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法人化の手続きとは? 種類・特徴・法人設立の流れ

会社の設立を検討する場合の、法人化の手続きとは? 法人設立の際、様々な会社形態のなかのどの形態で設立するのか迷う場合も多いことと思います。ここでは、法人の種類とそれぞれの特徴を見ていきます。また、株式会社の設立について、手続きの流れを解説していきます。

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド

法人化の手続きとは?

法人化

会社設立を検討する場合、様々な会社形態があるなか、どの形態で設立するのか迷う場合も多いことと思います。出資の仕方や出資者の責任の有無などによって形態が異なります。ここでは、法人の種類とそれぞれの特徴を見て行きます。
 

 法人の種類と特徴 

法人の種類と特徴

法人の種類と特徴

■株式会社
会社と聞いて、真っ先に思い浮かべるのが株式会社。特徴は以下の通りです。

  • 出資者は1名以上
  • 出資者は全員、会社の債務に対して、出資金額の範囲内で責任を負う
  • 原則として出資者と経営者は分離している
  • 圧倒的な知名度がある
合同会社に比べると設立費用はやや高いことがデメリット。知名度、信用度が格段に高いことが大きなメリットです。

■合同会社
2006(平成18)年の会社法改正で新設された会社形態。別名LLC(Limited Liability Company)とも呼ばれます。出資者全員が有限責任で、かつ意思決定や利益分配方法を自由に決められる唯一の会社です。合同会社を設立する最大のメリットとは、出資率=分配比率でなくても良い点にあります。特徴は、以下の通りです。
  • 出資者は1名以上
  • 出資は金銭のみ
  • 出資者と経営者が同一人物
  • 全員有限責任社員(出資した金額の範囲内の責任のみ負う社員 )
  • 定款自治が認められる(組織の機関設計が自由に行える)
  • 出資率=分配比率でなくても良い 
株式会社の設立に比べて費用が安く済むのもメリット。反面、知名度が低いため信用を得られない可能性があることがデメリットです。

■合名会社
2006年の新会社法施行で株式会社の資本金要件が緩和されたことにより、資本金が少なくても設立できるという合名会社設立のメリットが薄れため、現在ほとんど設立されることはありませんが、設立することは可能です。以下のような特徴があります。
  • 2人以上が出資をする
  • 出資者が経営も行う
  • それぞれの出資者が会社の債務に対して連帯して無限に責任を負う
会社法が改正される前は、有限会社が300万円、株式会社が1,000万円の資本金が必要だったため、資本金2円でも設立できる合名会社のメリットは大きいものがありました。現在は会社法改正により、株式会社でも1円の資本金で設立することが可能になり、そのメリットはなくなりました。知名度がほとんどないのがデメリットです。

■合資会社
合資会社についても合名会社と同様、2006年の新会社法施行で株式会社の資本金要件が緩和されたことにより、資本金が少なくても設立できるという合資会社設立のメリットが薄れたため、現在ほとんど設立されることはありません。特徴は以下の通りです。
  • 2人以上が出資をする
  • 出資者のうち、1名以上は無限責任社員(会社の債務について無限に責任を負う社員)にする
  • 出資者のうち、1名以上は有限責任社員(出資した金額の範囲内の責任のみ負う社員)にする
  • 無限責任社員は、経営も行う
合資会社についても知名度がほとんどないのがデメリットです。

■有限会社
2006年の新会社法施行により、現在は法律上、有限会社を新規に設立することはできません。

 

法人化……株式会社が選ばれる理由

2006年の会社法施行により、資本金規制が撤廃されたり取締役1名でも設立できるなど、自由な内容で株式会社を設立することが可能になりました。これによって、現在では合名会社や合資会社によって設立するメリットはほとんどなくなったといってよいでしょう。設立時の費用が15万円ほど節減できるという理由で、合同会社を検討するという場合もあるかと思います。

ただ、実際に会社を設立して業務を行ったり名刺交換する際に、やはり合同会社と名乗ることで取引先からの信用度がやや落ちることは否定できません。出資率と分配率を変えたり自由な定款で会社運営を行いたいというような合同会社でなければならない理由がない限り、合同会社での設立はあまりオススメできません。やはり、会社を設立するなら信用度の高い株式会社での設立を検討されることをオススメします。

 

株式会社設立手続きの流れ

会社設立には様々な手続が必要です

会社設立には様々な手続が必要です


会社形態のうち、設立されることが圧倒的に多い株式会社の設立について、手続きの流れを見ていくことにしましょう。

株式会社を設立するためには、様々な手続を経る必要があります。株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立という2つの方法があります。ここでは、一般的に多い発起設立の手続とスケジュールを見ていきましょう。

