マクロ環境を効率的に分析する「PEST」

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マクロ環境は企業のマーケティング戦略に多大な影響を与える


企業の業績は取り巻く環境に大きく左右されます。企業は外部環境をよく知った上で、コントロール可能な自社の内部環境をコントロールの及ばない外部環境に適応させることによって、どんな環境においても目標とする業績を実現することが可能になります。

この企業を取り巻く環境のうち、最も事業に与える影響力の大きいものが「マクロ環境」。企業のマーケティング担当者は、このマクロ環境がどのように変化しているのか、そのトレンドを分析し、適切なマーケティング戦略を立てていく必要があります。

ただ、マクロ環境といっても範囲は膨大なので、無駄のない調査を行わなければなりません。そんなマクロ環境を効率的に分析するために活用される分析手法が「PEST分析」。PEST分析とは4つの要素の頭文字を取って名付けられた分析手法であり、P=Politics(政治面)、E=Economy(経済面)、S=Society(社会・ライフスタイル面)、T=Technology(技術面)という4つの分野にマクロ環境を分割して、自社が受ける影響を分析していく手法です。

■PEST分析

P:政治・法律面からの分析

まずは最初のP、つまりPolitics分野においては、政治や法律面からの環境分析を行っていきます。法律や規制、税制などは国や地方自治体レベルの決定事項であり、一企業の力の及ぶところではありません。しかも、企業活動に多大な影響を与えるという特徴を持っています。

たとえば、医薬品のネット販売は2009年施行された改正薬事法で規制され、一部の医薬品のネット販売が禁止されました。この法律の施行により、ネット専業の医薬品販売業者は月の売上が半減するなど大きな影響を受けました。この規制に不服を申し立てたネット専業の医薬品販売業者は国を相手取り裁判を起こします。そして、2013年1月には勝訴が確定し、再び医薬品をネットで販売することが可能となり、業績を回復させることができるようになったのです。

これらの事例からもわかるように、企業は法律や税制の改正動向を注視し、新たな法律が施行された場合は、自社にどのような影響を与えるのかを事前にシミュレーションしておく必要があるといえます。

具体例として、今後多くの企業に影響を与える政治・法律的要因として消費税の引き上げが挙げられます。消費税の引き上げは全ての企業にとって平等な環境変化ですが、この変化で売上が上がる企業や、逆に売上を下げる企業が出てくることが予測されます。

消費税の引き上げは自社の業績によい影響を与えるのか、それとも悪い影響を及ぼすのかといった自社の業績に与えるインパクトを事前に調査・分析して対応策を考えておけば、売上の減少を軽微なものに食い止めることもできるでしょう。さらに、この環境変化を機会に売上を向上させることも可能になるというわけです。

E:経済面からの分析

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経済面からの分析は経済成長や個人消費、株価、為替変動などに注視しよう


続いてはE、つまりEconomy分野における環境分析を行います。この分野の分析では経済成長率や個人消費の動向、株価や金利、為替相場の推移など経済に関わる環境を分析していくことになります。

たとえば、為替相場などは毎日変動していますが、輸出入関連の企業であればこの為替相場の変動に伴って売上や利益が大きく変わることになります。そのため、こまめにチェックしたり、将来の為替水準を予測したりすることが不可欠になってきます。輸出入に関連しない企業においても、日本は石油をはじめ小麦や大豆などの資源のほとんどを輸入に頼っていますので、円安はコスト高として跳ね返ってくる要因となり、為替の大まかな動向には注意を払う必要があるでしょう。

このように経済面からのマクロ環境分析は、経済成長や個人消費、為替相場などの経済指標の動向を常にチェックし、事前に対応策を講じることによって、経済変動リスクを最小限に抑えたり、経済要因からのビジネスチャンスをとらえたりすることができるようになるのです。

S:社会・ライフスタイル面からの分析

そして3番目はS、すなわちSociety分野の分析になります。この分野の分析は、社会環境や消費者のライフスタイルの変化などに関する分析を行ない、自社のマーケティング戦略に役立てていきます。たとえば、日本において現在は少子高齢化という現象が社会問題化していますが、このような社会問題は自社のビジネスにどのような影響を与えるのか考えてみましょう。

この少子高齢化という現象は、もちろん高齢者を対象としたシルバービジネスを行なう企業にとってはビジネスチャンスになりますし、一方で子供を対象にビジネスを行なっている企業にとっては市場縮小という脅威に晒されることになります。

事前にこのような社会環境が変化することが分かっていれば、シルバービジネス業界に属する企業は更なる売上を上げるための準備をすることもできますし、子供関連の事業を営む企業は多角化を行うなど将来のリスクを軽減させることも可能になるでしょう。

T:技術面からの分析

それではPEST分析の最後としてT、すなわちTechnologyの分野についてみていくことにしましょう。技術革新によってビジネスが大きく変わった歴史を私達はいくつもみてきました。たとえば、携帯電話やIP電話の登場により固定電話の利用は減少の一途を辿っていますし、ビデオテープはDVDに、そしてDVDもBlu-ray Diskに取って代わられました。ですから、企業のマーケティング担当者は、常に最新の技術に関してアンテナを張っておく必要があるのです。

インターネットも、ビジネスを大きく変えた技術のうちの1つです。今もなお進化を続けており、今後も引き続き企業にとっては最も注視しなければいけない技術と言えます。インターネットの分野においては日進月歩で技術革新が行なわれており、利用者の規模も急拡大を続けてきています。

このインターネットの技術を利用して、企業は直接販売に乗り出して利用者の利便性を高めたり、劇的にコスト削減を図ったりすることもできます。また、SNSなどを活用して顧客とより親密な関係を築いてファン顧客を増やし、リピート購入に繋げて業績を飛躍的に向上させるなど、大きなインパクトを事業に与えた企業も枚挙に暇がありません。

この技術分野の分析では、最新の技術に対して「自社のビジネスにどのように取り入れることができるのか」、そして「取り入れた場合はどのような影響があるのか」を調査・分析して自社のマーケティング戦略に組み込んでいく必要があるというわけです。

海外進出の際にも活用されるPEST分析

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海外進出の際にもPEST分析は活用できる


これまで国内で事業を行う企業のマクロ環境分析事例をお伝えしてきましたが、このPEST分析は何も国内における外部環境分析を行うためだけのものではありません。海外市場でビジネスを展開するグローバル企業もPEST分析を活用して成功確率を高めるマーケティング戦略を立てることができます。多くの企業が海外事業所の開設や工場建設を予定していますが、このような海外進出を決定する前に行なわなければならない分析が進出予定地のPEST分析というわけです。

海外市場のPEST分析においても、同じように「現地の政治体制はどうか?」「経済規模や成長率は?」「どのような文化を持っているか?」「社会的なインフラが整備されているか?」「技術の程度はどうか?」など詳細にわたって調査・分析していきます。この進出予定地のPEST分析により、カントリーリスクを事前に把握し、海外進出の成功率を高めることができるのです。

マーケティングの世界的な権威であるコトラー教授は「調査をせずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場に参入しようとするものだ」と語っています。その市場調査の第一歩となるのがマクロ環境の調査・分析であり、マーケティング戦略を成功に導くためには欠かすことのできないものと言えるでしょう。

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