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【連載】クレームの心理学 お客様を怒らせる2つの引き金

クレームの原因が、私たちの過失であろうとお客様の誤解であろうと、私たちはお客様の怒りを静め、和解に導かなければなりません。そのためには「怒り」を理解することが一番の近道です。

執筆者:鹿俣 之信

人はなぜ怒るのか

私たち人間には「怒り」という感情があります。失礼な扱いをされたとき、侮辱されたとき、行動や思考を邪魔されたとき。そんなときに「怒り」が発生します。

クレームを出すお客様は怒っています。クレームの原因が私たちの過失であろうが、お客様の誤解であろうが、私たちはお客様をなだめ、和解に導かなければなりません。

お客様の怒りを静め、和解に導くには、「怒り」の心理的メカニズムを理解することが最も重要です。怒りが発生する仕組みを理解すれば、怒りを静めるためにはどうすればよいかが見えてきます。

では、さっそく「人はなぜ怒るのか」について考えてみましょう。

コントロール感

私たちにとって、物事をコントロールしているという感覚(コントロール感)を持つことは、非常に重要なことです。コントロール感とは、自分が行動することによって、望み通りの状況を作り出せるという感覚のことです。簡単に言えば、自分の望み通りにことが運ぶという感覚です。

人は、コントロール感があると、自分自身に満足することができます。逆に、コントロール感がないと、自分自身に満足できなくなります。

私たちが何かをしようとしたとき、他人の行動によってそれができなくなった場合、コントロール感が失われてしまいます。人は、コントロール感を奪われそうになったり、奪われてしまったりすると、状況をコントロールできないことに対して「恐れ」や「不安」を感じ、コントロール感を取り戻そうと防御反応を示します。それが「怒り」です。要するに、自分の思い通りにならないと頭にくるのです。

お客様を怒らせる引き金のひとつは、予期せぬ出来事によって、お客様のコントロール感が奪われてしまうことにあります。

例えば、

今日届くはずの商品が届かない(予期せぬ出来事) → 届いたらすぐに使うつもりだったのに(コントロール感を失う) → 「届かない」状況を自分ではどうにもできない(不安や恐怖) → 頭にくる(防御反応)

店員に失礼な応対をされた(予期せぬ出来事) → 望んでいるような扱いをされない(コントロール感を失う) → 自分は大切に思われていないのでは?(不安や恐怖) → 頭にくる(防御反応)

お客様の怒りを静め、過ちを許してもらう(あるいは誤解を解く)には、お客様の奪われたコントロール感を回復させてあげる必要があります。

■ちょっとコラム

動物の世界では、群れのなかでの順位が高いほど、ナワバリが大きいほど自由に行動することができます。つまり、より大きいコントロール感を得られます。人間の世界では、社会的な地位の高さや、権限をもって行動できる領域の広さが、コントロール感の大きさになります。怒りはコントロール感を維持するための防衛行動だと言えます。

次は、お客様を怒らせてしまう2つめの引き金「自尊感情」について → 次へ

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【連載】クレームの心理学
第1回 クレーム応対の極意
第2回 お客様を怒らせる2つの引き金
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