻ってきたと思いますね。
坂根
では次に、地震のあと、「マンションの防災基準について、どこをどう見直したのか」お聞きしたいと思います。
【座談会記事一覧】
1-震災後、分譲マンションの安全性はどこまで向上した?
2-三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス」の防災新基準
3-抜本的に見直し、三井不動産レジデンシャルの防災基準
4-野村不動産のマンション「プラウド」の防災対策
5-「プラウドタワー東雲」第1期250戸即日完売の舞台裏
6-「ザ・パークハウス晴海タワーズ」公開ひと月後の反響
7-震災後、“都心部のタワーマンション”に対する評価
8-マンション業界のブランド戦略~顧客接点の模索
9-「注目の都心マンション」と購入希望者へのアドバイス


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