14時からカクテルを愉しめる
カウンターはチーク材の1枚板。道路側は和の格子の内装 |
地下鉄東西線神楽坂駅1番出口の道を渡ってすぐのところに店はあるから、とても便利がいい。
最近早い時間からはじまるバーが少しずつ登場するようになり、とても嬉しい。いま、大人の暮らし方はさまざまにある。企業の枠組みの中で働いている人たちばかりではない。また団塊の世代がリタイアし、余暇を持て余している高齢者は多い。
フリーのわたしなんぞ、何日もかかった重たい仕事の最終を午前中にあげることがある。遅いお昼を食べた後、少しばかりのカクテルとウイスキーで心を潤し、そしてシエスタへ、と思う。そんな平日に14時からはじまる店はありがたい。
「そういう利用のされ方が理想ですね。また主婦の方々がランチ後に、軽くお酒を愉しんでいただけたらありがたい」
24時には店を閉める。日付をまたいで2時、3時まで営業するバーも多いが、そうしたディープな酔いの世界もあれば、彼のように明日の活力となるようにサラッと飲んで、電車で帰っていただこうと考えるバーもある。どちらも必要だ。
若くしてコンペティションで活躍
新橋氏は長年、ハードシェークで知られるカクテル・アーティスト上田和男氏(銀座の名店『テンダー』)の右腕を努めてきた。資生堂の『ロオジエ』、そして『テンダー』と長年、上田氏の下でバーテンダーの土台づくりをした。わたしは若かりし頃の彼のイメージを引きずり過ぎていたのだろう、今年41歳と知って唖然とした。新橋氏は23歳で、フィンランディア・ウオツカのカクテルの世界大会で優勝した。その時、凄い若者が登場したと驚き、しばらくしてあるカクテル・コンペティションではわたしの目の前で見事な技術を披露してみせてまた最優秀賞を獲得してしまう。ただ、競技者として優秀な成績を数々と得ながら、まったく鼻にかけることがない。
上田氏の指導も厳しく、浮つくこともなかったのだろうが、もともとが謙虚な人柄でもあった。それが飲み手のわたしにも伝わってきて、会う度に彼のファンになっていった。
次頁では『サンルーカル』と冠した理由やおすすめのカクテルを紹介する。
(次頁へつづく)