雛人形の飾り方って? 自分が男雛・女雛だったら右左どちらの位置に並ぶ?
雛人形の飾り方で迷いやすいのが、内裏雛(男雛と女雛)を並べるときの位置関係。「結婚式では新郎の左手に花嫁だから……」「私はいつも右側だから……」など、自分に置き換えて考える人も多いようです。では質問です。「あなたがもし内裏雛の立場なら、左右どちらの位置がいいですか?」
自分なりの答えを念頭におきながら続きをお読みください。雛人形の並べ方事情とともに、あなたの深層心理も分かります。
<目次>
「男雛が右/その左手側に女雛」も「男雛が左/右手側に女雛」も正解
実は、内裏雛(男雛と女雛)の飾り方には2通りあります。「男雛が右、その左手側に女雛」に並べるのが一般的ですが、その逆もあるのです。また、日常の何気ない男女の並び方にも微妙な深層心理が働いており、いつの時代にも、男と女の機微が垣間見えるようです。なお、この記事中では「向って左側、向って左側」と客観的な表現ではなく、自分に置き換えて考えやすいように「右、その左手側」と主観的な表現にしています。
雛人形の並べ方は「男雛が左、その右手側に女雛」でした
古来、日本には左上位という考え方があります。「天子南面」という言葉があり、皇帝などの偉人は南に向いて座り、北面は臣従することを意味しています。そして、南に向いたときの日の出の方角(東。つまり左手側)が上座で、日没の方向(西。つまり右手側)が下座とされるようになりました。この左上位の考え方は雛人形にも当てはまり、本来は「男雛が左、その右手側に女雛」に飾ることが当然でした。
ちなみに、この左上位の考えは「左大臣と右大臣では左大臣のほうが上位」、「地図では東=右、西=左なのに、京都では(御所を中心としてみるので)東=左京、西=右京である」など、日本にはいろいろな例があります。
(しかしその後は、右のほうが優れているという意味合いのほうが多くなりました。「右に出るものはいない」「右腕になる」「右にならう」などは右が優れた意味。「左前」「左遷」などは左が劣るという意味。世界の言語学的にみても、右のほうが優勢という例が多いそうです)
現在、雛人形の並べ方が「男雛が右、その左手側に女雛」なのはなぜ?
現在、雛人形売り場を見てみると、そのほとんどが「男雛が右、その左手側に女雛」。当初とは逆の配置になっているのはなぜでしょう?それは、プロトコール(国際儀礼)が右上位だったため、西洋化の進む日本でも右上位を取り入れるようになったからです。
雛人形の並べ方が右上位になったのは昭和初期で、一説によると、昭和天皇の即位の礼が催されたときに、プロトコールに従い「天皇が右、その左手側に皇后」に並ばれたことからきているとか。また、かつて掲げられていた御真影(天皇皇后両陛下のお写真)もプロトコールに従った並び方だったため、関東の雛人形業界では、それまでとは反対の並び方にしたそうです。
しかし、全国一律に変わってしまったわけではありません。現在でも、伝統を重んじる京都などでは、本来の「男雛が左、その右手側に女雛」とするところが多く見られます。また、古い雛人形は、古来の伝統に則り左上位に並べることが多いです。
雛人形の並び方から考える、カップルの位置関係
これで雛人形の並べ方事情は分かりました。では、あなたは左右どちら側に並びたいですか? 雛人形の並べ方に理由があるように、男女二人の並び方にも深~いワケがあるそうです。冒頭で、雛人形の並べ方で迷ったときに自分達の場合を思い出す方が多いと述べましたが、皆さんは、内裏雛のようにプロトコール(国際儀礼)に従って並んでいるわけではなく、無意識に並んでいるはず。ところが、男女の並び方は、現代の内裏雛と同じ「男性が右、その左手側に女性」というパターンが多いのが実状です。実際に街で観察してみてください。何気なく並んで歩くカップルの多くが「男性が右、その左手側に女性」。もちろんその逆のカップルもいますが、この種の調査では大体7割以上が「男性が右、その左手側に女性」になるそうです。
ただ、いずれのカップルにしろ、いつも同じ位置関係になっているはず。普段と逆の位置関係になると、なんとなく違和感があって落ち着かないからです。これは無意識に自分が落ち着くほうを選んでいるということ。そこには深層心理が表れます。
並び方でわかる男女の深層心理
こうした行動は、心理学的にこのように言われています。■パーソナルスペースとの関係
人には他人に侵されたくない、自由にしておきたい領域「パーソナルスペース」というものがあり、この領域は右側の方が広く、その領域がなくなると立場が弱くなってしまいます。もし左側に人がきても、右の領域は自由なので立場は強くなります。
■利き手との関係
利き手で敵を倒し、反対の手で相手(隣の人)を守る! 心理学的に、利き手を自由にすることは相手を支配したいという深層心理の表れです。
右利きの場合(左利きはこの逆です)
- 好んで相手の右側にくる人(利き手である右手を自由にする人)は、相手を支配しようとする意識が強い
- 好んで相手の左側にくる人(利き手である右手を不自由にする人)は、相手に依存したがる傾向がある
ちなみに、男性が右の「亭主関白」タイプでも、その左手側にいる女性の利き手の状態でこう分析するそうです。
- 手をつないでいる状態だと、女性が利き手(右手)を預けているので相手に依存している
- 腕を組んでいる状態だと、相手を捕獲したという支配力が働くので「隠れカカア天下」タイプ
雛人形を飾る壇を「雛壇」といいますが、披露宴の雛壇に座る新郎・新婦は、プロトコールに従って「男性が右、その左手側に女性」ですから、現代の内裏様を飾る時に参考にしても差し支えありません。ですが、自分達の日常を反映させると反対になることもあるわけです。
もし、内裏雛カップルが自由に位置を選択できたとしたら、どちらを選ぶのでしょうか? ちなみに、刀は左側にあり右手で扱うものですし、男雛は右利きだと仮定すると……などと内裏雛のキャラクター設定をしてもいいのですが、もともと私達の身代わりとなって穢れを落としてくれる人形だったということを忘れてはいけません。
雛人形の由来、ルーツは身代わり
雛祭りとは、中国から伝来した五節句のひとつで、「上巳(じょうし、じょうみ)の節句」「桃の節句」とも呼ばれています。上巳とは、3月の最初の巳の日という意味で、邪気に見舞われやすい日とされていました。中国では古くから水辺で穢れを払う風習があり、それが平安時代頃に日本に伝わりました。もともと日本には「形代(かたしろ)」という身代わり信仰があったため、紙や草の人形(ひとがた)で自分の体をなでて自分の心と体の穢れを移しとった後、その人形を川に流す「流し雛」が行われるようになりました。
また、平安時代の宮中や貴族の女の子の間で「雛(ひいな)遊び」という紙製の人形(にんぎょう)を使ったままごと遊びが盛んになり、 やがてこれらが結びついて男女一対の紙製「立雛」が誕生し、時代と共に変遷しながら、江戸時代には豪華な雛人形を雛壇に飾るようになりました。
旧暦の3月3日は、新暦でいえば4月半ばにあたります。この頃には古くから邪気払いに使われてきた桃の花が咲くことから「桃の節句」とも呼ばれ、雛人形を飾る「雛祭り」として親しまれるようになっていったのです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
伝統的な雛人形ですが、内裏雛の並べ方と男女の位置関係には、奥深いものがありました。そんな話を思い出しながら飾りつけをしてみたり、雛人形を眺めてみたりすると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。
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