オン・ザ・ロックは挫折
オン・ザ・ロック
グラスに氷とウイスキー。いたってシンプルな飲み方だが、これが大衆化したのは20世紀に入ってからのことになる。19世紀はというと、なんせ氷というものがどこでも簡単に入手できるわけにはいかなかったから、まあロックで飲むなんて機会はまず少なかったであろう。飲めたとしても特別贅沢な味わい方ということになる。
盛んに飲みはじめ、この言葉を使い出したのはどこの国の人間か、というと、やはりアメリカの人たち。
最初は「オン・アイス・キューブ」、「オン・ジ・アイセズ」などいろいろと言っていたが、「オン・ザ・ロック」に落ち着いた。
じゃあウイスキーの国、イギリスではどうだったのか。その昔スペインの無敵艦隊を撃破し、海洋国家として黄金時代を迎えたことのある国だけに、オン・ザ・ロックという言葉を嫌った。船の座礁を意味したからで、さらには転じて、人生の「挫折」を指した。
その点アメリカではロックはダイヤモンドの隠語だったくらいで、イメージはとてもよかった。
イギリスで「オン・ザ・ロック」がよく飲まれ、使われるようになったのは第2次世界大戦後まで待たなければならなかったようだ。
オーバー・ザ・ロック
1970年代になると「オーバー」といった言い方がアメリカで流行する。「オーバー・ザ・ロック」である。氷の上にウイスキーを注ぐ、それをオーバーと表現したのだ。その頃はストレートを「ストレート・アップ」、ロックを「オーバー」と言ったそうで、「Up or Over」とバーテンダーが聞いてきた、なんてことが書いてある本は多い。
わたしは1980年代後半からアメリカに行くことが多くなったが、そんな言い方を耳にしたことがない。70年代の一時的な流行だったのか、わたしの体験が浅いのか。いまでも使っているのかしらん。読者でいまのアメリカ酒場事情に詳しい人がいらっしゃったら教えていただきたい。
関連記事
ウイスキー用語6/水割その1[入門篇]ウイスキー用語4/ストレート[入門編]
ウイスキー用語3/ショット[入門篇]
ウイスキーの飲み方[入門篇]
ウイスキー用語2/ラベルを解読[入門篇]
ウイスキー用語1/ラベルを解読[入門篇]