マーケティング/マーケティング事例

50万円値上げして10倍売る技術とは?-『レクサスSC』に見るメガヒットの舞台裏

トヨタレクサスの人気が爆発しています。レクサスSCは旧ソアラですが、50万円の値上げをして、発売1ヶ月で10倍の売上を記録しました。このマーケティングの裏にはどんな事実が存在しているのか?探ってみると・・・

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

爆発した「レクサス」人気!

レクサス
発売後、人気爆発のトヨタレクサス
トヨタ自動車が満を持して投入した高級車ブランド「レクサス」は8月30日のオープンから好調な販売が続いています。販売車種はGS、SC、ISの3車種ですが、それぞれ発売後1ヶ月は1100台、100台、1800台の月間販売目標に対して4000台、600台、3500台と2倍から6倍の台数を販売するなど幸先よいスタートを切った形になります。

この中で6倍という想定外の販売台数をたたき出したのがSC。このSCは実のところレクサスブランドの新モデルではなく、以前からトヨタが発売していた「ソアラ」という車種なのですが、変速機を改良するなどマイナーチェンジを行い、50万円値上げして680万円という思い切った価格設定を行いました。

このSCはソアラ時代、2000ヶ所ある全国の販売店で月間平均58台という販売実績しか上げられませんでした。ところがレクサスSCとなるや50万円値上げしても150ヶ所のレクサス販売店で月間販売台数が600台とまさに10倍以上の売れ行き。

このレクサスSC(旧ソアラ)の劇的な販売数変化の原因はどこにあるのでしょうか?今回はこのマーケティング戦略の裏側に迫ってみたいと思います。

ソアラ時代の販売戦略 vs. レクサス店での販売戦略

ソアラはレクサス店で販売される以前はトヨタ店、トヨペット店で取り扱われ、2004年の販売実績では前述したように月間平均58台でした。2001年にフルモデルチェンジしたこの車種は、次回モデルチェンジの目前というこもとあり、販売促進に消極的。また、630万円という高価な価格も手伝い、ショールームに展示する販売店も稀有でした。20種類以上の車種を取り扱う販売店ではソアラの優先順位は低かったと言えるでしょう。結果として、ショールームで販売員は来店客に薦めることもないので、ソアラの購入者は代々のソアラファンか、車雑誌などを見てどうしても買いたい指名買いの顧客が中心だったのです。

これに対してレクサスでは当初販売する車種はGSとSCの二種類のみ。多様なメディアに取り上げられるなど話題性もあり、多くの人がレクサスの販売店に足を運んでいます。当然来店するお客様はGSかSCに興味を持ったお客様。販売員とすれば車種が2種類だけなので車の特徴も全て把握しているし、その良さを確実にお客様に伝えることができる。ですから自信を持って来店客にSCを薦めることできた。これが一つの大きな要因と言えます。

このような販売員の育成は、トヨタがレクサスブランドを日本で展開するに当たって設立した専門の研修施設、「富士レクサスカレッジ」で数ヶ月にわたって実施されました。この「富士レクサスカレッジ」ではセールススタッフから受付に至るまで販売に関わる者全てに対してレクサスで販売する車の特徴やブランドの重要性、また挨拶、立ち振る舞い、言葉遣いなど顧客に対するもてなし方法に至るまで多岐に亘る社員教育を徹底。このような教育の行き届いたセールススタッフのきめの細かいサービスは顧客に感動をもたらし、顧客が心地よく商談へ望めたという事実も見逃すことはできないでしょう。

それだけではない50万円値上げして10倍の売上を上げた秘密は次ページで!
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