「事業は人なり」といいます。起業して成功するには、優秀な人材を確保、教育し、彼らのモチベーションを高く保ち業績に結び付けることが必要です。社員や役員が安心して仕事に取り組むためにも、社会保険、労災保険、雇用保険など労務関係の手続きを確実に行いたいもの。起業コンサルタント(R)でもあり、特定社会保険労務士でもあるガイドが起業の労務関係の諸手続について解説していきます。 
 

諸官庁への手続前の準備

社会保険への加入は法的義務です

社会保険への加入は法的義務です

従業員を採用したら、諸官庁への手続の前に、まずは社内での書類整備を行う必要があります。以下の書類を整えましょう。

■労働条件通知書(雇用契約書)
労働者を雇用した場合、労働者に対して労働条件を書面で明示する必要があります。入社日までに作成し、必ず交付しましょう。

労働条件通知書によって通知しなければならないのは、次の事項です。

  • 契約期間
  • 就業の場所
  • 従事すべき業務の内容
  • 始業・終業の時刻
  • 休憩時間
  • 就業時転換
  • 所定時間外労働の有無
  • 休日
  • 休暇
  • 賃金の決定、計算、支払方法、締切日、支払日、昇給
  • 退職金※
  • 賞与等※
  • 退職(解雇の事由を含む)
  • その他相対的明示事項とされている事項※
なお※印は規定があるときのみ

■労働者名簿
労働者名簿を作成することも労働基準法で定められています。社内での管理上も必要となるはず。必ず作成してください。特に決まったフォーマットはありませんが、最低限、法律で定められた次の事項は記載してください。
  • 氏名
  • 生年月日
  • 履歴
  • 性別
  • 住所
  • 従事する業務の種類(常時30人未満の労働者を使用する事業では記入しなくていい)
  • 雇入れの年月日
  • 退職の年月日とその理由(退職の理由が解雇の場合はその理由を含む)
  • 死亡の年月日とその原因
■出勤簿・タイムカード
出勤簿も作成する必要があります。出勤簿については、特に指定の項目や様式はありません。一般的な書式で構いません。タイムカードで代用することも可能です。

■給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
税務上、役員、従業員が記名・押印し、会社が保管しておく必要があります。ただし、会社から受け取る給与や役員報酬が主たる給与ではない役員、従業員については不要です。書式は国税庁のホームページからダウンロードして使用することができます。
※年ごとに書式が異なりますので、ご注意下さい。

■役員報酬の決定
役員についても株主総会などで各人の役員報酬額を決定する必要があります。必ず議事録を作成して保存するようにしてください。

年金事務所への手続き

会社を設立したら、たとえ社長一人の会社であっても社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入しなければなりません。これは強制加入であり法的義務です。5加入しない場合、50万円以下の罰金か、6ヶ月以下の懲役という罰則規定が設けられています。 確実に加入手続を行いましょう。

手続を行う場所は、原則として事業所管轄の年金事務所です。本店所在地と実際の事業所(事務所、店舗など)が異なる場合は、事業所の管轄年金事務所への手続きになります。ご注意ください。管轄年金事務所は日本年金機構のホームページで調べることができます。

なお、健康保険に関しては、業種によっては業界の健康保険組合に加入できる場合があります。健康保険組合ごとに加入条件がありますので、各健康保険組合の事務局にご確認ください。

<書式>
  • 健康保険厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 国民年金第3号関係届書
  • 健康保険厚生年金保険保険料口座振替納付(変更)申出書
書式は日本年金機構のホームページよりダウンロードして使用することができます。ただし、健康保険厚生年金保険保険料口座振替納付(変更)申出書については複写式用紙ですので、年金事務所で入手してください。

<添付書類>
  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 賃貸借契約書の写し(事業所が本店所在地と異なり、賃貸の場合)
  • 出勤簿(タイムカード)
  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 源泉所得税納付書
  • 被保険者・被扶養配偶者の年金手帳
  • 被扶養者を証明する書類(在学証明書、非課税証明書、住民票の写しなど)
<提出期限>
原則として強制適用事業所となって(会社設立)から5日以内