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異例の大ヒット!今なぜ『蟹工船』なの?(2ページ目)

80年前に発表された小林多喜二氏の『蟹工船』が今年に入って異常な売れ行きを記録しています。プロレタリア文学の最高峰と言われる作品ですが、今なぜ『蟹工船』なのか?その秘密に迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド


蟹工船のあらすじ

『蟹工船』は海で働く労働者に対して監督官の人とも思わない仕打ちをありのままに描いた衝撃の作品。
『蟹工船』の舞台は1920年前後の北海道。函館港を出港し、カムチャッカ沖でカニ漁を行って船内でカニの缶詰を加工する工船“博光丸”での出来事を描いています。

異様な臭気が漂い息苦しささえ感じる船底に押し込められた無数の労働者達。監督官は人を人とも思わぬ仕打ちで過酷な労働に従事させ、少しでも多くの水揚げを上げるために働きの悪い労働者には容赦なく暴力をふるってでも、ノルマを達成させることに懸命になっています。監督官の目的は“いかに利益を上げるか”であり、利益を上げるためには労働者が疲れようが、病気になろうがお構いなしに過酷な労働を強制し、時には領海を侵犯したり、他の蟹工船が仕掛けた網を横取りしたりと法を犯してでも手段を選ぶことなく利益を追求していきます。

一方で蟹工船を運営する資本家は、カニの缶詰という高級品を販売して高い売上を上げているにもかかわらず、労働者への報酬は微々たるもので、将に労働者から搾取するだけ搾取しておいて、利益のほとんどを懐に入れている始末。

そして、仕事を続ける内に自分達が搾取されていると気付いた労働者達は一致団結して待遇改善の要求をしていくのですが、エスカレートした監督官の暴力や国家権力の壁にぶち当たることになるのです・・・・・・

あらすじを読んで、何か感じることはないでしょうか?実のところ、この『蟹工船』のストーリーは80年前の出来事とは思えないくらい、現代と多くの共通点が浮かび上がります。その共通点が今回の異例の大ヒットに繋がっていくことになるのです。

次ページでは『蟹工船』と現代の労働事情の共通点について見ていくことにしましょう。
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