マーケティング/マーケティング事例

商品ラインナップを追加して売上が下がるミステリー(2ページ目)

普通は新商品を市場に投入すれば売上は上がるものと思いますよね。ところが逆に売上が下がるとしたら・・・そんなマーケティングのミステリーに迫ってみました!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

第3のビールによって食われたビール・発泡酒市場

ビール業界のカニバリゼーション
ビール業界はカニバリゼーションに悩まされている!(出典:ビール酒造組合)
ビール酒造組合が2006年1月17日に発表した2005年のビール類の総出荷量によると、低税率・低価格で出荷を伸ばしてきた第3のビールの出荷量が前年の3.1倍にまで膨らんでいます。一方でビールの出荷量は1994年の713万ケースをピークに年々減り続け、2004年にはピークの半分程度の387万ケースまで落ち込みました。低価格である新商品の第3のビールが主力商品であるビールを食いつぶしていくカニバリゼーションの典型的な例です。

また、このビール業界でスーパードライを引っさげてシェアトップをひた走るアサヒビールでさえ、カニバリゼーションを気にして、発泡酒市場への参入は静観を決め込んでいたという話があります。1994年サントリーの「ホップス」により新たに開かれた発泡酒市場は、1998年のキリンビール「淡麗<生>」の投入により市場が急拡大。キリンビールに遅れること3年、アサヒビールは2001年にようやく「本生」というブランドで発泡酒市場に参入しました。ところが、投入直後の売上でスーパードライが10%以上減少するなど、やはりカニバリゼーションに悩まされています。

どの業界でもカニバリゼーションは存在する!

何もカニバリゼーションはビール業界に限った特別の現象ではありません。どの業界においても発生する可能性があるので注意が必要です。たとえば、住友不動産では「新築そっくりさん」というリフォームに力を入れていますが、新築に比べて割安なリフォームは、新築物件の売上を食いつぶす可能性がありますし、先日一眼レフからの撤退を発表したニコンなどは安価なデジタルカメラの普及により、従来の主力商品であった一眼レフカメラの売上が食いつぶされた結果と言えるでしょう。また、マクドナルドにおいても、新たな顧客獲得のためのマーケティング戦略として100円マックを投入しましたが、顧客単価の高かった既存客が100円マックに乗り換え、売上を減少させた事例などもカニバリゼーションが発生した典型的なケースです。

新規製品の投入を検討している企業は、新規製品を投入すれば売上が上がるという安易なマーケティング戦略を立てるのではなく、カニバリゼーションに十分注意しながら、慎重に計画を立てていく必要がありますね。

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