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この法則から、今後起こりうる事故・不祥事が見える! 失敗学が予測したJR西脱線事故(2ページ目)

小さなミスの積み重ねが大惨事につながった!?JR西日本の脱線事故について、畑村洋太郎氏が提唱する「失敗学」の視点から考えてみました。失敗学をもっと学びたい方向け講義情報もあります。

西島 美保

執筆者:西島 美保

社会人の学びガイド


1.失敗は予測できる


畑村氏は著書「失敗学のすすめ」の中で、失敗は予測できると言っています。
「大きな失敗が発生するときは、必ず予兆となる現象が現れます。(中略)その裏には「まずい」と感じた程度の失敗とは呼べないものも含めて三百件もの小失敗があるからです。」(「失敗学のすすめ」P.75より)

今回のJR西日本の脱線事故では、運転手が前の停車駅での40m(実際は乗客などの証言から60mだったと発表)のオーバーランを車掌と口裏合わせをした上で「8メートル」と報告したと報道されました。失敗学によれば、この小さなミスは大惨事の予兆の一つだったと考えられます。

虚偽の報告をせざるをえない企業体質。
ミスをした従業員がいた場合、再教育というより懲罰とも言える日勤教育を受けさせ、ミスを正しく報告できない企業体質が問題視されています。

JR西日本では、ミスをした個人を徹底的に責め、そのミスを会社の責任とせず従業員個人に責任転嫁(手当減額、日勤教育受講)しました。畑村氏が指摘する「失敗は批判されやすい」という特性そのものです。

そのミスがなぜ起きたのか、再発を防ぐために会社としてはどのように対応するか、といったミスの分析がされず失敗が生かされなかった結果、ミスを許さない企業体質が生まれ、今回の大きな事故につながった要因の一つとも考えられます。


2.この共通点に当てはまる企業は要注意!


日本の企業が引き起こした致命的失敗の共通点として畑村氏は下記を挙げています。
1.技術の成熟
2.大増産、もしくはコストダウン対策やリストラ策がはかられている
(「失敗学のすすめ」p.208より)

日本の電車は安全面やスピードにおいて、世界から羨望されるほど、信頼性が高い技術を備えていました。JR西日本は、実際に運行している電車の本数や規模などから技術は成熟していると見られてもおかしくないでしょう。その技術を過信し、大増産及びコストダウン、リストラによる利益追究が行われていましたから、この脱線事故は、まさに失敗学の致命的失敗の共通点そのものを備えていたのです。

「このような共通点を持った業界、企業を探せば、失敗は予測出来る」と畑村氏は言っており、実際にこのような危うい状態にある企業はかなりあると思われます。

JR西日本の経営状況を「失敗学」に当てはめて分析すれば、この事故は予測できたのではないか、と感じました。起こるべくして起こった事故であり、今まで起きなかったのが奇跡だったのかもしれません。


失敗をプラスのイメージに変えて行くために


失敗は出来ればしたくないものですが、人間のすることには失敗がつきもの。
「大失敗の前には、予兆となる現象が現れる」「失敗は批判されやすい」などという失敗の特性や、その有効利用の方法など、失敗に関する知識を知る人が増えることこそが、失敗をマイナスとしてとらえがちな日本の風潮を変えていけるのだと思います。

もっと失敗学について知りたい、学びたい方はこちら(失敗学に関する著書・団体・講義情報)をご覧下さい。

【関連サイト】
・くじけそうになったら読むクスリ
・人生はいつでもやり直せる!
・家庭の事情であきらめた進学。30代、やっぱり美大に行きたい!
・迷った時…。悩みをうまく解決する方法
・成功者に共通すること




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