マーケティング/マーケティング事例

異例の大ヒット!今なぜ『蟹工船』なの?(3ページ目)

80年前に発表された小林多喜二氏の『蟹工船』が今年に入って異常な売れ行きを記録しています。プロレタリア文学の最高峰と言われる作品ですが、今なぜ『蟹工船』なのか?その秘密に迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

現代と酷似する『蟹工船』の背景

現代に働く人々は将に『蟹工船』の中の労働者を連想させる。
あらすじを読むとこの『蟹工船』はおよそ80年前の作品ですが、描かれた背景が現代と何ら変わりないということに驚かされます。

現代でも企業は利益を上げる一方で、労働力を非正規雇用者に頼り、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員を最大限に活用するものの、労働者の立場を保全することなく、売上が落ちれば人員整理を行って自社の利益を守るなど、人を人として扱っているのか疑問になるような状況も散見されます。

また、先日派遣業許可を取り消された人材派遣業者においては、ただでさえ少ない派遣賃金から強制的にデーター装備費名目で費用を天引きしたり、会社のユニフォームを強制的に購入させたりと、弱い立場の派遣社員から搾取とも言える活動が明らかになりました。

このような企業の搾取によって、現代は働いても働いても生活が苦しいワーキングプアという問題がクローズアップされ、過酷な労働や苦しい経済状況から自ら命を絶つ人も後を絶ちません。

将に現代でも多くの人たちが“蟹工船”の中で働いていると言っても過言ではない状況なのです。

このような観点から『蟹工船』は80年前の作品と言っても、現代の状況とオーバーラップすることも多く、現代の人々の共感を呼んで、今一度80年前の労働者の姿を確認しようと『蟹工船』を手にする人が続出しているということなのです。

それでは最後に今回の『蟹工船』のヒットに見るマーケティングのヒントをまとめていきましょう。次ページへお進み下さい!
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