全体的なスケジュールとしては、最初の会社概要についての検討開始から会社設立日まで1ヶ月くらいあれば余裕があります。もちろん大急ぎで取り組めば、検討開始から会社設立日まで1週間くらいで完了させることも可能です。

1.会社の概要についての検討、決定
商号、本店所在地、事業目的、出資者、資本金、役員、決算期など、会社設立に必要な項目を検討の上、決定します。

2.法人の実印の作成
商号(会社名)が決まったら、会社の実印の作成を手配します。会社設立後に、銀行印や請求書発行時などに必要になる角印も必要になります。実印、銀行印、角印の3本セットで作成しておくと便利です。

3.印鑑証明書の取得
定款認証の際に発起人全員の印鑑証明書が、設立登記の際に代表取締役の印鑑証明書が必要となります。定款には印鑑証明書の通りに正確な住所の記載をしなければなりません。早めに取得しておきましょう。

4.定款の作成
検討した会社の概要をもとに定款を作成します。素人ではなかなか難しいので行政書士に依頼するのが一般的。依頼した場合は数日で完成し、報酬は50,000円程度です。

5.発起人による設立総会の開催
設立時役員などの選出、設立時代表取締役の選出を行います。議事録も作成します。

6.定款の認証
公証人役場で定款の認証を受けます。これで定款の効力が生じます。公証人役場に納める定款認証手数料が52,000円、定款に貼る収入印紙代が40,000円かかります。電子定款認証に対応している行政書士に依頼した場合、収入印紙は不要で40,000円の節約になります。

7.出資金の払込
発起人代表の個人銀行預金口座に、それぞれの出資者が資本金を振込みます。その預金通帳をコピーして加工し、資本金の払込証明とします。

8.登記書類の作成
会社設立の登記申請書類の作成をします。素人ではなかなか難しく、司法書士に依頼するのが一般的。依頼した場合、数日で完成して報酬は50,000円程度です。

9.登記申請書類の提出
会社設立日に登記書類を法務局へ提出します。司法書士に委任した場合は、司法書士が代理で書類を提出します。法務局に収める登録免許税が150,000円かかりますが、オンライン申請に対応している司法書士事務所に依頼した場合は軽減され、145,000円で済みます。

10.履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、印鑑カード、印鑑証明書の取得
法務局で履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、印鑑カード、印鑑証明書を取得します。登記印紙代が3,000円ほどかかります。履歴事項全部証明書(登記簿謄本)については、法人銀行口座開設、社会保険、労働保険、雇用保険の新規適用申請、取引先との取引口座の開設などに使用します。あらかじめ必要な枚数を確認しておき、同時に取得してしまうと便利です。

 

会社設立後の手続きについて

履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を入手したら、会社設立後の手続きを進めることができます。漏れなく忘れずに手続をしましょう。会社設立後に行う手続きとしては、以下のようなものがあります。
  • 税務署への届出
  • 都道府県税事務所への届出
  • 市町村への届出(東京23区については不要です)
  • 社会保険事務所への届出
  • 労働基準監督署への届出
  • ハローワークへの届出 
  • 日本政策金融公庫、自治体などの創業融資の申込 
 

法人化の手続きは専門家にまかせて本業準備に専念するのがおすすめ

以上のように会社を設立するまで、会社を設立した後には様々な手続きが必要です。起業する際にあまりコストを掛けたくないという理由で、これらの手続きを全て自分でするという方法もあります。ただ、専門的な法律手続について書籍を読んで勉強したり、申請書類を書いて提出すると1~2ヶ月の時間を取られてしまいます。そのようなことに時間を取られるくらいなら、本業の準備に専念して時間を使う方が合理的です。

専門家に依頼すれば数日から数週間程度で完了します。自分で全て行った場合、全部で25万円程度の費用がかかりますが、専門家に全て依頼してもだいたい同じくらいの総額で済みます。専門家は電子定款を使用し、印紙代を節約することができるからです。そのため、無理に自分で進めようとせず、手続きについては専門家にアウトソーシングすることをオススメします。時間を節約でき、なおかつ間違いのないスムーズな立ち上げができるでしょう。

また、これから始める事業について、いつでも相談できる専門家パートナーを起業前の段階から味方につけておくこともオススメします。今後、経営上の問題が起きてもすぐに相談できる体制を作っておけば、安心して経営に専念することができます。ガイドの経験上、専門家をうまく活用できる起業家は、起業してから成功する率が高いですよ。
 

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