洗練のプロポーションは罪
発売前に福與チーフブレンダーと話をする機会があった。十数年の原酒から数十年の古酒まで幅広く厳選したとのことだったが、印象に残ったのは「飲み心地のよさ」という言葉だ。個性の強いミズナラ原酒をどう手なずけたのだろうか、と気になった。そして今日口にしてみて、なるほどと納得する。
まず色。やや赤みがかった琥珀色。そして香り。グラスに注いだとき、バラのような香があたりに広がったような気がした。ノージングするとまた違った。知っている神社仏閣系は意外にも抑えられ、香木のような感覚はあるもののシナモンや上品な柑橘系の香りが心地よく、そちらにそそられていく。柑橘系の香りだけで十分魅了されてしまう。
口に含むと、ほどよい甘みが膨らみ、伽羅のような香木、次第にナッテイな口中香が重層的な熟成感のある旋律を奏でる。それでいて爽やかな華やぎに満たされるのだ。ココナッツ様の口中香は古酒が醸し出すものだろう。
余韻がまた好ましい。歌うような香木の感覚にナッティさがリズムを支え、弦楽四重奏を響かせる。
香りと味わいはオーケストラの交響曲で、それに満足していると余韻は弦楽四重奏である。なんてクールでセクシーなんだろうと感嘆した。
シングルモルトは一杯の満足感である。でもこれは違う。満たされながら、また口にしたくなる。これが福與チーフの「飲み心地のよさ」、抜群のプロポーションだったのだ。
あえて苦言を呈するならば、洗練の罪。限定1,000本の「飲み心地のよさ」は罪だね。でも、¥25,000はリーズナブル過ぎるとわたしは思う。
「山崎シェリーカスク2010」同時発売
山崎シェリーカスク2010 |
樽材はスパニッシュオークと呼ばれるスペイン産コモンオーク。シェリー酒のオロロソを3年間貯蔵した樽に山崎モルト原酒を熟成させたものだ。
●色:茶褐色
●香り:レーズン、チョコレート、アーモンド
●味わい:甘酸っぱい、ビターチョコレート
●余韻:甘酸っぱさ、ほろ苦さ、心地よい伸び
凝縮されたリッチな果実香、シェリー樽熟成ならではの甘み、酸味を十分に堪能できる。
どちらも限定なのでそうそうお目にかかれないだろうが、もしバーでボトルを見つけたならば是非味わっていただきたい。
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