住み始めて気づく問題いろいろ
大満足でスタートしたはずの同居でしたが、実際に生活を始めてみると、徐々に問題が発覚してきたのです。その問題点とは...■同一階の寝室
お母様と子世帯夫婦、両者の寝室を隣に計画したことで、気疲れが生じてしまいました。聞き耳を立てている訳ではなくても、壁1枚隔てただけの場合、音や気配が感じられるものです。その結果、いつ起きた・いつ寝たなど、何となくプライバシーが筒抜けになっている気がし、疲れてしまったのです。
<アドバイス>
世代により生活時間帯は違うもの。プライベートスペースである寝室は、できるだけお互いの気配がしないように配置をするのがベストでしょう。同一フロアの場合、部屋が離れていても、廊下を歩く音やドアの開け閉めで気配は感じるものです。できればフロアを変えるのがおすすめです。しかし、上下階の場合でも音の問題はありますので、部屋の位置関係などの配慮は必要となります。詳しくは以下の記事をご覧下さい。
【参考記事】家族が気付かない、家族の『音』
■キッチン計画
キッチンがひとつであることは、全員の同意を得ていたのですが、キッチンセットを子世帯奥様に合わせた寸法で計画したため、お母様にとってはやや高めの設定となっていました。しかし子世帯ご夫婦は共働きのため、炊事はお母様がメインで担当することに。結果的に、キッチンが使いにくいということがお母様の不満となってしまいました。
<アドバイス>
二世帯同居をする場合、新しい生活のシミュレーションを充分にする必要があります。別々に暮らしていた時は、共働きでもキッチンに立つ人が自分だけであれば、かならず炊事はしていたはずです。しかし、同居により日中在宅している人が居れば、そちらに炊事の負担が行くのは、当然の成り行きとなります。夜遅く帰宅するまで、食事を作らず待つということはしないものですよね。完全同居であれば、このような生活の変化を想定し、事前に家事分担を話し合い、誰が一番よく使うのかを見極めることが大切です。
スケルトンの階段室からキッチンの様子 |
■部屋の使い方とスケルトン階段
日当たりの良い2階に大きなリビングを設けることで、昼間は家に居るお母様が気持ちよく過ごせると思っていたのですが、ひとりでは広すぎると感じたお母様、3階の予備室で趣味の洋裁をしながら過ごすことが多くなりました。その結果、お母様は1階での就寝・入浴、2階での食事、3階でのくつろぎと、3層に渡って行き来することに。
そこで問題になりだしたのが、上記写真にもあるスケルトン階段室。室内を広々と明るくしたかったため、壁を極力作らず、階段室もスケルトンのデザインにしていたのです。そのため、リビングでくつろいでいても、お母様が上り下りする度に気配が感じられ、落ち着かない要因になってしまいました。
<アドバイス>
どの部屋を誰がどのように使うかは重要なポイントです。それにより、人の動線も変わりますので、事前の配慮が異なってきます。計画段階で、生活を想像したり、部屋の広さやイメージを掴むことは大事ということです。また、家族とは言え、お母様とお嫁さんは元々は他人。やはり実の親子のような訳にはいきません。お互い仲良くしつつも、気が休まる時間・空間は欲しいものです。子世帯専用のくつろぎのスペースが確保できないのであれば、せめてリビングスペースは、入り口に人の気配がしても直接ソファーまわりが見えない様にレイアウトするなど、視線をできるだけ遮る工夫をしたいものです。
このように、建築側で少しカバーすればトラブルが回避できた部分も多々あったのではないでしょうか。二世帯同居では、プランニングが大きな鍵を握ります。ぜひ、計画段階で解決できることは、取り入れて頂けたらと思います。
しかし、プランニングだけでは回避できないのも事実です。次ページでは経験者からのアドバイスをお伺いします。