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ウイスキー用語6/水割その1[入門篇]

水割。MIZUWARI。欧米の大都市の酒場で通用する言葉になっている。でもこれは日本だけと思ってはいけない。イギリスではウイスキーだけじゃなく、古くからラム、ジンを水で割っていた。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

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グロッギーは水割から生まれた

ウイスキー&ウォーター

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水割っていうのは、ウイスキー&ウォーターに限った飲み方ではない。イギリスでは古くからウイスキーだけでなく、ラム、ジンなどを水で割って飲んでいた。
18世紀のラム(Rum)に関しての有名な話をしよう。
イギリス海軍の大西洋艦隊、バーノン提督は昼食前に半パイント(250ml弱)のラムを水兵に支給した。水兵は歓喜して「いい奴」との親しみをこめて、提督を「オールド・ラミー」(いま、rummyは酔っぱらいのこと)と呼ぶ。ところが酔いのため、午後の任務に支障をきたすものが出てきた。
1740年、バーノン提督はラムを4倍の水で割り、一日2回に分けて支給するようになる。これには水兵たちから不満の声が上がった。このラムの水割を、提督が着ている古くてよれよれのマントがグログラム(絹とウールの交織の粗い生地)だったので、酒のラムと引っ掛けてケチな奴の思いを込め、「グロッグ」と呼びはじめる。提督はいきなり手のひら返しを食らった。
ただし、グロッグを飲んでみると口当りがよく、つい飲み過ぎてしまう。調子に乗って飲むとフラフラになることから「グロッギー」の言葉が生まれる。
はじめ評判の悪かったグロッグだが、なんと大西洋艦隊は以後230年の長きに渡りラムの水割を支給していた。凄い。
また他の酒ではジン。19世紀半ばになるとイングランドではジンと水を半々に割る「ジン・ツイスト」が流行する。

ウイスキーはといえば、かなり古くから水で割っていたようだ。とくにエディンバラの人たちは近郊にあるトッドの泉の水で、ウイスキーを割って飲んでいた。そこからウイスキーの水割を「ウイスキー・トディ」(Whisky Toddy)と呼ぶようになったともいわれている。
いまカクテルの世界で「トディ」(トデーとも)とは、大型タンブラーかロックグラスに砂糖を入れてごく少量の水で溶かし、好みのスピリッツを加えて水またはお湯で割って飲むスタイルのことを指す。
 

家庭ではじまった水割

さて日本。「MIZUWARI」は欧米の大都市の酒場で通用するほどの言葉になっているが、実はこの飲み方が普及したのは1960年代に入ってからのこと。東京オリンピック(1964)前くらいからだ。それまではストレートかソーダ割(ハイボール)がウイスキーの一般的な飲み方だった。
台所がキッチン、ちゃぶ台がテーブルといったふうに洋風化が進む中で、冷蔵庫が家庭に普及しはじめて氷が簡単につくれるようになる。そしてこれが最も重要な点。日本の水道水が安全で美味しかったからだ。グラスに氷とウイスキーを入れて台所に行き、蛇口をひねれば水割が簡単につくれる。アルコールの強さを弱め、口当りがよくなる。
かつてサントリーはトリスバー向けのPR誌『洋酒天国』を発行していたが、東京オリンピック頃の号で、トリスバーでウイスキーの水割をオーダーする人が増えてきたことを伝えている。
そして1970年代になり、サントリーが二本箸作戦を展開する。箸で食事をする店、つまり和風店にウイスキーの水割をすすめていったのだ。そこから日本では水割が大ブームとなった。
*次回は、水割その2
 

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