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ウイスキー用語8/水割その3[入門篇]

ミネラルウォーターにはガス入り、ガスなしがある。ヨーロッパでは古くからどちらも飲まれ、また酒を割ってもいた。ソーダ割という言い方は19世紀になってからのことだろう。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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鉱泉水と雪解け水

左:ウイスキー&ウォーター、右:ウイスキー&ソーダ

左:ウイスキー&ウォーター、右:ウイスキー&ソーダ

「水割その1」では、その昔、ウイスキーに限らず、さまざまな酒が水で割って飲まれていたことをお伝えした。
ひとつ忘れていたことがある。それはミルク割だ。昔、ヨーロッパでは酒をミルクで割るのがメジャーだった。そういう文献は多々ある。水とかミルクとか身近な営みの中にあるもので酒を割るというのは、まったくもって自然なことである。

ヨーロッパの水事情は皆さんすでによくご存知だと思う。日本のように水道水をガブガブ飲めるものではない。ミネラルウォーターの歴史的歩みは他に譲るとして、ヨーロッパを旅したことがある人なら、ミネラルウォーターを頼むときに、ガス入りかガスなしかきちんと言わなければならないことはご承知の通り。
英語ならばガス入はスパークリング・ウォーターで、ガスなしはスティル・ウォーターである。炭酸ガスを含む鉱泉水か含まない雪解け水か、どちらかだ。
何を言いたいか。つまりヨーロッパでは昔からソーダ割と水割(両方水割)を飲んでいたということ。
そしてソーダ水を人工的に生み出す研究がはじまったのは18世紀後半のことになる。
 

ヨーロッパのキテレツが生んだソーダ水

ソーダ水をつくり出した化学者ってのは、とてもとても偉人である。
まず1769年、イングランド人のジョゼフ・プリーストリーがビールの発酵で発生する炭酸ガスを水に溶かし込み、ソーダ水の製造法を発明。この人は、酸素の発見者のひとりでもあり、天然ゴムで紙に書いた字をこするとよく消える、という消しゴムの発見者であったり、哲学者、教育者、神学者でもあった人で、まあ日本でいえばキテレツ君みたいなりね。
少し遅れて、1771年にスウェーデン人のトルビョルン・ベリマンもソーダ水の製造に成功。この人は元素やイオンにアルファベットをつけた人である。病弱だった彼は、健康にいい飲み物として周囲にすすめたらしい。

ソーダ水をうまく商売にしたのがスイス人のヤコブ・シュエップス。彼は1790年にイギリスで製品化した。最初は薬局で売られた。健康にいい、糖尿病に効くと謳われたそうだ。1836年には英王室のロイヤル・ワラント(王室御用達)を戴き、これによりシュエップスはヨーロッパ中に知れ渡り、ソーダ水が広まっていく。
ブランデー&ソーダなんて呼ばれ方をしたのは、おそらくその頃からではなかろうか。そしてウイスキー&ソーダが流行ったのはその後であろう。
アメリカではどうだったか。1871年にカナダのトロントのJ.J.マクラフリンがソーダ水を発売し、北米市場で大人気となる。当初は「ミネラル・スパークリング・ウォーター」と呼ばれていた。これが現在の「カナダ・ドライ」ということになる。

鉱泉水にはじまって人工的なソーダ水がつくられ広まっていくには長い歴史がある。とりあえず、ハイボールもようは水割(ウイスキー&ウォーター)ってことを、わかっていただけただろうか。
 

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