マーケティング/マーケティング事例

期待させると逆に満足度が下がるって本当?(2ページ目)

企業がマーケティングにおいて顧客に期待を抱かせることは当然の活動ですが、場合によっては逆に顧客の満足度を低下させることに繋がる場合があります。果たしてどんな場合顧客の満足度は低下するのでしょうか?

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

待ち時間の提示は余裕を持って
待ち時間の提示は余裕を持って伝えることが顧客の満足度向上に繋がる
前の例はプレゼントを提供するという行為に対して事前に知らせるかどうかで顧客満足度が変わってくるという事例でしたが、同じ結果でも企業の対応で顧客の満足度に差が出る事例が他にもあります。

待ち時間の提示は余裕を持って伝えよう

みなさんは銀行の窓口やレストランに行った時に“只今○○分待ちです”という表示を見かけたことはないでしょうか。これは企業側が親切に顧客に待ち時間を知らせるための対応なのですが、この待ち時間の表示についても顧客の満足度に大きな影響を与えますので注意が必要です。

たとえば、あなたが銀行の窓口で10分待ちという表示を見て20分待たされたらどのような気持ちになるでしょうか?逆に5分待ちで済んだとしたら・・・

人は誰しも10分待ちという表示をみれば10分後に自分の番がくることを期待し始めます。ここで10分という時間が顧客の中で基準になるわけです。この10分より早ければ期待を上回って満足度が向上しますし、逆に10分を大幅に超えれば不満に思います。ということはこれまでの経験で10分程度の待ち時間が予測される時は企業側とすると余裕を持った待ち時間の提示をすることにより、不満足を感じる顧客を減らすことが可能になります。

また、何もこのような事例は表示板を設置して待ち時間を知らせる企業だけの問題ではありません。どのような企業にとっても起こりうる問題です。たとえば、お客様が問い合わせの電話をしてきた場合に解決に5分程度の時間が予測されたとすると、ある担当者はお客様を失望させないために時間を短めに、たとえば『2、3分ほどお待ちいただけるでしょうか?』と対応する場合があるでしょう。他の担当者は余裕を持って、たとえば『10分ほどお時間をいただけるでしょうか?こちらの方から折り返しお電話差し上げます』と対応するかもしれません。

これらの二通りの対応に対して、同じ5分という解決時間でも顧客の満足度は大きく変わってきます。前者では満足度を高めようとする行動が裏目に出て『2、3分といったのに5分も掛かって倍近く待たされた』と顧客は思うでしょうし、後者では顧客の期待度をあらかじめ低くすることによって『10分と言っていたけど半分の5分で済んだ』と思うでしょう。いずれにしろ顧客に高いハードルを持たせることは企業側としてはそれに応えられる事は当然として、もし応えられなければ、満足度の低下というダメージを負う事になります。

顧客は事前に情報を与えられると自分の中で勝手に基準を設けてしまいます。事前に告知した企業のサービスがその基準を超えるものであったとしても大幅なものでなければ顧客は提供されて当然と感じますし、基準を超えられなければ失望し不満を感じてクレームの素になってしまいます。

このような対応の違いによる顧客満足度の変化を知っていれば、プレゼントのような特典を付与するサービスであれば事前に知らせることなく実施したり、待ち時間の提示のような顧客に情報を提示するサービスであれば最悪の事態を想定してお知らせするなど、顧客に過度の期待を抱かせないことによって満足度をある程度コントロールすることが可能になります。


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